第5話 いざ!彩華学園!

今日から新たな学校生活が始まる。


普段より少し早く目覚めた望。

期待と不安で良く眠れたかはわからないが

とにかく緊張はしている。


『あっ、おはよー。

今日は早いじゃん。

おぉ?ちょっと緊張してるね?』


神華は出来上がった朝食をテーブルに置き、

望を茶化すようにそう言った。


『んー、

楽しみっていうより、緊張してるかも。

それより、制服は?』


望はリビングの椅子に座ると

神華の焼いてくれたトーストを一口齧った。


『そうだ!忘れてた忘れてた〜。

これ!ブレザーだよ〜。』


神華はリビングの

窓際に掛けてあった制服を取り、

望に見せる。


ブレザーの色は白で、ズボンは深い紺色だ。


『さっそく着てみてよ!』


神華はまだ朝食を食べ終わっていない

望に制服を強引に渡す。

制服を早く着てもらいたい神華を見て

望は急いで朝食を食べる。


『ふぅ。急いで食べたら

なんか苦しくなっちゃったよ。

じゃあ着るからちょっと待ってて。』


望は神華から制服を受け取り、着替え始めた。

ちなみに母親の前で下着一枚になることに

望は何の抵抗もない人間である。


………


そして制服を着終わると

神華はキラキラした目で


『うわぁ〜!かっっこいいよ〜、望〜!

すごい似合ってる!』


望は少し恥ずかしかったが、

近くの姿見で自分の制服姿を確認する。


……良いじゃん。

我ながら似合っていて

自然とニヤけてしまった。


『ふふっ。気に入った?』


神華は望に問いかける。


『うん。気に入った。良いねコレ!』


『あっ!そうだ。

このバッジ、襟につけてね。』


そう言って神華が渡してきたバッジは

白色で金色の縁の花形のバッジだった。


『これって、

クラス名になってるコデマリの花?』


望はコデマリを見たことがなく、

わからない為 神華に聞いた。


『そうだよ〜。

ちなみに花言葉は 優雅、上品 だよ。』


自分はとても優雅とか上品とは言えない

性格だが、まぁいいか。


『さぁ!はりーあっぷ!!

そろそろ行かないと遅刻しちゃう!

最初は

登下校の道の説明しないとだから

送ってくね。』


神華はそういうと

明らかに新品のリュックサックを

望に渡す。


『おぉ!何コレ?!』


望は突然のプレゼントに驚いた。


『入学祝いだよ〜。

望は手に何か持つの嫌いだから

リュックにしたよー。

嫌だった?』


『いや!めちゃくちゃ良いよコレ!

ありがとう♪』


望はリュックサックを肩にかける。

教材などの荷物は神華が既に入れてくれてあった。



『さぁ!行くよ〜。』


神華は車の鍵を持って玄関へと向かう。


そして2人は車に乗り込む。


『シートベルト おっけー?

行くよ〜。』


神華の運転する車が走り出す。


今まで通っていた道とは

逆方向へと向かう。


昨日の夜 学校の場所を調べたところ、

少し遠いが、歩いて行ける距離だ。


そして、出発から10分しないくらいで

学校へと着いた。


『はいっ。着いたよ〜。』


『うん。ありがとう。

それじゃあ、行ってきますっ!』


『行ってらっしゃい!

最初が肝心だからね。頑張るんだよ?』


神華の言葉に大きく頷き、望は車を降りる。

そして緊張を解くため、

一度深く深呼吸をした。


すると、それから数十秒してから

彗也と戀丸が来た。

2人も送ってきてもらったようだ。


『望ーー!!おはよーー!!!』


いつものようにデカい声で

戀丸が挨拶をしてきた。


『相変わらず朝から元気だなー、お前は。』


そういう彗也も普段とあまり変わらない

様子だ。

意外にも緊張はしてないのだろうか。


『あれ?バッジの色違くない?

