怪文書A

或る料理屋

　いらっしゃいませ、お客様。本日は如何なさいますか？

　ハンバーグ？　ふむ。こちらの肉で。

　畏まりました。解体の時間が要りますので、そうですねぇ。明日の夕食では、如何でしょうか。

　はい、承りました。それでは明日、お待ちしております。

　―― ◇◇◇ ―― ◇◇◇ ――

　いらっしゃいませ、お待ちしておりました。

　それでは調理して参りますので、今暫くお待ちください。ワインはいつも通りで宜しいですか？

　はい、畏まりました。すぐにお持ちします。

　前菜のサラダとスープで御座います。

　ワインのお代わりはいかがですか？

　お待たせいたしました。

　ハンバーグステーキで御座います。ソースを3種用意しておりますので、お好きなものでお召し上がりください。

　お味は如何でしょうか？

　そうですか、それは良かった。

　ええ、そちらのソースは隠し味に脳味噌を使っておりまして。はい。頭蓋骨を開くのは骨が折れますが、コクと風味は一級です。新鮮なものでなければこうはいきませんので、是非、ご堪能ください。

　それではどうぞごゆっくり。

　食後に珈琲か紅茶は如何ですか？

　はい、畏まりました。すぐにお持ちします。

　本日のお料理は以上となります。

　ご堪能いただけましたか？

　お代は結構ですよ。××を料理できるのは貴重なことですから。ええ、是非またいらしてください。

　お気をつけてお帰りくださいね。――特に、背後には

　貴方はとても美味しそうですから。