虎子の過去
第106話 過去は語る1 〜生贄の里〜
『私』こと『一之瀬虎子』の始まりは500年程遡る。
その頃、私は龍姫と呼ばれていた。
そして当時の仁恵之里は鬼が支配する陸の孤島で、鬼の存在を把握していたが非力故に何も出来なかった時の権力者達は此処を『
そんな折、鬼に破れ戦死した領主の娘に転生した私は、鬼達に支配されていた仁恵之里に降り立った武神と称され、事実鬼達を倒して倒して倒しまくり、仁恵之里を取り戻し、『武人会』という鬼に対抗し得る集団を組織した。
私が率いた武人会は仁恵之里を再興し、鬼達を退け、その鬼達を統べる『マヤ』と呼ばれる強大な力を持つ者達とも対話をするほどに、我々は力と誇りを取り戻しつつあった。
我らが目指すのはあくまでも平和であり、支配ではない。戦う為の組織である武人会だが、時には土木作業に勤しんだり、時には農作業に汗を流して仁恵之里を少しでも良い土地にしようと努力した。
その姿勢に感銘を受けたマヤの頭領は我々に『和平』を持ちかけてきた。
何を今更、という意見もあったが私はそれを受け入れる決断を下した。
困難な道のりであったが、私には支えてくれる大切な存在があった。
夫と、子……家族だ。
現在の有馬家……つまり武人会本部が在るところには小さいながらも城があり、私はそこに夫と娘の3人で暮らしていた。
幸せな日々だった。
和平に向けて様々な問題が山積していたが、それをひとつひとつ解決していくのもやりがいのある事だった。
次に続く者達の未来のためなら何でもできた。
しかし、それも一夜にして崩れ去る。
鬼達が裏切ったのだ。
ある夜、突如進軍を開始した鬼達に不意を突かれた我々はあらゆる点で後手に回り、力の無い者は
あの夜の出来事について、私の記憶は曖昧だ。
考える間もなく、暴虐の限りが嵐の様に襲いかかり、過ぎていったのだ。
覚えているのは燃え盛る炎と、その中で揺らめく呂綺乱尽、その乱尽の前に倒れる藍殿。そして彼に寄り添うような格好のまま、動かなくなった最愛のひとり娘『さくら』。
戦いの中で傷付いた私は最後の力を振り絞り、二人の元に這った。
最後に、最期なら、せめて……。
あの夜、私は全てを失った。
その代わりに得たのは鬼達への純粋な憎悪。
しかし、それも命と共に消えてなくなる。
無念。そう、無念だった。
もう一度、生まれ変わることが出来たのなら、今度こそ失敗はしない。
あの金色の髪の女が持ちかけた甘言に騙されなどしない。
絶対に……!
それが1度目の転生。
今の私の力では正確に遡る事はできないほどに過去の事だ。
私がお前に伝えることが出来るのは、次の転生からだ。
そして、これからが本題だ。
時は1945年。
私は再び、ひとりの少女に転生することになる。
いや、正確には彼女の体に居候することになる。
彼女の名前は『
名字は分からない。
彼女は行き倒れだったのだ。
服はボロボロで、上着に縫い付けてあった名札は『鵺』の一文字しか識別できなかったのだ。
折しも終戦の夏。
行き倒れは珍しいものではなかった。
多くはそのまま死ぬか、そうでなくとも飢えか病で死ぬ。
しかし、鵺は幸運にも助けられた。
道端で倒れていた
彼の名は一之瀬
当時の九門九龍当主だった。
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