作品を読んでもらうための最低限の工夫
久野真一
これさえ工夫すれば、100人くらいには読んでもらえます
初めましての方は初めまして。
普段私の作品を読んでくださっている方はこんにちは。
主にラブコメ中心に作品を書いているネット小説家です。
その中でも幼馴染作品中心というピーキーな作風ですがそれはおいときましょう。
こういうアドバイスめいたことをあんまり書くのは私自身の趣味ではないのですが、1年半以上書き続けて来て、それなりの人に作品を読んでもらえるようになった今の自分のノウハウを公開しておくことにはそれなりの意味があるかなと思って、少し書いてみることにしました。
さて、早速なのですが、カクヨムで書かれている作家さんの悩みあるいは嘆きで一番よく聞くのは「書いた小説が読まれない」「感想がつかない」というものだと思います。
私もそうですが、カクヨムとかで小説を投稿し始めた目的の一つは、やっぱり自分以外の誰かに読んでもらう事でしょうから、これは辛いことです。
ただ、そういう作者様の嘆きを聞いていると「自分が書いているテーマがネット小説受けしないから」とか「自分には才能がないから」とか「ネット小説の読者には私の作品が受け付けないのだ」とかいう愚痴が多いんですが、それは違うのではと思うのです。
実際、私がカクヨムを始めて一ヶ月くらいは、応援コメントがついたことは一度もありませんでしたし、☆の数も10やそこら。1話辺りのPVが10あったかも怪しいです。しかし、細かい工夫と改善を積み重ねた結果、今ではコンスタントに☆100以上は叩き出せるくらいにはなりましたし、明らかに一般受けしないお話を書いても、100人以上の読者の方は読んでくれるくらいにはなりました。また、私の作風を好きでいてくれる読者様からの応援コメントも(必ずではないものの)普通に来るようになりました。
もちろん、書籍化作家様とか、あるいは☆1000くらいが普通の方と比較すればカスみたいなものですが、趣味として楽しんで創作活動をするには、十分以上の読者に恵まれた状態かなと思っています。
長々とした前置きはここまでにして、本題に入りましょう。
①日本語文として読めるものを書こう
「え?それは基本だろう」と言われそうなのですが、意外と実践出来ていない人が多いです。もちろん、文章を「崩す」ことで表現する技法はあるのですが、書き始めでそれやると、単に「意味不明な小説」になってしまいます。これだと読者獲得以前の話になるのですが、作者様は意外と気づいていないケースが多いです。てにおはがそもそもおかしいとかもよく見るケースです。
これについては、小説よりも「日本語の文章の書き方」についての本やらサイトを参考にするのがいいです。ちなみに、私の場合ですが、ちゃんとした日本語文を書く能力については大学院でさんざん鍛えられた気がします。
②普遍性のあるテーマの物語を書こう
実のところ、普遍性がないテーマの物語(たとえばご当地もの小説とか、普段読者が見聞きしない特定の職業ものとか)でも書き方次第では読まれる可能性はおおいにありますが、そういうのに挑戦するのは一定の読者がついてからがいいです。
ほとんど読まれていない内から作家独自の世界観を提示されてロクな説明もなかったりすると、まず読者はつかないと言っていいです。
ただ、この点でいうと、読者の多くが興味がある「恋愛」を扱った物語はそれだけで多少有利ですし、「異世界もの」も「人生における成功、恵まれた人間関係」など、やっぱり誰しもが関心のある事がテーマになっていたりするので、特定のジャンルは最初から有利であるとか不利であるというのはありますが。
ともあれ、ジャンル的に不利でも、出来るだけ普遍性の高いテーマ(たとえば、現代ドラマでも「親子関係」「友人関係」「人間関係の悩み」などは普遍的なテーマと言って良いでしょう)をチョイスするのが重要です。
③タイトルを工夫しよう
これは他の作者様もよく痛い程強調していることですが、ネット小説では重要度が高いです。書籍となって商業で流通する作品だと、編集さんとか書店員さんとかが帯とか煽り文句をつけたりしてくれますが、ネット小説の場合、自分自身で広報宣伝もやらないといけません。その中でタイトルは最たるものと言えるでしょう。
