2.H113
引き寄せられた新しいドアの向こうは、庭への続く廊下だった。少し気分が下がった事で、わたしは恐怖心の中に少しだけ、出口に繋がる扉なのではと期待した自分がいた事に気付いた。そんな甘い話がある訳ないし、大体出口に繋がっていても、わたしには、この忌々しいキャスター付き寝具に頼らずに移動する手段もないと言うのに。
ドアの向こうの誰もいない廊下を、すーっと滑るように抜けていく。廊下には窓があり、庭の様子が見て取れる。わたしと同じ服を着た子供が2人、庭を走っている。彼らもマイノリティを持っているのだろうか?ここに居るのだから、多分そうなんだろう。わたしと同じ。いつまでここに居ればいいのか、分からない。わたしと同じ。
ゆっくりと進むベッドの上で窓の外を見つめているとら突然真後ろから音がした。それ程大きな音では無いけれど、とてもびっくりした。驚いたわたしは慌てて後ろを振り返る。振り返る、と言ってもほぼ筋力がないわたしは、振り向く速度もとても遅い。やっとこさ振り向いて、その音の正体を確かめることが出来た。それはどうやら、ドアの開いた音のようだ。しかし、わたしが居る部屋のドアとは少し音が違うな、と思った。ベッドはゆっくりと右に進路を変え、開いたドアへと私を誘う。身構えながらも、わたしはその部屋を観察する。
大きなスピーカーが両サイドに1つずつ、真ん中に大きなカメラが1台。そのカメラの下には、目を閉じた白い髪の男の子が、わたしと同じようなベッドを、リクライニングして座っている。その男の子の前には、何かよく分からない人の顔のような形をした機械が置いてある。他にも何か分からない機械が沢山置いてあって、さながらSF映画の敵軍のラボのような場所だ。
わたしのベッドが全て部屋におさまると、ドアがひとりでに閉まった。
目を閉じた少年は、ドアが閉まると、手を広げるようなジェスチャーをした。
それに合わせて、スピーカーから声がする。
「ようこそ、P-013。んーん、白井悠波(しらいはるか)。」
To be COCOON 雪。 @konayuki_haku
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