あっ!てか形も違う!』


戀丸は2人のバッジを見て驚いている。

どうやら説明されていないようだ。


『聞いてなかったのか?

自分のクラスの花になってるんだよ。

戀丸はたしか、タチアオイだったな。』


彗也が説明すると、戀丸は

一度バッジを外し まじまじと

バッジを見る。

色は赤が強めのピンクで、縁は

望と同じ金色だ。


『彗也はポーチュラカだったね。

なんか可愛い名前じゃん。

クラスの女子も可愛い子が多いかもよ?』


望は彗也を茶化しながら言った。


彗也のバッジは、望 戀丸と違って

赤、黄色、紫の3色で縁は金色だった。


『緊張するからそういう事言うなよ〜。

てか、早く行こうぜっ。』


『うん!!行こー行こー!』


戀丸が元気よく先頭を歩き出す。


門から真っ直ぐ伸びている

タイルを歩いていく。


校舎へはそこそこ距離がある。

辺りには芝が広がり、

色とりどりの花が咲き、

ほどよく木々もあり、

すごく のどかな雰囲気だ。

空気も澄んでいるような気がする。


『スッゲーな、おい。

金取れるレベルの庭園だよ。』


望はその景色に圧巻されていた。


『言い方よ。

…まぁ確かに金取れるなこりゃ。』


彗也も景色に目を奪われている。


『なんかお城に来たみたいで

ワクワクするね!

写真撮っとこ〜♪』


戀丸は景色に圧巻されている2人をよそに

携帯で写真を撮り始めた。


『戀丸よー。お前は緊張とかしないの?』


彗也は、いつも通りすぎる戀丸に

問いかけた。


『多分してるんだけど、

それより楽しみのが大きいから よくわからん!』


戀丸は満面の笑みで答える。


そんな戀丸を見て、望と彗也は笑った。

やっぱり戀丸の笑顔は良いものだ。

こちらも自然と笑顔になれる。



そして、3人は校舎へと到着した。


『下駄箱ゾーン広くね?!

生徒、こんなにいんのか。』


彗也は今までの学校より

はるかに広く、多い下駄箱に驚いた。


『すっげぇな。てかどこに靴置くんだろ。』


望達は靴を脱ぎ、上履きに履き替える。

しかし、靴をどこに置いたら良いか

わからずに靴を持ち立ち止まっていると、


『ようこそ!彩華学園へ!!!』


3人のすぐ後ろから女性の

大きな声が聞こえた。


『うぉっ!!!!なんだっ!!!??』


戀丸が、それに負けない声量で

驚きの声をあげる。


『はい!おはようございます!

あなた達が今日からこの学校に

転校してきた3人だね?』


そう挨拶してきたのは

肝っ玉母さんみたいな、

でも子供っぽさもあって、

……でも少し遊んでそうな、

なんというか見るからに

色々、凄そうな女性だった。


『そうですけど、あなたは?』


望は久々に母親以外の女性と話すことに

少し緊張と恐怖を感じていることを

隠しながら質問した。


『フッフッフー( •̀∀•́ ) 何を隠そう私は

この!誇り高き彩華学園の学園長!

愛瀧あたき 彩華さいかだーー!!

ばばーーんっ!』


………………………。


こんな変な人が

学園長な訳ないだろう。


3人は同時にそう思った。


『……他に誰かいないか探してくるわ。』


望はそう言うとその場を去ろうとした。


『おい!コラ!ちょっと待ちなさい!

学園長のカッコいい登場セリフを

スルーするな〜!』


少し焦った様子で学園長(自称)は

望を引き止める。


『……じゃあ、学園長である証拠を

見せてください。』


望は呆れ顔でそう言った。


『おい!そんなふうに言って、

本当に学園長だったらどうすんだよっ。』


彗也は望の耳元で小さい声で言った。


『大丈夫だよ。こんなふざけた人が

こんな立派な学園を

収めてる訳ないだろ。』


たとえ学園長でなかったとしても、

クソ失礼な事を言う望。


『証拠?そう言われてもなぁ、どうしよ( ˘•ω•˘ )

…あっ!そうだ!

