第5話 鬼

 テトリスブームだ。

 4つの正方形を組み合わせて作られた、片面型テトロミノ状のブロックピース(以下の7種、本作ではこれらを「テトリミノ」(Tetrimino)と呼ぶ)がフィールド上方からランダムに1種類ずつ落下してくる。プレイヤーはテトリミノが落下している間、次に落ちてくるテトリミノの形状を知ることができる。

 個々のテトリミノの名称は特に厳密に定められているわけではないようだ。

 一馬は買ったばかりのゲームボーイで遊んでいた。

「そういや、今日は俺の誕生日だ」

 一馬は39歳になった。🎂

 数日前、民宿で一杯やってると女将が『新垣光代って人から電話だよ』と部屋にやって来た。

『母さんが?』 

 ロビーの電話の受話器を取ると、『新津虹子という女詐欺師を殺してほしい』とピエロが言った。🤡

 どうやらピエロは様々な声を操れるらしい。

 花巻市で手の目を仕留めたのはよかったが、安河内は逃してしまった。彼はかなりの猛者だ。


 8月30日夕方、一式村内の一軒家が燃えているという通報が岩手県警に入った。翌朝に実況見分を行い、完全に白骨化した焼死体を発見した。当初は失火による事故死と思われたが、頭蓋骨が陥没しているのを発見したことで、一転して放火殺人事件となり捜査を開始した。


 周辺の聞き込み捜査を開始したところ、一式村長が「一昨日、被害者宅に梨を買いに行った者がいる」との情報を得て、警察はその人物を聴取した。その人物によると「被害者宅に梨を買いに行った時、被害者から「お宅の集落の新垣って婆さんも梨を買いに来たが、金が無いからと腕時計を置いていった」と言われた」と証言した。そこで、その婆さんの家に行くと作業服が干してあり、それには血痕らしきものが付着していた。

「殺されたのは土方博之ひじかたひろゆきって使用人だ」

 言ったのは安河内警部だ。

「土方歳三の末裔ですかね?」と、中鉢巡査部長。

 言わずと知れた新選組の鬼の副長。

「さぁな?」

 詳しく調べたところ、屋敷の電話線引っこ抜かれ、土方は足が悪かったようだ。


 土方を殺したのは母を助ける為だった。奴は保険金を掛けヒ素で殺そうとしていた。

 🌀タイムスリップまで2人。

 母は姉の逸子が服毒自殺を遂げたことを嘆いていた。全て俺のせいだ。


 9月1日 

 銀角潤ぎんかくじゅんは自分の計算高さに武者震いした。土方は中学時代に銀角をこてんぱんにイジメ、残間はそれを黙認していた。潤の父親は新津虹子に騙されて首吊り自殺を図った。

 ピエロの仮面はあの民宿の地下にある武器庫で買った。女将はいろいろ後ろ暗いことをやっているようだ。武器庫には弓矢なんかもあった。

 新垣邸に忍び込んだが、住人が次々に殺された。

 潤は何でも開けることのできる不思議な鍵を持っていた。潤は戸袋に隠れて難を逃れた。

 次の標的は一式村の村長一式恭平か、久慈二中の教頭馬場にしようと思ってる。

 一式は昔は弁護士だった。新津から慰謝料を請求したかったが、彼は罪を帳消しにした。

 イジメのことを馬場にも相談したが鼻であしらわれた。

『忙しいんだからさ』  

 虫を払うみたいな仕草で潤を追い出した。

 

 土方を殺したスキルでどんな妖怪と戦おう?

 一馬はワクワクしていた。

 一馬は花巻温泉にやって来た。

 花巻の市街から北西約8キロ、堂ケ沢山・万寿山・台川の山麓の高燥な段丘地に開けている。西南を台川の清流が貫流し、東南には眼下に北上川中部流域の田園風景をへだてて東遥かに北上山系を望む風光雄大な景観の地にある。桜並木や赤松林の落ち着いた雰囲気の中に格調高い機能的な大規模ホテル等が配され、温和で明るい自然景観に恵まれた北東北の代表的な温泉リゾートとして全国にその名を博し今日に至る。