ついでにいうと、カクヨムやなろうでは少なくとも、簡潔なタイトルよりも説明的で長いタイトルの方が間違いなく読まれます。長文タイトル「であれば」読まれるわけではないですが、短いタイトルの場合、うまいこと読者に刺さる要素を詰め込むのは難しくて、はっきり言ってセンスが問われます。
さらに、タイトルについても、出来るだけ理解しやすいものを心がけましょう。
例として、私の短編の一つ『誰がために除夜の鐘は鳴る』をあげてみます。
URL: https://kakuyomu.jp/works/1177354055459395090
これ、知っている人はわかる通り『誰がために鐘はなる』をもじったものです。
ヘミングウェイの有名な小説ですね。いかにも気取ったタイトルです。
しかし、読者でヘミングウェイを読んだことがある人がどれだけいるか。
タイトルを知っている人がどれだけいるかを考えると、微妙なチョイスです。
これはあえて実験として、受けなさそうなタイトルを選んだのですが。
他には、『彼女はクリスチャン(仮)』なんて短編もあります。
URL: https://kakuyomu.jp/works/1177354054917262246
彼女がクリスチャンであることが重要な短編なので、この部分は抜きたくなかったのですが、ネット小説読者どころか普通の日本人にとって、クリスチャンがどうであるとかは非常にどうでもいい話でしょう。
もし、ですが『クラス一の美少女な聖女様に告白してみた』とかだったら、
もう少し見てもらえたんじゃないかなあと。
ともあれ、100作超短編を書いてくると、読者の関心が低い語句や出来事、あるいはそもそも一般に知られていない概念をタイトルに入れると(他の部分で挽回出来たとしても)、読んでもらえる可能性が一気に低くなるのは間違いないと言えます。
もちろん、広く読んでもらえるよりも、納得行くタイトルをつけたいという思いは私にもあって、未だに悩むところです。しかし、受けなさそうなタイトルをつけるならあんまり読まれない事も覚悟しないと仕方ありません。
実際、作品ページからタイトルと★あるいはフォロー数、PVの関係を観察してみると、タイトルの付け方と強い相関があることがわかります。
④きちんと「説明」しよう
読まれていない作品を見ると、読者にとって馴染みのない事物や概念がどんどん登場してくるのに、それらが説明もなく当然のように流されていくものが多いです。
たとえば、異世界もので「勇者」「僧侶」「ステータス」「魔力」とかいうものについては、読者が了解済みとしていいですし、「国王」「領主」とかいう概念もまあ了解済みとしていいですが、なんとか大陸のなんとか教とかいきなり言われても、そのなんとか教がどんなものか概要くらいは説明がないと読者は置き去りになるわけです。
あと、これも重要なのですが、「説明」である以上、誰がどう行動して、その結果として何が起きたかというのを、「理解可能なように」書くべきです。それこそ、理系の文章を書くように。ともあれ、とにかく説明不足の作品は目立ちます。
もちろん、設定を一から十までいきなり書くみたいな、説明し過ぎには問題があるのですが、説明不足のせいで、そもそも作品世界がわからんとなったら本末転倒なので、まずは読者に作品世界がどんなものなのかを説明するのが(多分)重要です。
⑤感想をすぐに期待しない
Google Analyticsの連携機能を使って分析するとわかるのですが、読者のほとんど(99%以上)は感想を残さない読み専さんです。これはいい悪いではなく、そういうものです。
この99%という数字を仮に正しいとするなら、1話辺り100名以上が読んでくれるようになってようやくポツポツと感想が期待出来るといった感じです。もちろん、それ以前にも熱心な読者さんがついて応援コメントがつくことがありますが、それは運みたいなものなので、あてにしても仕方がないです。
強調しますが、一定数の読者がつく前は、当然のごとく「感想がつかない」のであって、感想がつかなくても作品はちゃんと読まれています。その辺りはPVやフォロー数などを参考にすればわかります。
とはいっても、私も感想が欲しいーと初期の頃は嘆いていたので、感想がつかないことに苦しむ気持ちは痛いほどわかります。どうしても感想が必要な場合は、他の作家さんが開催されている自主企画に応募するとか、あるいはTwitterでよくある
