紅き赫星のイラ

@hikaritikuwa

流星邂逅編

第1話 目覚める流星と白き雛


 「——クソっ、痛えな…自分たちで作った子供でも容赦なしかよ…」


——銃声で起きる。

目の前のこの人は誰だろう…頭が痛い…。


「おっ、起きたかクソボウズ!薬を打たれてたが平気か?」

「あなたは、誰、ですか」


回らない頭で、考えれる事を質問する。


「…そうか、忘れてるか。」

熊のような人が、目に見えて悲しそうな顔をする。


「忘れてんならいい、こんなおっさんの名前、覚えてても役に立たねえだろうしな。」


言い終わるとおじさんは笑って言う。


「流石に自分の名前ぐらいは覚えてんだろ!?おっさんに教えてくれや!」


名前?


「…」


名前…覚えている、誰かわからないけど大切な人、その人にもらった名前。それは…


「コード」


名前を言うと、おじさんはニカって笑ってこう言った。


「いい名前だ。」

「いたぞ!あそこだ!」


また知らない声が聞こえて、銃弾の音が無機質な廊下に響き渡る。

おじさんは舌打ちをして、決意をしたような声で言う。


「無理矢理包囲を破る!しっかり掴まってろよクソボウ…いや、コード!」

「わかった。」


おじさんが俺を抱え、走る。

きっと撃ち返してるのだろう、頭上から耳をつんざくような銃声と撃たれた人の声が聞こえる。


「着いたぜ…ここだ。」


ぜえぜえと息を吐きながらおじさんと俺は人1人が入れるようなカプセルの前に立つ。


「ほれ、さっさとこれに乗りな。あいつらすーぐ追いつくぜ?」

「これは…何なの?」

「コイツは希望さ、お前がこれから生きていくのに必要な、な」

おじさんは続けて、

「まぁモノを動かすのに必要なエンジンみたいなもんだよ。ただ無限とも言える力を持ってるからな、皆を救う神にも滅す悪魔にもなれちまう。」


「開きません!」

「レーザーカッターを使え!」

「逃げられると思うなよ!!」

後ろから怒号が響く。

「さあ、乗りな。」

「おじさんはどうするの?」


聞くと、また笑顔で


「大人、舐めんなよ〜?生き抜いてやるよ。お前が異世界から帰ってくるまでな!」

「異世界?!」


思わず聞き返してしまう。


「おう、異世界だよ。こんな所よりは良い暮らしができるはずだ。」


そう言うとおじさんは、俺の首根っこを掴み、カプセルに投げ入れた。


「おじさん!」

「生きろよコード!お前は神にも悪魔にもなる、俺たちの希望なんだ!」

おじさんがカプセルに接続されたパネルに何かを入力すると、視界が赤い光に染まっていく。

それと同時に後ろの扉が焼き切られる。


「動くなぁ!!」

「言われて動かねえ奴がいるかよ!じゃあなコード。俺がつけた名前、覚えててくれて嬉しかったぜ…」


——カプセルは光に包まれ、流星のように、飛んでいく。


「おじさん…」

「あれ…涙が…何で…?」


——彼は、コードは知らない、これから自身を飲み込むような大きな渦に巻き込まれていく事を——


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これはある世界でのお話です。


「大丈夫でしょうか...」


馬車に揺られながら、お母様が心配そうにつぶやきます。


「スピラ、何か不安でもあるのか?」


それを聞いたお父様が、お母様の名前を呼びながら質問します。


「いえ、この道は舗装こそされているものの、魔物が出ることが多い、という話ですから。」


「それは心配いらないだろう。騎士団長である君の父上が、魔物がいるかどうかの見回りをしてくれる、と言ってくれたのだ。それに、私たちには頼もしい護衛が付いているから案ずることはないよ。」


お父様は優しく、お母様の不安を取り除く様に話をした後、私を抱き抱え、外にいる『頼もしい護衛』を見上げます。


「おとうさま、たのもしいごえいとは?」


「ん?おぉ、お前は見たことがなかったな...」


私がそう言うと、お父様は小さな私にもに見える外が見える様にしてくれました、そしてそこから見えたのは


「うわあぁぁぁ...!」


思わず感嘆の声をあげてしまうほど大きく、そして美しい騎士が私たちを守るように歩いていたのです!


「あれは魔灯騎士マジックリッターと言って、数百年前にこの大陸を救った戦士が作り出したものだ。

あのタイプは...確か「フラマイル」と言ったかな。

そんなにアレが気になるか?」

「はい!」


お父様の質問についノータイムで答えてしまうほど、

私にとって、魔灯騎士マジックリッターとの出会いは衝撃的なものでした!