園長室に行こう! そこに証拠がある!』


そう言うと学園長(自称)は

下駄箱を抜け、右へ進んでいく。

3人もその後をついていった。



『さぁ!着いたよ〜。

入って入って!』


学園長(自称)は園長室の扉を開け

部屋へと入る。

3人もそれに続いて部屋に入り、

部屋の真ん中にある長机の

横にあるソファに座る。


そして、愛瀧学園長は

棚から分厚い本を取り出す。


そして、長机の上に本を広げる。

そこには満面の笑みでピースをしている

愛瀧学園長の写真が

1ページに大きく載っていた。


その下には彩華学園学園長 愛瀧彩華 と

書いてあった。


『どうだー!これが私が

この学園の長である証拠だー!』


望はまじまじと開かれたページを見ていた。


『…で、でもこの本はあなたが

疑われた時の為に作った偽物かも

しれないかもしれないので、

これだけで信用しろっていうのは……』


あんな事を言ってしまった手前、

引くに引けなくなってしまった望は

苦し紛れにそう言った。


すると、部屋の扉がノックされた。


『学園長、よろしいですか?』


『どぞー♪』


愛瀧学園長が返事をすると

扉が開き、1人の女性が入ってきた。


『失礼します。今日入学の3人の生徒について…

あ。こちらの3人がそうですか?』


その女性は望達を横目で確認すると

愛瀧学園長に聞いた。


『そだよー。

我が学園 初となる男子生徒よ!』


………ん?初?


『すいません。ちょっといいですか?』


彗也は小さな声で言った。


『どしたの?…あっ!この人が誰かってことね!

ほら 逢夢、自己紹介しなさいっ。』


『いや、そうじゃなくて…』


彗也の話を聞かずに愛瀧学園長は

自己紹介を促した。


『おはようございます。そして、初めまして。

この学園で教頭を務めています、

嶺橋みねはし 逢夢あむです。

これからよろしくお願いします。』


丁寧な口調で自己紹介をした嶺橋教頭に

3人は思った。

この人のほうが学園長に向いている。と


見た目も、大人の風格があり

いかにも博識そうで責任感の強そうな雰囲気だ。

そして、1番思った事は…


(……バストがエグい!)


なんというデカさだ……

ハンパない盛り上がり……

いったい、何カップだ……


望は心の中でそう言っていると

戀丸が手を上げた。


『はいっ!嶺橋先生に質問です!』


いつもながら大きな声だ。

そして、望は少し嫌な予感がしている。

いやまさかな。そんな事聞かないよな…


『はい。なんでしょう?』


嶺橋教頭は少し首を傾げながら戀丸の方を向く。


『おっぱい大きいですね!何カップですか?』


うおおおおおお!!的中ーー!!!!

聞いたよこいつ!!!やめろや!!

気にはなるけどダイレクトに聞くなや!!!


そう心の中でツッコみをいれた瞬間…


『Gカップです。』


え。えぇ……。

普通に答えたよ。教頭。


『ウォー!すげぇ!!

やっぱり肩とか こったりするんですか?

日常生活で不便とかありますか?

暑い時は蒸れますか?』


戀丸は教頭に質問を投げまくった。

乳で話題を広げようとするな!


『そうですね。肩はこることはありませんが、

重いと感じる事はあります。

不便とまではいきませんが、

可愛いデザインの下着が

大きさゆえ 損なわれてしまうことですね。

暑い時期は確かに蒸れますね。』


この人もなんでスラスラ答えてんだ。

教頭も少しおかしいぞ。この学園の権力者トップ2が

こんなんで大丈夫なのか?


『はいはい!乳談義はそこまで〜♪

嶺橋教頭よ!この子たちをクラスに案内して。』


愛瀧学園長はそう言ったが、

学園の説明が一切なかった気がするぞ。

教育方針とか校訓とか行事の説明とかないのか?

