第129.5話 なぜ羅市が武人会議に出ることになったのか??
ここはカルラコルム。
マヤを頂点とした絶対のヒエラルキーが支配する異世界。
そのマヤの中でも最も歴史が永く、最も権力を持つとされる平山家。
その当主こそ空前絶後、絶対無比の大魔法使い・平山不死美。
その屋敷は広大かつ巨大。
そして
この家の使用人にして不死美の使い魔であるレレが「不死美様がお住まいのお屋敷はピカピカのキレイキレイな明るいお屋敷じゃなきゃダメなんです不死美のお美しさに相応しくないとダメなんです」というポリシーに則り、いつも綺麗に美しく、そして見栄え良くしていた。
そんな平山邸に訪れた魔琴。
まるでテーマパークのお城の城内の様な内装の応接室で、不死美と向かい合っていた。
「……それで、どのような御用でしょうか? 魔琴」
不死美はレレの淹れた紅茶の湯気の向こうで、いつもと変わらない笑顔を浮かべていた。
「あのね、今度の武人会議に姉さんを出席させたいんだ」
「羅市さんを? 何故です?」
「オーデッドさんと姉さんを会わせてあげたいんだよ。武人会議なら面倒な手続きとか許可とかいらないじゃん? だからさ……姉さんだって会いたいはずだよ」
「オーデッドさんとお話をしたんですか?」
「うん。不死美さんの言ってた通りガラ悪いけど、優しい人だった。姉さんみたい」
「そうですね。あのふたりは似た者同士でしたね。……それにしても、彼とお話が出来たということは、春鬼さんとオーデッドさんの境界が曖昧になっているということですね……」
「ん、どゆこと?」
「……いいえ。なんでもありません」
不死美は紅茶のカップに口をつけ、一度呼吸を深くした。
「奉納試合は来月。今は大事な時期です」
「そ、そうだよね……」
「それに、遠い昔の恋人同士をもう一度引き合わせようなどと……」
「よ、余計なお世話かな? あはは……」
「……」
不死美は無言で立ち上がり、魔琴に背を向けた。
(やっぱりダメかぁ……)
奉納試合前のこの時期に、このお願い。
魔琴も『駄目で元々』という気持ちだったが、それでもなんとかしたかったのも事実。
(でも、このチャンス……諦めきれないよ!)
お叱りを覚悟で食い下がろうとしたその時。
不死美はくるりと魔琴に向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「面白そうですわね」
「え?」
「500年の時を超えて邂逅する恋人同士……素敵ですわ。及ばずながらこの平山不死美、お力添えいたします」
「ええ!? い、いいの?」
「大事な時期こそ肩の力を抜く事も必要なのです。それに奉納試合直前にも最後の打ち合わせがあります。今回の会議は試合よりも『試合前の仁恵之里祭り』の打ち合わせが主な議題でしょうから、大丈夫ですよ。……それにしても、時を超えた愛なんてとてもロマンティックですわ……わたくしも娘時代を思い出します……そして、今も……」
うっとりと想いに耽る不死美。
魔琴はてっきりダメが出ると思っていただけにこの展開は意外だった。
「ただし」
不死美は椅子に腰をおろし、紅茶のカップに口をつけた。
「お目付け役としてレレを同行させます」
「レレを? 別にいいけど、なんで?」
「実は、以前羅市さんに代理で武人会議に出席して頂いたことがあるのですが、お酒ばかり飲んでまともな会議にならなかった事がありまして……」
「それは……うん、レレに来てもらおう」
「わたくしも魔琴も会議に行くわけには行きませんから、レレに実況中継をお願いしましょう……面白くなってきましたわね」
意外にもノリノリな不死美。
魔琴は彼女の思いがけない一面を見た気がした。
(なんにしても、これで準備はオッケーだね! あとはオーデッドさん、頑張って!!)
魔琴は心の中でオーデッドにエールを送り、グッと親指を立てたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます