第2話 座敷童子

 8月17日 - この日の『読売新聞』夕刊一面で宮崎勤(東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の被疑者)のアジトを発見したと報道したが、同事件の捜査関係者は、この記事が事実に反するとの見解を表明。10月15日付朝刊で調査報告を掲載、アジトの確認をしていなかったことを認めた。

 

 一馬は整形クリニックで顔を変えた。面食いになった。

 それから、民宿にやって来て若狭岩太郎わかさがんたろうって偽名で宿泊、白髪頭の女将から座敷童子の話を聞いた。

 東北地方では間引きを「臼殺うすごろ」といって、口減らしのために間引く子を石臼の下敷きにして殺し、墓ではなく土間や台所などに埋める風習があったといい、こうした子供の霊が雨の日に縁側を震えながら歩いていたり、家を訪れた客を脅かしたりといった、座敷童子に似た行為が見られたともいう。内土間から這い出て座敷を這い回り、後者は臼を搗くような音をたてたりと、気味の悪い振る舞いをするといわれていることから、これらの座敷童子に、間引かれた子供の埋められた場所が土間や臼の下などであることが関連しているとの指摘もある。


 このような間引きとの関連に加え、座敷童子のいる家が旧家であることや、村の外から訪れた六部(巡礼僧)を殺害した家が後に没落するという伝承と結び付けられて語られていることがあることから、座敷童子は村落共同体の暗部の象徴との指摘もある。


 高橋貞子著『座敷わらしを見た人びと』によれば、座敷童子は大工や畳職人が、家の工事の際に気持ちよく仕事できなかったことに対する呪いから生じたとする話も残っており、木片を薄く剥いだ人形を柱と梁の間に挟みこむなどの呪法があったという。


 河童を正体とする説も多く、淵に住む河童が近くの家に上がりこんで悪戯をするものが座敷童子だとする話や、河童が家に住み着いて座敷童子となった話などもある。


 8月22日 - 第71回全国高等学校野球選手権大会の決勝戦で帝京高校が仙台育英高校を下して初優勝。


 喫茶店でアイスコーヒーを飲んでると電話がジリリリと鳴った。マスターが受話器を取ってしばらくすると「お客様の中に若狭って方はおられますか?」と言った。

 一馬は手を挙げた。

 受話器を受け取り、耳に当てる。 

「やぁ、あんた人を殺してるよな?」

 身の毛がよだった。

「なっ、何のことだ?」

 電話の主は一馬を尾行していたことになる。

「しらばっくれるなよ、殺人鬼」

 窓の外を見るとピエロの格好をした奴が手を振っている。

「警察に言われたくなかったら、久慈二中の残間大輔ざんまだいすけって教師を殺せ」🤡

 ピエロは素早く電話ボックスから出て、走り去った。

 一馬は受話器をマスターに渡した。  

 あのピエロ、何者だ?俺の家族はみんな死んだ。

 まさか、家族のうちの誰かが生き延びたのか?

 幽霊!?あの素早い動きは人間のものじゃない。

 

 8月24日 - 超高層マンション・スカイシティ南砂の24階(地上63m)で火災が発生(日本における有数の超高層火災)。

 一馬は久慈二中に赴いた。

 教頭の馬場ばばって禿頭のじーさんに面会した。

「昔、ここの学校で育ったんです。残間先生はお元気ですか?」

「道場の掃除をしている。会ってやったらどうだ?」

 馬場によれば残間は弓道部の顧問らしい。

 道場に向かった。残間は屈強な体躯をしていた。

「あの、あなたは?」

「ここの卒業生です」

「そう」

「先生はどこに住んでるんですか?」

一式いっしき村の残間商店ってとこだ。よかったら買いに来てくれ」

 

 8月26日

 山下徳夫内閣官房長官が女性問題で辞任、後任の官房長官に森山真弓(当時環境庁長官)が就任、女性初の官房長官。


 明仁天皇の次男・礼宮(現:秋篠宮)文仁が川嶋紀子との婚約を発表。


 一式村は緑豊かのところだった。

 小川の近くに残間商店はあった。

 埃っぽいところで大輔は漫画を読んでいたが、一馬に気付く気配はなかった。

 店内ではラジカセから工藤静香の『恋一夜』が流れている。

 一馬は気配を消す特技を持っていた。

 マキリで大輔の首を掻き切った。  

 血を噴き出し残間大輔は死んだ。

 店から出て川の畔を歩いてると、座敷童子が近づいてきて細い手を伸ばしながら、「コウズイガクル」と教えてくれた。

 コイツは良い妖怪のようだ。殺すのはやめにしよう。一馬は原チャリを奪って逃げた。

 逃げ込んだ先は民宿だった。

 女将が一式村で洪水が起きて死者がたくさん出たと教えてくれた。

 

 女将は座敷童子について教えてくれた。

 座敷童子にも位があるとする地域や伝承も存在し、『十方庵遊歴雑記』には、岩手県江刺市(現・奥州市江刺区)稲瀬の座敷童子についての記述が見られ、家の土間にいる座敷童子を、「コメツキワラシ」、「ノタバリコ」、「ウスツキコ」などと言い、 奥座敷にいる色の白い最も綺麗な座敷童子を「チョウピラコ」と呼んでいる。これらの中には家の盛衰とは関係なく、家の中を動き回ったり物音を立てたりするだけの者もおり、単に気味の悪い存在とされることも少なくない。


 蔓のように細長い手を出して人を招き、洪水、津波などの災禍を知らせるため、「細手ほそで」または「細手長手ほそでながて」と呼んでいる例もある。似た話に『貧しい男が薪を水中に投じると、龍宮に招かれ土産に醜いが福を招く童子「龍宮童子」を貰った』という話がある。 「クラワラシ」「クラボッコ」と呼ばれる、土蔵の中にいる座敷童子も存在する。

 

 

 

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