第4話 アルカトラ家
「さて、質問なのだが...」
エンキさんは近くにあった椅子を引き寄せ、座りながら話す。
「君は一体どこから来た?先程発した言葉...ここフラマヴィル王国の言葉でも、南東のディルガ王国の言葉でもない。未知の言葉だ。」
真面目な質問だ。 ちゃんと答えよう。
たとえ「信じられない」「無茶苦茶だ」なんて言われても、これが
それに信頼できる真っ直ぐな瞳を捉え、意を決して話す。
「...私は、この世界の人間ではありません。いわゆる別世界の人間です」
「...何?」
驚いているが、当たり前だ。
「それに...」
続ける。
「私には記憶がほとんどありません。
小さなカプセルに乗せられ、空から落ちてくる前までの記憶がほぼ無いのです」
「...空から?」
「ええ」
聞き返され、すぐに返事をする。
すると、エンキさんは考え込んだ末に神妙な顔で離し始める。
「もしや君は━━」
話そうとした瞬間。
「貴方はもしかして、
ティアさんがエンキさんの言葉を遮るように、饒舌に喋り始める。
「碧炎の戦士...?」
わからない言葉が出てきて、つい聞き返す。
それに対しティアさんは、水を得た魚のように元気に話し始める。
「はい!碧炎の戦士は数百年前、流星が流れる日に現れ、
つい、顔を顰めてしまう。 だがそんなことお構いなし、と言うようにティアさんは話を続ける。
「自身も
語り終わると恍惚の表情を浮かべて、「やりきった!」みたいな雰囲気を出している。
が、俺は正直言って少し引いている。
するとエンキさんが
「すまないね、君が碧炎の戦士に似ている、と言うことで息子が興奮してしまって...」
エンキさんが頭を下げて言う。と言うか息子って事はやっぱり男の人だったんだ。
ティアさん。
「あっ大丈夫です。ところで
気にしていない旨を伝え、気になった
「ああ、巨大な魔物と戦うために作られた兵器でね。 宙に漂う
そう言うと本棚から本を取り出し、中の挿絵を見せてくれた。
「おぉ...」
図鑑の様な本の中には、無骨でありながら、何処か美しさを感じる甲冑の曲線のようなデザインの騎士が描かれており、その美しさについ息が漏れる。
「...良ければ貸そうか?」
俺を見て気を遣ってくれたのか、エンキさんが提案してくれる。
「良いんですか!?ありがとうございます!」
正直、いまの一瞬で
「ちなみに
本を手元に寄せて、先の話で当然のように出た知らない単語を質問する。
「そこからか...」
エンキさんは少し面倒くさそうに頭をかき、
「よし」
と言って話し始めた。
「
「魔法を打ち出すのをスムーズにするために言葉で
「へぇ...」
解説を聞いて、素直に感心する。
「さて、怪我が治った後はどうする?」
立ち上がったエンキさんが聞いてくる。
「一応この国、フラマヴィル王国には国籍のない者を受け入れる施設があるし、働き口くらいは紹介できる。 無理に決めなくとも我が家で暫く考えてくれても良い」
自身の身の振り方をどうするか━━
重要なことではあるが、少し未来のことだ。この怪我が治った後...
あまり実感を持って決めにくい。
「すまないね、本当は怪我が治ってから聞く物だが、私と妻は3日後には
時間があまり無いらしい。早く決めたいところだが...
(どうしようか...?)
悩んでいると、ティアさんが口を開く。
「
? 今なんて?
「ティア、彼の了解も得ずに決めるべきではない。」
エンキが諭す。
「問題ありません。どうせ言葉も分からないのであれば、どこへ行っても変わらないでしょうし...」
言葉が心に刺さる。
そう言われれば、このイヤホンのような物と首輪が無ければ意思疎通もままならない。
ティアさんが続ける。
「
見抜かれていた。
一方でエンキさんはため息を吐きながらこちらに聞いてくる。
「君は良いのかい?」
俺は冷静を装いながら答える。
「はい。 大丈夫であればぜひ」
返事を聞いたエンキさんは笑みを浮かべ、
「じゃあティアを頼むよ、あの子の初めての友達になってやってくれ」
と言い、妻であるスピラさんと寝室から出て行く。
「ではコードさん!」
ティアさんが、起きた時と同じくらいに顔を近づけてくる。 良い匂いがする。
「同じ
笑顔と共に、手を差し出される。
俺は笑ってその手を掴み━━
「うん、よろしくね。ティア!」
こうして俺は、初めての友人となる彼と出会った━━
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