第8話

「こらっ、いきなり何しやがる!!」


突然殴られて、俺は男に叫ぶ。


怒り心頭の所存。



「ふっ、ゴブリン如きが・・・」


男は俺を無視して、女騎士の方を向いた。



「これでお前は・・・」


男は微笑する。



(なんなんだよ)


急に現れて、殴るったり、独り言を言ったりする男に、俺はイライラする。



そんな中、女騎士は男を見る。


「どうして、こんなことを・・・


 叔父上・・・」



(っ!?


 この男、女騎士の知り合いだったのか・・・)


彼女のつぶやきを聞いて、俺は驚く。



「まさか、騎士のお前が、ゴブリンなんかを連れているとはな」


「別に・・・連れてきたわけでは・・・」


女騎士は目を伏せる。




「こんなヤツを連れて、どうするのやら。


 もっとマトモな使い魔はいくらでもいるというのに。


 ・・・まぁ、細かいことはどうでもいい」


男は、女騎士の方に近づく。



「私が直接手を下す予定だったが・・・


 いいことを思いついた。」


男がそう言うと



ビュンッ



俺の足元には魔法陣ができる。



「っ!?」


俺は、魔法陣が発する光に飲み込まれた。



「ゴブリンッ!!」


女騎士は俺に向かって、叫ぶ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・っ!?」


なんということであろうか。


俺の体はムキムキになっていた。




「ふっはっは!!」


男は笑う。



「ゴブリンよ。


 脆弱なる貴様は、私によって強化された」


男は言う。



(・・・コイツ、なんで俺を強化したんだ?)


俺は不思議な目で男を見る。



「何をボサッとしている。


 お前の好物が目の前にあるだろ・・・」


男が、俺に呆れた顔で言う。



(目の前に好物・・・?)


俺は前を見る。



「くっ・・・」


俺の前には、膝をついている女騎士がいるだけだ。



「ほれ、弱った女に、強化されたゴブリン。


 やれることはわかっているだろ・・・?」


男はニタニタする。



「あっ、そういうことね」


(男は俺に女騎士を襲わせたいんだろう。


 ・・・というか、やっぱりこの世界でも、ゴブリンってそういう存在なの!?


 前、一緒にいたゴブリンはそんなことしないって言ってたのに・・・


 まぁ、いいか・・・)



俺は女騎士に近づいた。


さっきまで魔法陣によって、俺は弾き返されたが、今は違った。



「・・・っ」


女騎士は不安そうな顔で、こちらを見る。



「なるほど、これは絶好の機会だな」


今の状況を確認した俺はそう言う。




「そうだろう!!

 

 ほら、好きなだけしたまえ」


男は満足げな顔をする。




「じゃあ、遠慮なく」ダンッ


俺は地面を蹴って、飛び込んだ。



「うっ・・・」


女騎士は目をつぶった。



「っ!?」


男は驚く。


ゴブリンは女騎士ではなく、


自分の方に、飛びかかって来たのだから。




「さっきのお返し」


俺は空中で拳を握る。



ガンッ!!




男は吹っ飛んで行った。俺に殴られて。



「魔法ってすげえな・・・」


殴って地面に着地した俺は、自分の拳を見つめて、そう思う。



さっきまでの俺とは、比べ物にならない身体能力を持っている。


おかげで、男まで距離があったが、1回のジャンプで近づけた。

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