第5話 夜、ベッドの上で
(本当にいいのかな...)
灯が消え、月の光のみに照らされるベッドの上で考える。
あの後寝床をどうするかと言う話があった。
それもそうだ、いきなり人が家に泊まるとなって、「はいどうぞ」とすぐに寝具を用意できるわけがない。
最初はリビングにあるらしいソファで寝させてもらおうと申し出たのだが、まぁ、うん。
「ふあぁ...!やはり魔灯騎士マジックリッターのフォルムはとても美しいです...!」
この横で本を読みながら感動している、ティア・アルカトラのごり押し。 それによって今同じベッドで寝ているわけだが。
「なあ...」
「何ですか?」
1つの疑問。
心にあるそれを解決するために、ティア・アルカトラへそれを質問する。
「何でそんなに俺に優しくしてくれるんだ?碧炎...の? 戦士ー... と同じように空から現れたからって、俺は碧炎の戦士の生まれ変わりでもない。 優しくする理由は無いだろ?」
不思議だった、何故、俺に優しくしてくれるのか。
ティアは本を置き、話し始める。
「今日は流星祭と言う祭りなんです。碧炎の戦士を称えるための、祭り。 この日に私は生まれたんです」
「誕生日か」
ティアは頷き、月明かりが照らす窓へ顔を向けて話を続ける。
「自身の目標を達成するために修練を積んでいたところ、貴方が現れました。 で、魔物からの襲撃を庇ってくれた貴方はなんと、碧炎の戦士のように空から現れたと言うじゃ無いですか!」
だんだんと言葉が興奮気味になってくる。
「そこにシンパシーを感じたんです! 流星祭の日に生まれた私と、流星祭の日に空から現れた貴方。 これ以上のことはないでしょう!?」
「...それで、優しくしてくれたの?」
喋り出すと止まらないのだろうか?
少し引きながら、結論を求める。
「いいえ」
ティアは冷静さを取り戻して否定し、答える。
「言葉の分からない貴方が、名前も知らない私を助けてくれたから... その恩返しに、私は貴方に優しくしたいと思ったのです」
振り向いたティアの顔が、月光に照らされる。
光は優しげな顔を浮かべるティアの瞳を輝かせ、ティアはその黄色の瞳で、言葉が嘘では無いことを伝えてくる。
「そっか、ありがとう」
疑問は解け、微笑んで感謝を伝える。
「いいえ、どういたしまして。そしてこちらこそ、ありがとうございます」
互いに礼。
でも、なんだか━━
「ぷっ」
「ふふっ」
互いに照れ臭くて、笑ってしまう。
「コードさん!」
「コードでいいよ」
「じゃあ...コード!」
ティアが決意を決めたような顔で話す。
「一緒にエルグ騎士学校を目指しませんか?」
「騎士学校?」
聞き慣れない言葉だ。 異世界の言葉を聞き慣れているはずも無いのだが...
思わず聞き返し、ティアはその顔と輝く目を近づけて答える。
「名の通り、騎士を目指す者が集う学校です。そこで
「おお...」
「俺なんかにできるか「できます!」
ネガティブな言葉を、大きな声で遮られる。
耳がキンキンと鳴るような声の大きさだ。
「努力は裏切りませんから! 一緒に鍛錬を積みましょう!」
「...ああ!」
きっと、大丈夫だ。
「じゃあ明日から勉強ですね。騎士には教養も必要ですから!」
「おー!」
俺たちがはしゃいでいると、隣の部屋から壁越しに、
「そろそろ寝なさい?起きれなくなるわよ?」
と、スピラ夫人の声が聞こえてきた。
その言葉に従い━━
「「はーい!」」
俺たちは元気よく返事をして、就寝した。
王立エルグ騎士学校の入学試験までーー
後、3年と35日。
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