第4話  人生ゲームの優勝賞品は俺!?

「そーいうことか……。ハーレムって大変そうだな」

「何がハーレムだ、あの二人はただの変態だろ」


 俺は部室で起こった事故を寛人ひろとに説明して3P疑惑の疑いを晴らした。

 危うく学校での俺のイメージが侵されるところだった。


「ということでさっきあった事は内緒にしといてくれ」

「あぁ、いいけど。お前何もやましいことがないんなら隠すこともないだろ」

「いいや、言葉ってものは案外恐ろしいものだから徹底的にな。いつわりがうわさになっても困るし」


 寛人は納得したのか『そっか……』と頷いて俺の背中を叩く。


「俺は美少女との関係を噂されるなら大歓迎なんだけどな」

「いや、美少女だけどド変態だから」


 そう言うと寛人はケラケラ笑って談話室を出て行ってしまった。

 正直俺も、灯李あかり先輩のことも玲葉れいはちゃんのことも可愛いとは思っている。

 それに二人共個々に雰囲気や性格も違うしとても魅力的だってことは重々承知しているつもりだ。

 だけど二人共だから……


「あぁああっ! 先輩、玲葉を放ってこんなところに居たんですか!」

「あ、ごめん。寛人の誤解を解いてて……」

「先輩は本当に仕方ない変態さんですね」

「なんでそうなるんだよ!?」

「玲葉の胸揉みたかったんなら事前に言ってくださいね!」

「事前に言ってもダメでしょ!?」


 すると玲葉ちゃんは少しフリーズした後、顎に手をあててフムフムと首を縦に振る。


「先輩の言う通りですね」

「だろ、やっと分かって……」

「先輩は玲葉の奴隷なので足を舐めさせながら頼ませるべきでした」

「全然分かってないようですね」


 俺は玲葉ちゃんがニヤニヤしながらムフムフ言っている間に談話室を後にし部室へと戻った。




           ◆





「快斗くん。遅かったわね」

「すみません、少し玲葉ちゃんを追い払うのに時間がかかりまして」


 部室に帰ってきた俺は灯李先輩と二人っきりになり灯李先輩は甘ったるい声で問題発言をする。


「そうね、ここからは私とイチャイチャする時間だからものね」

「俺のスケジュール帳にはそんな予定ないので帰りますね」

「待ちなさい快斗くん! 貴方は今日私の奴隷をする約束よね」

「そんな約束しましたっけ……」


 すると先輩は俺の方に近づいてきて、カッターシャツの第三ボタンまで開けてから上目遣いで見てくる。


「先輩、ブラが見えてます……」

「いやぁ〜ん。快斗くんのエッチぃー」

「変な声出さないでください、また勘違いされますから!」

「いいじゃない。私たちそういう関係でしょぉ〜」

「違いますから」


 胸を弾ませ俺を誘惑する灯李先輩。

 見たら絶対に負けだと思ったので俺は目を逸らすけど先輩は無理やり視界に入ろうとしてくる。


「先輩はなにがしたいんですか」

「快斗くんが素直になってくれればめるけどぉ〜」


 灯李先輩は玲葉ちゃんよりもまともだと思った俺が馬鹿だった。


 そして俺が男性でもセクハラで女性を訴えることはできるのだろうかと考えていた時書道部のドアが勢いよく開いた。


「快斗先輩!姉さんに襲われてないですか!?」

「あっ、玲葉ちゃん助けて……」





           ◆




「姉さん、抜け駆けしたら玲葉は許しませんから」

「別に抜け駆けしようとはしてないけど」


 早速俺は両サイドの美少女二人に挟まれ修羅場。もう15分は激しい論争を続けているだろう。


「あの、そろそろ部の活動をしませんか?」

「そうね。快斗くんがそう言うなら」

「分かりました。快斗先輩に免じて許してあげます」


 俺が間に入ったおかげでこの姉妹戦争は終結した。この勇気をたたえてもらいたいものだ。


「それじゃあ部活動を始めたいのだけど、墨を買うのを忘れたのでゴロゴロするわよ!」

「結局しないんじゃないですか」


 先輩は『仕方ないじゃない』と言って上目遣いでクネクネしながらこちらを見てくる。それを見た玲葉ちゃんはドン引きの眼差しを先輩に向けている。


「それじゃあ先輩!暇なので玲葉が持ってきた人生ゲームしませんか?」

「えっ……」

「この間テーブルゲーム部の友達と一緒に作ったのを持って来たんですよっ!」

「でも人生ゲームって二人じゃできないよね」


 そう言うと玲葉ちゃんはあからさまに悲しそうな態度をとる。


「じゃぁ私もそのゲームに混ざってあげるわっ!」

「え、灯李先輩もですか……」

「……今回ばかりは仕方ないので姉さんも入れてあげます」


 ――畳の上にそれぞれ向かい合って座る。

 目線を下げると玲葉ちゃんが持ってきたすごろくとサイコロが置いてあって、スタート地点にはそれぞれの目印となる消しゴムを設置する。


「ではルールを説明します。このゲームはすごろくで行う人生ゲームでマスそれぞれにイベントが用意されてあります。アタリマスならお金がもらえちゃいますしハズレマスなら所持金が減ります。最終的にはゴールに着いた時の所持金の多さで勝敗が決定て感じのルールです」