 敷地内には宮沢賢治が設計した南斜花壇跡に立地する「花巻温泉バラ園」がある。毎年、花巻市で開催するイーハトーブレディース駅伝のゴール地点となっている。

 1923年(大正12年)、盛岡の実業家金田一国士によって台温泉からの引湯で開湯。昭和初期には「東北の宝塚」を目指し、 旅館、貸別荘、動物園、テニスコート、日本初となるナイタースキー場、プール、公会堂、といった施設が建設され、一大行楽地として栄えた。1931年には「花巻温泉小唄」(渡邊波光作詞 中山晋平作曲 唄藤本二三吉(もう一方は羽衣歌子)ビクター、1931年6月発売)も作られた。 戦後になって、台からの引湯管が傷んできたことから、ボーリングを実施して独自源泉を確保した。 1925年から1972年には、国鉄花巻駅に隣接した電鉄花巻駅から花巻温泉の花巻温泉駅まで、花巻電鉄という鉄道路線が存在した。

 

 露天風呂から夜の灯を眺めていた。🌉

 妻や子供の亡霊が手招きをしている。

 一馬は地獄の住人に呪文をかけられ、凄惨な事件を起こした。

 世の中には俺みたいな悪魔がたくさんいるんだろうな?輝く星を見つめ、そう思った。

 一馬は女将の話を思い出した。

『奥州南部岩手郡切山ヶ嶽乃由来』では、奥州達谷窟の岩屋に住む悪郎と高丸兄弟が苅田丸と田村丸親子を討って帝位に就き、先祖である藤原千方の無念を晴らそうと風鬼・水鬼・火鬼・隠形鬼も加えて謀議を企てていた。都に上った水鬼と隠形鬼は官女に化けて花見の宴に紛れて帝に近付いたが、田村丸に見破られて水鬼は討たれ、隠形鬼は逃げ帰った。勅命を蒙った田村丸は5万8千余騎を率いて奥州へと攻める。田村丸の弟・千歳君は城中深く攻め込み隠形鬼に囚われたが、山伏姿であらわれた秋葉山大権現が千歳君を救いだし、虚空より大磐石をふらせ、大地より火焔を湧き出させて殲滅させた。


 ♨湯から上がり温泉街を歩いていると鬼が現れた。観光客は四方八方に逃げていく。

 鬼には苦手なものがあると言われている。臭いのきついもの、尖ったもの、イワシを焼くときに発生する大量の煙と臭気などを、鬼は嫌うとされている。鬼はまた、ヒイラギの葉のトゲによって目を刺されることを恐れる。そこで節分には、季節の境目から入り込んでこようとする鬼を、玄関先に飾ったヒイラギとイワシで撃退する風習があり、この魔除けの風習を、柊鰯ひいらぎいわしという。

 けど、そんなこと知っている人などそうはいないのか、臭い匂いはどこからもしなかった。

 警官がやって来てバンバンバンと鬼を撃ったが、ビクトもしなかった。

 一馬は初老の警官に「僕は魔法を使えます」と言った。異常者だと思われないか心配だったが、「そりゃあ心強い」とホッとしていた。きっと、サンタクロースとか未だに信じてるんだろうな?

「銃を貸してもらえますか?」

「魔法使えるんでしょう?」

「メラみたいのは使えないんです」

「ゾーマを倒すのは大変だった」

『ドラクエ3』はバカ売れして、一馬も熱中した。

 一馬は初老から借りたニューナンブM60を構えた。20代の頃流行った『太陽にほえろ!』のジーパン刑事になった気分だ。

 ニューナンブM60は、新中央工業(後にミネベア(現・ミネベアミツミ)に吸収合併)社製の回転式拳銃。1960年より日本の警察官用拳銃として調達が開始され、その主力拳銃として大量に配備されたほか、麻薬取締官や海上保安官にも配備された。

 装弾数は5発、警官が2発撃ってるから残り3発だ。

 鬼はおそらく水鬼だ。氷の光線を口から吐き出している。警官たちは氷結した。

 一馬はニューナンブのトリガーを絞った。

 水鬼の胸に風穴が開いた。

 水鬼は断末魔を挙げた。

「やった!」

 一馬はガッツポーズを決めた。

 一馬は屍と化した警官のホルスターから弾丸を奪い、弾倉に込めた。

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