「#RTした人の小説を読みに行く」タグで小説を紹介するのも手です。どちらも、感想を必ず期待出来るわけではないですが、やってみるのは悪くないです。
とにかく、ある程度読まれるまで感想が(定期的には)つかないのはネット小説界の真理なので、潔く諦めるしかありません。
⑥短編に挑戦する
これもまた、ありがちなのですが、作者様の処女作で、たまたま、テーマ選定その他でウケが絶望的に悪い作品を書き出してしまうと、続けても続けても感想がつかないし、読んでもらえないということはママありえます。特に読者がつかないまま長くなっていくパターンは微妙です。そういう作品は、たとえば「100話もあるのに、★が一桁なので、たぶん面白くなさそう」と評価されがちなので、読んでもらえる可能性がさらに低くなります。
この場合作者様が悪いわけじゃないのですが、短編に挑戦してみるのも手です。短編の場合、1話完結のものは数日とかからずに書けますから、運良く「当たれ」ば、多くの読者の目にとまる可能性もありますし、そこから長編に読者が流入してくる可能性もあります。
⑦処女作は短めに終わらせよう
⑥と関連するのですが、運悪く、これ以上続けても誰にも読んでもらえないことが明らかな作品をずっと続けていくと、(もちろん作者様がモチベ保てるならいいのですが)書いても書いても読まれないということになりかねないです。
そういう時は、「俺達の戦いはこれからだ!」エンドでもなんでもいいですが、当初の予定より早く終わらせるというのも一つの手です。
⑧近況ノートはこまめに更新する
私みたいに近況ノートが200超とかいうのもやりすぎですが、コメントがなくても意外と近況ノートは読まれているものです。特に、少数であっても熱心な読者がついた場合ならなおさら。
特に私事などで、更新間隔が空くことが事前にわかっている、といったことがあるのであれば、近況ノートでその旨を書く方が「あ、しばらく更新空くけど、それなら仕方ないか」と待ってもらえる可能性は高まります。音沙汰なしで更新がずっと空くと「ああ、飽きちゃったのかな」とか思われる可能性が高いですから、ともかく書いておくに越したことはないです。
⑨投稿前に明らかな矛盾はチェックしておく
作品を書いているときにはおうおうにして気が付かないものですが、書き終えて読み直してみると、「あれ?最初と最後で設定が矛盾してね?」とか「この主人公、意味不明な行動をとってる」とかいうのを気づくことが多々あります。矛盾が些細なものであれば、読者の方で適当に補正して読むことが可能ですが、あまりに支離滅裂だともうどうしようもないことがあります。
誤字脱字、あるいは表現のミスとかはぶっちゃけ後で直せばいいという面があるものの、行動や言動のあちこちがおかしいと、やっぱり読むのは辛い。
そうは言っても、書き上げた後はそれを「他者として」読み返すのは難しいので、書き上げた後一晩寝かす、とかいうのも手です。特に深夜に書いた小説とかはテンションのまま書いてたりして、後で見返すと「うわぁぁ」と頭を抱えたくなる代物になっている事がありますので、ご注意をば。
⑩とにかく続ける
精神論ぽいですが、実はこれがある意味一番重要かもしれません。書き続けていれば、その間に作品をどんどん改善していくことも出来ますし、作品の宣伝でもうまい手を思いつくことがあります。しかし、書きはじめて一ヶ月で結果が出なくて諦めてしまうと、続けてれば得られたかもしれない成果をふいにする可能性が高いです。実際、年単位で続けてる作者様は、多くの場合、一定数の読者を獲得出来ているように思います。
思いつくままに、これくらいは実践しておけば、最低限(100名くらいが目安)の読者がつくところまではいけるのでは、という点を列挙してみました。もちろん、全部やらなければならないというわけではないです。
ただ、こういうのは才能があるとか無いとか以前のところで頑張れるところなので、ちょっとした工夫の積み重ねで色々な人に読んでもらえる可能性が高まるということは強調しておきたいです。
作品を読んでもらうための最低限の工夫 久野真一 @kuno1234
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