第14話 暇つぶし

 「眠い...」


3時間目終了。

初日のため、今日はこれ以上授業は行われず自由時間となる。


『自由時間は新入生同士の交流や、授業内容の予習など有意義な時間にするように!』


(なーんて、言ってたけどなぁ...)


やる事が、無い。

中等部から高等部の授業内容を確認する。などの暇つぶしもあるのだろうが、それはもう授業中にやってしまった。


(どーしよ...)


ティア達も工房へ剣を取りに行ってしまい、話す相手もいない。

ぼーっとしながらコードが歩いていると、


「わぶっ?!」


何かにぶつかり、倒れる。


(何だ?壁ーー)


壁にでもぶつかったか?と思い、コードは顔を上げる。するとそれはーー


「ん!?すまない。新入生か?」


黒い髪の、凛々しい青年だった。


「大丈夫か?ぶつかってしまってすまないね...怪我は?」


「あ、はい。大丈夫です」

(凄い紳士的だ!)


「ああ、それは良かった。僕の名前はガルザ、ガルザ・カルマーニ。君の名前は?」


黒髪の青年ーーガルザは、軽々とコードを引き起こし、名を聞く。


「あっ、コードです。こちらこそすいません...」


コードも名乗る。


「大丈夫さ、所で君はどこに行こうとしてたんだい?」


「あー...」


(ぼーっと歩いてた、なんて言いにくいなあ)


「...図書室、図書室無いかなって探してたんです」


「図書室か...ここから少し遠いな、ぼくが案内しよう。付いてきて!」


新入生である自分に配慮して、道案内をしてくれる。そんなガルザに、コードは少し後ろめたさを感じていた。


(なんか悪いなー...ぶつかったのこっちなのに)


「来ないのかい?」


「あっ、今行きます!」


考えていても仕方ない。そう言う事にして、コードはガルザの後ろをついて行く。






後ろをついて行くのはいいがーー


「なんか、視線が凄くないですか...?」


「すまないね...僕、良くも悪くも注目受けてるようでさ...」


「?何したんですか?」


「新学期前に、中等部と高等部による魔灯騎士マジックリッターでの模擬戦があってね?」


魔灯騎士マジックリッター同士の戦い、聞いただけでつい、コードは興奮してしまう。


「はい!」


「で、それの大将として僕が選ばれたんだ」


「すごいじゃないですか!」


「うん、それはとても光栄な事だったんだけど...」


「?」


少し、顔が暗くなる。


「結果で言えば、中等部の勝利。僕は次世代のリーダーとなる騎士、なんて言って貰えてるけど、本当は負けた高等部からの逆恨みと、同級生からのプレッシャーに耐える日々さ...」


(泣きそうになってる...)


「本当の僕は、弱虫なんだよ...」


ガルザの顔を見て、コードは話す。


「本当の弱虫なら大将なんて大役、引き受けないでしょう?」


「えっ...」


「貴方の本当は弱虫なんかじゃない。人の期待を抱えすぎるだけの良い人です。試しに辛いって、同級生に言ってみたらどうですか?」


「...ありがとう。優しいんだね、君は。」


そう言うと、ガルザは足を止める。


「ここが図書室だ。話に付き合ってくれてありがとう!」


「はい、ありがとうございました!」


図書室から離れていくガルザの顔はーー


「同級生に話してみるよ!」


晴天のような、笑顔だった。


「頑張ってー!」


(...さて、)


(図書室で暇、潰すか...)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「んー...」


(あんまり良さそうな本無いな...)


図書室には、魔法関連の本が数多く保管されている。が、コードが魔法を使うのはその延長線上に魔灯騎士マジックリッターがあるからであり、それに類しない魔法に興味を持たなかった。


「おっ...!」


コードの目の先には『聖獣のすべて』と書かれた本があった。


(面白そう...!)


精一杯背を伸ばし、その本を手に取って、椅子に座る。


「聖獣とはー...」


『聖獣とは、それぞれの国の象徴とされる魔物であり、1つの国に「聖」と、「いびつ」と呼ばれる2体の聖獣が存在している。』


「へー...」


読み進めていく。


『フラマヴィル王国の聖獣は「聖」がフレズヴェルクと呼ばれる羽を持つ鳥の頭をした巨人。 知恵と記憶を司るとされる。「歪」がアジ・ダハーカと言われる、心臓を二つ持つ巨龍である。』


『聖が護り、歪が壊す。そのループによって、魔物が異常に増殖することもなく我々は生きることが出来ている。』


『聖獣が死亡した場合には、その死体が大地の栄養となり、最終的に大地にはその聖獣が生きていた時と同じような生と死のループがまた始まる。』


「ふーん...」


本を読み終え、本棚へ戻す。


(聖獣、その心臓を炉心ハートに使ったらどうなるんだろう?)


そんな事を考えながら、コードは新しい本を探す。すると後ろからーー


「わっ!!」

「ひゃあああああ!?」


「ティア!?」


「探しましたよ?」


ティアに驚かされ、コードは変な声をつい上げてしまう。


「剣が出来たので、見てもらおうと思いまして!」


(だからって驚かさなくても...)


「わかった、見せてくれ」


「はい!じゃあ工房裏の試し切り場へ行きましょう!」


コードはティアに手を引かれながら、工房へ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「では行きますね!」


工房裏に着き、ティア、テトラ、ジードが剣ーー

『セイバーII』を持つ。


「はっ!」


(ーー疾い!)


ティアが地面を蹴り、3メートルほどの的との距離を一瞬で詰める。


「せぇい!」


そのスピードのまま、的を一刀両断する。


(切れ味も良い...流石職人の作った物だ)


「じゃあ次は魔法ですね!」


「うん!」「おう!」


今度はジードとテトラが剣を構え、力強く振る。


「「はあぁっ!」」


(これも疾い!以前見た炎剣ヴォルカリバーよりも遥かにーー)


炎の斬撃が的へと着弾し、的は焼き切られくずれ落ちる。


「親方ー!凄いですこれ!ありがとうございます!」


「おう、そいつはよかった!」


「で、製作費とかは...」


親方はそれを聞くとニヤッと笑い、


「要らねぇよ。コイツのへの授業ついでに作ったもんだしな」


そう言うと、隣にいたガラタの頭を両手でぐりぐりっとする。


「いででで!」


「まあそう言うわけだからよ。貰っとけや、その剣!」


ティア達は深々と礼をして、感謝を述べる。


「「「ありがとうございます!」」」


「じゃあもうそろそろ夜になるし、帰ろうか?」


「はい!」


(俺も何か、新しい物作ろうかな...)


コードはそんな事を考えながら、寮へと向かう。

(友達を置いていく事もなくなった。あとはーー)


(6ヶ月後、試験で頑張るだけだ!)






初等部卒業までーー


あと、3年。


試験までーー


あと、6ヶ月。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あらあら兄さん、なんて名乗っちゃって...」


「いつか私達のうちの誰かが、本当の貴方を思い出させてあげる......!」


『ルクスリア、今は自分の役割を果たしなさい』

『君の役割は、あの実験台モルモットが生きているかを確認して帰還する事だ』


「はぁい、お母様、お父様。......いつか、必ず、その笑顔を消してあげるから。待っててね?兄さん...」






襲来までーー


あと、


X年とX日。

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