「あら、簡単じゃない。それで優勝賞品は何かあるのかしら?」

「あります。優勝賞品は『快斗先輩に一つだけ願いを叶えてもらえるチケット』です」

「何言ってるんですか!このゲーム俺に全くメリットありませんよね!?」


 だが二人は俺に聞く耳をもたずゲーム始めようとする。

 こうなったら自分で優勝して賞品を奪うしか方法はない。仕方なく俺はゲームを始めることにした。

 初めにジャンケンをしてサイコロを振る順番を決める。順番は、俺⇛玲葉ちゃん⇛灯李先輩の順になった。

 まず俺はサイコロを振って最初の目を出す。


「やった、6だ! えっ……一旦休みかぁ」


 流石の玲葉ちゃん。6が序盤から出てしまった時の対策をしっかりとしている。


「次は玲葉ですね。ほいっ!」


 玲葉ちゃんが止まったマスは4マス目。そこには黄色い赤い文字で『一番進んでいるマスの人と結婚する』と書いてある。

 なんか玲葉ちゃんらしいな……


「快斗先輩っ! 今日から玲葉たち夫婦ですね!」

「ちょっ、あんまりくっつかないでって」


 玲葉ちゃんは俺の隣に座って腕に絡みついてくる。可愛いけど今はすごろくに集中したいので少しばかりうっとおしい。

 これももしかしたら、俺を勝たさせないための作戦なのかもしれない。


「玲葉!快斗くんから離れなさい」

「嫌です。玲葉は快斗先輩のお嫁さんなので離れる必要はありませんー」

「まぁ、いいわ。この後すぐにうばってあげるから」


 そう言うと灯李先輩はサイコロを投げた。

 出た目は5でマス目には『100万円獲得」と書いてある


「100万円よっ!いいでしょ」

「快斗先輩って意外とカッコいいですね!ますます玲葉の奴隷にしたくなります」

「話を聞きなさい!」


 子猫のように俺の体にスリスリする玲葉ちゃんは灯李先輩のことを無視。

 多分聞こえているんだろうけど……


「じゃあ次は玲葉ですっ!――あっ!また4がでました!」


 玲葉ちゃんが進んだマスには『子供が二人生まれる』と書かれている。


「快斗先輩エッチですね。もう子供二人もできちゃいました」

「いや、ゲームの中だからね?」


 今度は俺の腿に頭を乗せて枕にする。正直可愛いのでこのままにしておく。


「うぅ……あそこは私のポディションのハズなのに」

「いや、ポディションなんて元からないんで」


 ――ゲームは終盤を迎え所持金は何故か俺が一番高い状態。

 まぁ、阻止しないといけないからいいんだけど。


「これで3以上の目を出したらこのゲームは俺の勝ちです」

「酷いわ快斗くん。貴方はもう少し優しい人だと思ってたのに」

「ダメです。ここで負けたら俺が酷い目に合いそうなんで」


 運命のサイコロフリフリ。

 灯李先輩と玲葉ちゃんは俺の手を睨みつけ3以上が出ないようにと願っている。


 コロッ!


「よっしゃぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!」


 結果は運に恵まれ6の目。


(日頃の行いがいいからかな?)


「先輩……「「大人げない!!」」です!」

「大人って一歳しか変わらないから」


 ほっぺを膨らませて怒る先輩と玲葉ちゃん。

 でも俺の身を守るにはこうするしかなかったんだ。


「あーあ。これなら勝てると思ったのになぁー」

「それで玲葉ちゃんは勝ったら俺に何させるつもりだったの?」

「えっとぉー。先輩に首輪を付けて全裸で散歩です」

「鬼かっ!警察捕まるわ!」

「大丈夫です!ちゃんと四つんいで歩かせますし便はちゃんと取ってあげますから」

「何が大丈夫なの!?」


 ほんとこの姉妹二人の性癖せいへきには困ったものだ。


 ――ガラガラガラッ!シャー


「あの、すみません……ここは書道部ですか?」

「あ、うん。そーだよ」

「入部させてください・・・」










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