「そうかそうか!なら期待すると良い、王都ではもっと近くで見れるぞう!」


「ほんとですか⁉︎ やったー!」


「もう貴方ったら...まだ王都に着くまでには時間があるんですから、気が早いですよ?」


お父様の言葉に嬉しくなって、つい大声を出してしまうほどでした!

魔灯騎士マジックリッターをもっと近くで見れると言うのは魅力的で、その時が待ち遠しく感じられました。

ですが、誰もが予想できない形でその時は来たのです。




馬車が音を立てて止まる。


「何事か⁉︎」


「エンキ・アルカトラ様、前方に魔物です!虫型が1!飛行型が1!」


「仕方がない、スピラ!俺たちも援護するぞ!」


「この子はどうしますか?!」


「馬車の中から出ない様にしてくれ!」




王都まであと少しと言う所で魔物と遭遇してしまいます!正直言って私は興奮していました!なんと言ってもあの魔灯騎士マジックリッターが戦う姿を間近で!この目で!見届けられるからです!


「この中から出てはダメよ?」


「わかりました!おかあさまもごぶじで!」


「ええ、もちろん。」


馬車の扉が閉じられました。




「行きましょう、あなた!」


「ああ!馬車へは近づけさせん!」


そう言うとエンキは、サソリの様な魔物の注意を自分に引かせるように魔物の足を剣で攻撃していく。


「キィヤァァァァア!!」


自身を煽る様な攻撃に怒りを覚えたのか、魔物は攻撃の目標をエンキにして突撃してくる。


(ようやくこちらに意識を向けてくれたか!

ここから——)「だッ!」


ズシャッ、と刃が肉を裂く音と共に、先程まで長く伸びる触肢に付いていた鋏が地面に叩きつけられた。


「キィイイイイ!!」


魔物が苦悶の叫びを上げながら、背についたハンマーの様な尾でエンキを潰そうとする。


「今だ!スピラ!」


「——燃えて、ヴォルカ!」


合図とともに引きトリガースペルを叫び、攻撃体制の魔物の無防備な顔へと放たれた炎が直撃する。


「ガァ——ゴガ——」


「トドメだ...!」


炎に包まれ、叫ぶ事すらままならない魔物の背中に飛び乗り、心臓の位置に狙いをつけ——


ガラスが割れる様な、甲殻が割れる高音と共に血が勢いよく吹き出して、サソリ型の魔物は沈黙した。


「あなた!」


「大丈夫だ、怪我はない。それよりも馬車は?!」


「騎士団の方々が守ってくれています。あなたは休んでいてください。」


「ああ...すまない、もう動けない...」




「くそ...!動きが早すぎる!馬車どころか自分を守るので精一杯だ!」


飛行する魔物は翻弄する様に魔灯騎士マジックリッターの攻撃を避けます。


『俺がヤツを地面に捕まえる!お前は馬車を見ていてくれ!』


一機のフラマイルが、魔法で牽制をしながら、魔物を自分の近くに誘き寄せて行き...


『まだだ...もっと近くで...!』


『今だッ!』


近づいてきた魔物を、動けない様に抱きしめます!


「ギィオオオォ!!!」


『今だ!やれぇぇ!』


「うおおおお!」


もう一機が剣を振り下ろそうとしますが...


「ギュオッ!」


「うわっ!?」


それを魔物は口から放った粘着液で弾き飛ばします!


「こんっの...舐めるなァ!」


「ギ!?」


剣を弾かれたフラマイルは、魔物の頭を掴み...


ミシミシミシミシ...

バギィッ!!


首をもぎ取りました!


「や、やった...」『生きた気がしないよ...』


安堵する騎士たち、それに対して...


「すごーい!すごかったですきしさん!」


この時の私は興奮しっぱなしでした!


「こらこら、騎士さんたちを休ませてあげなさい。」


「あっおとうさま!すごかったんですよ!こう、ばばーって!」


「楽しそうだな...」


この時私は、ある決意をしました。


「おとうさま!」


「ん、なんだ?」


「わたしは魔灯騎士マジックリッターをつくります!」


「...そうか、夢ができたか」


「はい! そしてじぶんのためにつくった魔灯騎士マジックリッターにのって、だれよりも魔灯騎士マジックリッターでたたかいます!」


「...大変だぞ?」


「わかってます!」


「じゃあ王都に着いたら勉強からだな!ティア!」


「はい!」



そうして私、ティア・アルカトラは王都に着き、魔灯騎士マジックリッターの勉強、魔法の構造の理解、肉体の修練をしていきます。


ですがこの時の私は知りません。


誕生日、流星祭の日にあの人と出会い、大陸を巻き込んだ戦いへ身を投じることになるとは——

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