第2話 姉妹は仲がわるい?
気持ちの良い新学期を迎え、書道部には可愛い新入部員も一人入ってくれたんだけど……
「なんで姉さんがここに居るんですか」
「私の部だからよ。私がこの書道部の部長」
「またひょろひょろの男子をそのいやらしい脂肪で誘惑して遊んでるんですか……」
「えっ? そーなの!?」
それに先輩と妹さんは中が悪そうな雰囲気をものすごく感じる。
灯李先輩は少し段差のある畳から足をおろして俺の方を見ながら言う。
「私、今まで男の子を誘惑したことなんてない!」
(あるでしょ! 毎日ほぼ裸みたいなコスプレ着て上目遣いで俺を見てきましたよね?……)
「それに私。快斗くんのこと本気なの」
(それってコスプレをみてもらう人としてですよね……)
灯李先輩が真面目な顔で勘違いするような発言をすると妹さんは少し驚いた反応をして表情を元に戻す。
そして何か思いついたような顔をして俺のことを指差した。
「なら姉さん。本気だということは先輩のこと色々知ってますよね」
「そうね。快斗くんのことならパンツのサイズから色まで把握済みよ」
「なんで知ってるんですか……」
いっぽ間違えれば犯罪なレベルのことを暴露する先輩に妹さんは頷いてからニヤリと笑った。
「なら快斗先輩の誕生日、分かりますよね?」
「分かるわ、10月8日よ。入れ歯で覚えときなさい」
なんだかすごく悪い語呂……
「なら……兄弟は何人か答えてください」
「快斗くんは一人っ子だから兄弟はいないわ」
「先輩、可哀想ですね……人生に悩んでるなら玲葉が相談のってあげますよ?」
「俺これでも楽しく生きてるんだけど!?」
先輩の妹はちょくちょく俺のことをディスってたまに同情してくれる。
要注意人物リストに古賀さんの妹を追加したところで俺は話題を変えることにした。
「それで君はなんで書道部に入部したいの?」
「先輩、玲葉のことは玲葉って呼んでください」
「うん。じゃぁ玲葉ちゃんはなんで書道部を選んだの?」
「特に意味はないです。ラクそうだなーと思ったからですかね」
えっ……最初は礼儀正しくて真面目そうな子だと思ったのに、なんだかガッカリするなぁ。
だけど、うちの学校は一年生の間だけ部活動に絶対入らないといけないルールだし無理もないだろう。
「じゃぁ今日からよろしく。玲葉ちゃん」
「先輩。玲葉は馴れ合いには興味ないので」
「あ、うん。ごめんね……」
結構性格キツイな……。まぁ、これから少しずつ仲良くなれればいいよな
「玲葉、あなた快斗くんに失礼よ」
「俺は大丈夫ですよ……」
「はぁ、なんでこんな部活選んじゃったんだろ……」
そういうと玲葉ちゃんは露骨にガッカリして書道部の教室を出ていってしまった。
なんか厄介さんが増えた気がするんだけど……
◆
「なんで快斗先輩がここに居るんですか……」
「図書委員だからだね」
昼休みになり俺は図書委員の仕事をしに図書室にきたんだけど、カウンターに座る俺の横には玲葉ちゃんも座っていた。
改めてみて見ると小さくて艷やかな髪にヘアリボンをした可愛い女の子。
「もしかして先輩、玲葉のストーカーですか?」
「いや、俺の方がここ来るの早かったからそれはないよね」
「じゃぁ、私のスケジュールを把握して……」
「俺はスパイでもないからね?」
俺は一体、彼女からどんな奴だと認識されているんだろうか。
「先輩、私本を整理してくるので」
「じゃあ俺も行くよ」
俺はカウンター席から立って玲葉ちゃんの隣に並ぶ。
一人だけでやらせるわけにもいかないし分からないこともあると思うので一応俺も着いてきた。
「先輩、着いてこなくていいです。やっぱり玲葉のストーカーだったんですね」
「ただ手伝おうと思っただけだから」
「……先輩は大きいおっぱいと小さいおっぱいどっちが好きですか?」
「なぜ急にその質問!?」
ここは正直に大きい方と言った方がいいのか……
「大きい方かな……別に深い意味はないけど」
「じゃあ先輩は姉さんの胸を見て興奮してるんですね。いやらしい……」
「なんでそうなるの!?」
全く見ていないということもないので完全否定もできない。
でも別にお触りはしていないし見るだけなら大丈夫なのでは……
「先輩、顔がニヤけてます」
「すみません」
俺と玲葉ちゃんは奥の方の棚から作業に入り古い本を出して新しい本を入れたりホコリを拭き取ったりする。
すると後ろを通った一年生がいきよいよく玲葉ちゃんにぶつかり、体制をお整えようとした玲葉ちゃんは目の前に立つ本棚を強く引っ張ってしまった。
それに気づいた俺は玲葉ちゃんのと棚の間に入って倒れてくるのを間一髪にして止めた。少し遅かったら棚の下敷きだったかもしれない。
棚を元に戻した俺は玲葉ちゃんの方を見て怪我はないか確認をする。
「玲葉ちゃん。大丈夫?」
「大丈夫……です」
玲葉ちゃんは何故か顔を赤らめ俯いて答えた。
「顔色悪いけど体調良くないなら言ってね」
「私に優しくしないでください!」
玲葉ちゃんの声は静かな図書室に響き周りの生徒が何事かとこっちを見てくる。
俺はペコペコと頭を下げて玲葉ちゃんをカウンターへ連れて行った。
玲葉ちゃんを椅子に座らせたまに様子を伺う。
突然大声を出したものだからほんとにビックリした。
「先輩……さっきはありがとうございました。それと大きな声出してごめんなさい」
「いや、別に気にしてないからいいよ」
玲葉ちゃんは俺から少し視線を外しながらも素直に謝ってきた。
多分この子はそんなに悪い子ではないのだろうと思う。
「先輩……今日の放課後、書道部の部室に来てくれませんか?」
「ん?、でも今日はもう部活ないよね」
「そのぉ……わたしと先輩で話したいことがあるので」
玲葉ちゃんはまた顔を赤面させて恥ずかしそうに言った。
そして俺の頭に浮かんだことは告白という二文字。
「じゃあ放課後また……」
そういうと玲葉ちゃんはそそくさと図書室を出ていってしまった。
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