第4話 手の目
8月30日
岩手県警の安河内雷也は花巻市にやって来た。
花巻城は、岩手県花巻市花城町に所在した日本の城。古くは
花巻城の地は、「内史略」や「奥羽永慶軍記」等には、前九年の役の安倍頼時の城柵と伝えられている。稗貫氏は室町時代には十八ヶ城(稗貫郡宮野目村)を本城としていたが、戦国期の享禄年間に本城を鳥谷ヶ崎(稗貫郡花巻村)に移した。周辺には八重畑館や大瀬川館など同じ稗貫一族の城郭が複数あった。
天正18年(1590年)、豊臣秀吉の奥州仕置によって稗貫氏は没落し、鳥谷ヶ崎城には秀吉の代官浅野長政が入部、長政帰洛ののちは同族浅野重吉が目代として駐留した。しかし同年の冬、旧領を奪還しようとする和賀氏と稗貫氏が一揆を起こした(和賀・稗貫一揆)。これによって、鳥谷ヶ崎城を含め稗貫氏の旧領も和賀・稗貫勢の手に渡ったが、翌天正19年、再仕置軍の侵攻により一揆は鎮圧された。同年中に稗貫郡は南部領と決められ、南部信直の代官北秀愛が城代として入り、城の改修が行われ、名称も花巻城と改められた。
慶長3年(1598年)に北秀愛が死去し、かわって父の北信愛が城代となる。同5年(1600年)に南部氏が慶長出羽合戦へ出陣している隙を狙い、和賀忠親が旧領・和賀郡の奪還を目指して一揆を起こした(岩崎一揆)。和賀勢は花巻城や、大瀬川館など周辺諸城を攻め、花巻城の三の丸、二ノ丸を攻略して本丸に迫ったが、援軍を得た北信愛はそれを撃退した。
北松斎は慶長18年(1613年)に死去するまで花巻城および城下町の整備に努めた。その後、南部利直は次男政直に2万石を与え花巻城主とし、政直は花巻城を近世城郭として完成させた。その際に本丸に二層二階の櫓や多くの重層の城門が建てられた。一国一城令ののちも南部の抱え城として認められた。政直急死以後は城代が置かれ、花巻城は和賀・稗貫二郡を統括する政治の中心地となったが、明治2年(1869年)に廃城となって取り壊された。
現在、建造物の遺構として残るのは円城寺門と時鐘堂(どちらとも花巻市有形文化財)だけであるが、城跡では本丸跡が1988年(昭和63年)9月1日に市指定史跡に指定されている。近年西御門が復元され、その周辺は歴史公園として整備されている。
円城寺門は、慶長19年(1614年)藩主南部利直の命により花巻城主となった南部政直が、和賀氏の居城であった飛勢城の追手門を移築し、花巻城三の丸搦手の円城寺坂に建てたので、円城寺門と命名された。江戸時代に4回ほど修築が行われ、その後も2回屋根の葺き替えが行われた。廃藩後の明治4年(新暦1871年/1872年)の花巻城取り壊しの時に北上市更木の福盛田氏に払い下げられ、解体して北上川を船で下り、自邸の門とした。昭和7年(1932年)に福盛田氏より花巻市の平野立乾(軍医)がこの門を買い、鳥谷ヶ崎神社境内東南隅に移設した。その後、老朽化の為大きく壊れていったが、昭和36年(1961年)に花巻市の助成金を受け、神社の東南口の現在地に復元移設された。
雷也は鐘楼を眺めた。
1646年(正保3年)、盛岡城の時鐘として鋳造されたが、1648年(慶安元年)に破鐘したことから鋳直された。盛岡藩が召し抱えていた鋳物師の鈴木忠兵衛と鈴木忠左衛門の作とされる。その後、3代藩主の南部重信により花巻城での再利用が命じられ、同城の時鐘として使用された。現在でも市庁舎の警備員が毎夕方6時に撞いている。
鐘楼の下に老婆の死体が転がっていた。
背中に弓矢が突き刺さっている。
「即死だろうな?」
花巻警察署刑事課の
雷也は一式村で起きた殺人事件を思い出していた。殺されたのは残間大輔って教師で、弓道部の顧問だった。
遺体は
「小切手詐欺」
雷也の部下の
もっとも典型的な手口は第三者をだまして偽造小切手あるいは盗難小切手を換金させる手口。また、たとえ自己の小切手であっても、クレジットカード詐欺事犯と同じく、当該代金を支払える預金残高が口座にないことを知りながら小切手を切ることも該当するため、小切手を使う口座(日本でいうところの当座預金等)の残高は常に把握するよう注意を要する。
「彼女のせいで自ら死んだ者もいたよな?」と、雷也。
「ええ、クックックッ」
中鉢は小馬鹿したように笑った。雷也は豚みたいに太っていた。
「今、俺がデブだと思って笑ったろ?」
雷也に言われて中鉢は血の気が引くのを感じた。
雷也はまるで糸に引かれるかのように、同市内にある同心家屋旧平野家住宅・旧今川家住宅という歴史的建造物にやって来た。
🔥
炎とともに妖怪、手の目が現れた。
座頭姿で両目が顔ではなく両手の平に一つずつついている。
雷也はある女の話を思い出した。
『ある男が京都の七条河原の墓場に肝試しに行ったところ、80歳くらいの老人の化け物に襲われ、その化け物には手の平に目玉があった。男は近くの寺に逃げ込み、その寺の僧に頼んで長持ちの中にかくまってもらったところ、化け物は追いかけてきて、長持ちのそばで犬が骨をしゃぶるような音を立て、やがて消え去った。僧が長持ちを開けると、男は体から骨を抜き取られて皮ばかりになっていた』
岩手県に伝わる民話には、以下のような「手の目」の話もあるという。ある旅人が夜に野原を歩いていたところ、盲人が近づいて来た。その盲人の両手の平に目玉があり、その目で何かを捜している様子だった。旅人は驚いて逃げ出し、宿へ駆け込んだ。宿の主人に事情を話したところ、主人が答えるには、あの場所では数日前に盲人が悪党に殺されて金を奪われ、その盲人が悪党たちの顔を一目見たい、目が見えないのならせめて手に目があれば、という強い怨みが手の目という妖怪になったのであり、越後(新潟県)でも同様に盲人が殺された際に手の目が現れたという。
雷也は汗をダラダラ垂らしながら走った。
🏹ヒューッ!グサッ!
矢がどこからともなく飛んできて、手の目の体や頭に次々に刺さった。まるで死に際の武蔵坊弁慶だ。
最後の一本目が心臓に突き刺さり、手の目は死んだ。
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