第2話 出会いの「流星祭」

流星祭——その祭りは数百年前、流星と共に現れた、「碧炎へきえんの戦士」と後に呼ばれた者がこのダレン大陸に、戦うための兵器であり、騎士の誇りを形にした物とされる魔灯騎士マジックリッターと呼ばれる人型兵器をもたらし、大陸を飲み込まんとした魔物の大群を打ち払った彼を称えるために作られた祭である。


少綺麗な服を着る兄妹が野原を走る。


「おにーちゃん!見てあれ!すっごーい!」


マルーン色の髪をなびかせ、少女は目を輝かせながらはしゃぐ。


「本当だ...すっげぇ...」


至極色の髪色の少年は大空を流れる流星群を見て、静かに感動を覚えていた。


「家、抜け出して良かったね!」


無邪気な笑みを浮かべる妹に兄は「ああ」と答え、もう一度、空を見上げる。


「ん?あれ...」


「どうしたの?」


兄が不思議そうに見上げる空には―—


「紅い...」


紅い、流星が流れていた。




紅い流星が、大きな音と共に森に落ちる。


木々は倒され、鳥は逃げた。安寧を壊し落ちてきた流星の中から、人影が現れる。


「痛い...」


ボソッと、着陸に対して文句を言う様に扉を開き現れたのは、つむじが白く、外に行くにつれて紫になる髪色をした青年であった。


「ここが...異世界?普通の森の様な...」


青年は不思議そうに周りを見渡す。


「こんなことしてる場合じゃないな。あのエネルギー炉を持って、人を探さないと」


そう言うと青年は、淡く緑色に光る動力炉を、流星だと思われていたカプセルから取り外し、歩き始めた。


おじさんの顔が、脳裏に焼き付いている。


『やってみせろ、コードクソボウズ


「...生きてみせるよ、おじさん。」




「まあまあ歩いたな...」


数十キロほど歩いただろうか。

人の気配どころか森の出口すら見えない。 不安になり、「人、いるよな...?」なんてコードが呟き出す。


「ーーー〜〜!」


ふと、森の奥から誰かの声が聞こえた。

人がいる。 そう考えると頭より体が先に動いてしまう。 声の方へ走る。走る。走る。


「ハッ...ハァッ...」


森の出口が見えた!出口を走り抜けるとそこにいたのはーー



「?」



低身長、白髪、長めのボブカットのーー女せ、男?


「どっちだ...?」


一旦停止して、目を細めながら自分より少し小さい目の前の人を見つめる。


「??」



相手の困惑してる顔で正気に戻る。まず話を聞かなければ...


「あー...えっと...ここはどこですか?」


まずは簡単なコミュニケーションから...


「???」


首を傾げている。

聞こえなかったかな?もう一度...


「ここはどこですか。」


もっと丁寧に、ちゃんと聞こえるようにもう一度声を発する。


「????」


? どう言うことだ? また首を傾げている。 


...いや、ちょっと待て、これはまさか...


「ーー〜ー〜?」


は? 


聞いたことのない言語。 頑張れば発音できそうではあるが... それよりも大事な事がある。


「嘘...」


最悪だ、言葉が━━ わからない!





「どうしよう...?」


思わず頭を抱える。


「〜?」


何か言ってるが全然分からない、なんかすごいこちらを覗き込んでくるし...


これからどうし━━


「なんだ...?」


自身が来た方角とは違う方から、何か、人ではない音が微かに聞こえる。


フシュルフシュル、と小さく声が聞こえてくる。


周りを、警戒する。横にいる白髪黄眼のおと━━おん━━...男女おとこおんなさんは気づいてないようだ。


ジャリ...ジャリ...と小さい音が聞こえる。

一体どこから...ッ!!


刹那、白髪の子の死角から、鋭い牙を剥き出しにした大きなトカゲが現れる。


(まずい!食われる!)


トカゲは白髪の子の首筋、殺せるであろう部位へ驚異的な脚力で飛びかかる。

白髪の子はまだ気づかない。


「クッソ...!」


走る。 手を伸ばす。 助ける。絶対に━━届かせる!


「危ない!!」


飛び込んで、トカゲから彼を庇う。


突き飛ばされた彼は驚いた顔をしている。 それもそうだ。 大きめの機械を持った言葉のわからない男にいきなり突き飛ばされたら、みんなそんな顔をするだろう。


「痛...ッツ!!」


肩に噛みつかれる。 骨までいった。 ゴリゴリと牙が骨を削る。 痛すぎる。 噛みちぎられる。


「あ゛ぁっ...!」


噛みつかれている所が痺れてきた。 毒持ってやがるコイツ。 


白髪の彼は━━


「ーー〜」


何か唱えている。 何してんだ、さっさと逃げてくれ。


「ーー〜ー」


杖が、光って...嘘?!


「ーーー!!!」


杖から放たれた炎が、熱と共に、俺ごとトカゲを吹き飛ばした。


「熱っ!」


吹き飛ぶ中で肩からトカゲが離れ、木にぶつかる。 最後に見たトカゲの姿は、灰になった姿だった。 

アレが自分に直撃していたかもと思うと、恐ろしい。


「あー...うーあー...」


もうまともに声も出ないか...


「ーー?」


白髪の彼が近づいてくる。


なんか言ってるが分からないし返事もできない。 心の中でありがとう、と言っておく。


助けた彼に覗き込まれながら、


俺は


意識を


手放した━━







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