未来

バブみ道日丿宮組

お題:薄汚い彼女 制限時間:15分

未来

 拾い物をした。

「なにそれ?」

 それを見て、彼女はすごく嫌そうな顔をした。

「赤ん坊」

「それは見たらわかるよ! それをどうしてあなたが抱いてるのかって話よ!」

 ヒステリックだった。

「玄関前に置かれてて……」

 どうどうと彼女をなだめながら、リビングへと一緒に歩く。

 赤ん坊は、家の門の前にダンボールの中にいた。

「まさか、隠し子ってことはないでしょうね」

「そんなモテそうに見える?」

「知らない、知らない!」

 だんだんと足を何度も床に叩きつける。

 起きちゃうからやめてと、身振り手振り。

「今日は遅いから、警察に届けるのは明日にしようと思ってさ……」

「じゃぁ、一緒に行ってあげる!」

 こういうところが彼女のいいところだ。

「ありがとう」

 ふんと、踵を返して、彼女は赤ん坊が寝られるようにリビングに布団を敷いた。3枚敷いたところを見ると、僕らも今日はここで眠るらしい。

「寝てるのよね?」

「たぶんね」

 赤ん坊はすやすやと目を閉じてる。これが寝てる以外の状態だったら、なんというのだろうか。僕は知らない。

「なにこれ?」

 彼女は赤ん坊が身につけてたペンダントを大事そうに取り上げる。

 寝てるときに邪魔になるだろうし、問題ない。

 問題があるとすれば、

「見たことのない文字ね」

 そのペンダントがいったいなんなのか。そしてこの赤ん坊は誰なのかということだ。

「見て、ここ。数字のようなものがある。生まれた日なのかしら?」

 彼女がしめした部分には象形文字のようなもので、4つ連なってた。

「スマホでとってみよう」

 今のスマホは優秀で撮影したものをなんでも検索してくれる。

「1325年だって」

「嘘……。だって、今は2021年よ?」

 この文字が本当のことなら、この赤ん坊はかなりの過去に生まれたもの。もしくはペンダントがその年にできたものといえる。

「まぁいいわ。明日どうせ別れるんだもの。深入りはやめましょ」

「……そうだね」

 警察に連れて行ったとしても、保護の関係上僕らが結局のところは面倒を見そうな気がするが、何も言わないことにする。

 そうして、僕らは娘に出会った。

 数年後に行方不明になる娘に、今日出会ったのだった。

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未来 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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