第4話 私立彩華学園


転校を承諾してもらった次の日の朝。


いつものように3人で

学校へと向かっていた。


『……どうだった?』


戀丸が昼休みまで我慢できずに切り出した。


『おいおい。昼休みに報告って話だろ?

それまで我慢しろよ。』


彗也がそう言うと戀丸は

少し俯いた。


早く結果を聞きたいのだろう。


『まぁまぁ。戀丸はさ、

好きなおかずを1番最初に食べる性格だから

早く聞きたいんでしょ。』


望は軽く戀丸をいじりながら言った。

しかし、望は昨日の神華の言い方 的に

2人の結果は大丈夫だと思っていたため、

表情に余裕が見えた。


『あー、早く結果聞きたーーーい!』


結局、戀丸はそれから

昼休みになるまでこんな感じで、

結果が聞きたいあまり、

授業にも、いつも以上に

集中できていない感じであった。


そして、ついにきた昼休み。


戀丸は

いの一番に立ち上がり

弁当を取り出した。


『彗也!望!早く行くぞー!!』


戀丸はそう言うと

2人を急かして、小走り気味で

いつもの場所へと向かった。



そして、部屋に入り 3人はソファに座る。


望と彗也は弁当の蓋を開け……ようとしたが

戀丸がそれを止めた。


『ちょい待ち!!

先に結果 言おうよ!』


辛抱たまらんと言った感じで

戀丸は言った。


『よし。じゃあ俺から言うわ。』


まずは彗也が結果を報告する。


『OKでした!』


彗也は微笑みながらそう言った。


『おおーー!!やったね!!』


戀丸はすごく嬉しそうだ。


『んじゃ、次は望!』


『……………。』


望はうつむき、深刻そうな顔をしている。


『えっ…。望?どした?まさか……』


戀丸は心配そうに望の顔を覗き込む。


『OKでした!!』


望は笑みを浮かべて答えた。


『うぉっっしゃーーー!!

キタキタキターーーーーー!!!』


戀丸は声をこれでもかと張り上げながら

歓喜した。


『ちょっ、うるさっ!

もっと静かに喜べよっ。』


望はあまりの声量に驚いた様子だ。


『ごめんごめん!嬉しくてさぁー!

これで めでたく3人一緒に

転校できるわけでしょ?!

新たな人生を3人で歩めるんでしょ?!

嬉しいじゃん!!』


戀丸は本当に心から嬉しいようだ。


『まだ喜ぶのは早いだろ。

試験とか面接もあるだろうしさ。』


彗也が現実を叩きつける。


『うっ…。それは考えたくなかった。

でも!頑張る!そこはガッツだぜっ!!』


戀丸は不安を打ち消すために

自らに気合をいれる。


『んまぁ、なんとかなるでしょ。

戀丸も、こうなった時はすごいから。』


そう。昔から戀丸はやる気になると

とんでもない才を発揮するのだ。


『確かにそうだなっ。

何とかなるだろ!』


彗也もこういう時の戀丸の力は

凄まじいものがあると知っている。


そんな時、望の携帯が鳴った。


『はなちゃん からだ…

なんだろう?』


望は少し不安そうに電話に出た。


『もしもし?どしたの?』


『あー、ごめんね!お昼休み中に〜。

3人に話があってね〜。

彗也くん も 戀丸くん も 近くにいるでしょ?

スピーカーにしてもらってもいい?』


望は携帯のスピーカーボタンを押した。


『もしもし〜、聞こえてる〜?

転校についてちょっと説明したくて

お電話しました〜。』


神華はいつもの ほんわかとした感じで

話し出した。


『まず、3人の転校先は

私立彩華学園しりついろはながくえん

ってとこです!

そしてクラスは〜、

まず、望が コデマリ組。

彗也くんが ポーチュラカ組。

戀丸くんが タチアオイ組

だからよろしくね〜。』


クラス名は花の名前で統一しているようだ。


『え?ちょっと待って

3人とも別々のクラスなのかよ。

ヤバいかも…』


彗也が早くも不安を吐露した。


『大丈夫だよ〜。彗也くん。

教室は2人の隣だから、すぐ会えるよ〜。』


神華は彗也に言った。


『それならまだ大丈夫……なのか?』


彗也は、まだ少し不安を拭えないようだ。


『それからそれから〜、

試験と面接はないからねー。

勉強の必要はないよ〜。

今日、3人が

帰ってくる頃にはそれぞれの家に

制服とか、必要な教材とかも届いてるから

安心してねっ。』


『えっ。いくらなんでも早くない?

まだ、昨日 転校の話したばっかなのに。』


望は神華に言った。


『それはそうだよ〜。

だって3人とも明日から

彩華いろはな学園 通うんだから〜。』


『えぇ?!!明日から?!』


3人は驚き、同時にそう言った。


『わーお、いきなり大きい声でビックリ!

そーだよー、明日からだからね〜。

説明疲れちゃったから、

他に聞きたいことがある場合は各自

自分の親から聞くこと!

じゃあ、よろしくね〜。』


ブツッ


神華は一方的に電話を切った。


望『あ、ちょっ!……電話 切るのはやっ。

にしても明日からって…。』


彗也 『1クラスに女子

どのくらい いるんだろ…?』


戀丸 『まぁでも!善は急げって言うし、

早いに越したことはないでしょ!』


望 『善は急げってそういう感じで

使わなくない?

とりあえず細かいことは

家に帰ってから聞くか。

また何かあったら連絡な。』


望がそう言うと3人は弁当を食べ始めた。



そして、下校の時間。

いつもの帰り道を3人で歩く。


『あーー。大丈夫かな、俺。

別のクラスだとは思わなかったわー。』


彗也はまだ、そこが不安なようだ。


『まぁ、それも良い特訓になるよ。

常に俺らが近くにいたら、

彗也も敢えて女の子と話さないでしょ?』


望が彗也に考えを投げかける。


『んー。確かにそうかも。

いつまでも女性恐怖症でいられないしな。

社会に出て困らない為にも

頑張るかー!』


彗也の不安はすこしだが軽くなったようだ。

やる気が出てきている。


『いやぁー!楽しみだね!!

誰が1番に彼女つくるか勝負なっ!』


テンションの上がっている戀丸が

急に勝負を申し込んできた。


『なんだよそれ。俺メッチャ不利じゃん。

……でも勝負なら負けらんないな。』


これも昔からだが、

勝負事となると彗也は強い。

期待ができそうだ。


『おっ、良いねー彗也。

じゃあ、ビリは2人に飯奢りね。

高めの店で。』


望も どこか自信げな顔でそう言った。


『良いね良いねーー!!

俺は焼肉!絶対負けないからなー!!』


戀丸はやる気まんまんだ。


そんな話をしていると、

やがて3人が別れる道へと帰路は

差し掛かっていた。


彗也『じゃあ、また明日なー』


望『おう。2人ともじゃあねー』


戀丸『バイバーーイ!』



遂に明日から始まる彩華学園での

スクールライフ。

3人は期待と少しの不安を抱きながら

望と彗也は22時頃、戀丸は21時頃に

眠りについた。


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