第6話

「なぜ、貴様は私に情けをかける」


介抱していた俺に、女騎士は尋ねてきた。


「なんとなく」


俺は本心のままに答える。



「嘘だ・・・。


 どうせ、私をたぶらかして、襲うつもりなのだろう。


 なんてゲスな生物なんだ・・・。」



「いや、お前のことを襲うチャンスなんて、いくらでもあったろ。


 そんなことしなかったんだから、俺のことを信用してもいいじゃないか。」



「ふっ・・・どうだか・・・」


女騎士は、俺に対して警戒を解かなかった。


ーーーーーーーーーーーーーー


「では、私は行く」


「ほいですか」


体力が回復した女騎士はこの場を離れるようだ。



「どこに行くの?」


「貴様などに言う必要は・・・」


俺の質問に対し、女騎士は返答を途中で止めた。



「いちよう、聞いてみるか・・・。


 この辺にホコラがあることを知っているか?」


「ホコラ・・・?」


「ふっ・・・やはり知らぬようだな・・・」



女騎士は歩き始める。



「ちょっと待てって。


 俺も一緒にいくよ」


「足手まといなんて、いらん」


「おいおい、空腹で死にそうになったのを助けたのは誰かな・・・?


 俺だろう!!」ドヤッ


「・・・図に乗るな」



ジャキンッ!!!



女騎士は剣を俺に突きつけた。



「これ以上、ついてくるなら斬る」


「わかったよ・・・」



彼女は一人で歩いて行く。



(そんなこといわれも・・・


 暇だし・・・)


気づかれないように、俺は彼女の後をついていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おわああああ!!!」


俺は再び、イノシシに追われていた。


女騎士の後を追うのに夢中で、こいつの存在に気付かなかった。


おかげて、こいつにぶつかって、今現在、追いかけられる。




(ヤバイ、追い付かれる!!!)


もう、イノシシの牙は俺のお尻にブツッと刺さりそうだった。



「うわああああああああああ」


情けない声を出して走っていると・・・




ジャキンっ!!


剣が振られた、音がした。




ドタンッ


イノシシが倒れる。



「本当に無様だな・・・」


「おおっ!!」


女騎士が俺のことを助けてくれた。


てっきり、勝手に彼女の後を追っていたから、見捨てられると思っていた。



「まさか、助けてくれるとは・・・


 悪いな!!!」


「・・・剣を振るいたかっただけだ」


「そんな見え透いた嘘いっちゃって・・・


 本当に助かったぜ!!」


俺が笑顔で彼女にそう言うと



ジャキンッ



彼女は剣を俺に向ける。



「あまり図に乗るなよ」スタスタッ


彼女は歩きはじめる。



(う~ん、もうちょっと俺に心開いてくれてもいいのに。


 でも、助けてくれたってことはかなり心の距離が縮まったってことか)


俺は再び、女騎士の後をついていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る