てか、乳談義ってなんだよ!

乳の談義って!園長室でそんなワードでるかね?!


『はぁ。なんか疲れたな。』


望は、園長室に入ってからというもの

心の中でとはいえ、ツッコミまくりで

疲労が少し溜まったようだ。


『本当に大丈夫なのか?ここ。

初の男子って……』


彗也は、やはり不安でいっぱいのようだ。


『それではクラスの方へご案内します。』


嶺橋教頭がそう言って歩き出そうとした瞬間


『あの!!』


彗也がそれを止めた。

今まで物静かだった彗也が大きな声を

出した為、全員 少し驚いた様子だ。


『愛瀧学園長。さっき言ってた

初の男子生徒って本当ですか?』


彗也は自身の不安の種である事について

学園長に質問した。


『あ!そうそうそれそれ!

言い忘れてたけどここは女子しかいないんだよ!

だから君達がはじめての男子生徒。

本当は女子校だから男子の入学はもちろん、

立ち入りも禁止してたんだよー。』


愛瀧学園長からの答えを聞いて

彗也の表情がより不安に駆られているのが

伺えた。

そして彗也は続けて質問した。


『じ、じゃあなんで俺たちの入学を

許可したんですか?』


確かにそうだ。男性の立ち入りも禁止

していた学園がなぜだ?


『あー、それはねぇ〜

君たちのお母さんがこの学校からの卒業生でね。

それはそれは色々な方面で良い成績を残して、

学園に功績をくれた生徒だったからだよ!』


なに?!俺たちの母親が

この学園の卒業生?!知らなかった。


『あの、その良い成績って例えばなんですか?』


今度は望が愛瀧学園長に質問した。


『それについて教えたいところなんだけど、

そろそろクラスに行かないとだから

また今度ね!さっ!いってらっしゃーい♪』


愛瀧学園長は、半ば強引に話を終わらせ、

3人を園長室の外へと優しく押し出した。


『良い成績ってなんだろう。気になるな…』


思えば3人は母親の学生時代を知らなかった。


『まぁ、そんなの帰ってから聞けば

わかるっしょ!

とりあえず今は新天地に胸を高鳴らせとこう!!』


戀丸はそう言って望に笑いかけた。


『そうだな。』


望も微笑みながら頷いた。


『彗也も!不安にがってたってしょうがない!

全力で楽しむ事を第一に!

一緒にガンバロー!!』


戀丸は彗也を励ました。

その一言で彗也の不安は

だいぶ和らいだように見えた。

やはり、戀丸はすごい人間だ。


『それでは、行きましょうか。

ついてきてください。』


嶺橋教頭がそう言って歩き出した。

その後ろを着いていく3人。

もうすぐ、新たな場所での生活。

戀丸のお陰か、不安な色は今のところ

3人の中には見当たらない。

女子がいない事で味わえなかった青春の味を

ここで存分に味わおう!


『ところで、教頭先生!

この学園は成績を平均して

クラス分けしてるんですか?』


戀丸がクラスへ向かう途中の階段で

嶺橋教頭に質問した。


『いいえ。この学園では成績によるクラス分けは

していません。生徒、一人一人の特徴で

振り分けています。』


ん?どういう事だ?

3人は思った。


『えーと、つまり??』


望は顔に?マークを浮かべながら質問した。


『答えはクラスに行けばわかります。

フフッ。楽しみにしていてください。』


なんか、怖い。また不安が込み上げてきたぞ。


『さぁ着きました。

奥から、コデマリ、ポーチュラカ、タチアオイ

になります。それでは自分のクラスの

前で待っていてください。

もうじき担任が来ますので。』


そう言って嶺橋教頭は階段の方へと

去っていった。


『よし!

3人で絶対に青春をつかむぞーーー!!!』


急に号令を始めた戀丸に

ビックリしながらも望と彗也も答えた。


『おーーー!!』


そして3人は自分のクラスの前へと向かった。

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