第47話パフパフ♥





今日は、2人の様子がおかしい。









私は今、フィスばぁの用意してくれた朝食を食べるため、昨日夜ご飯を食べた場所に来ていた。

そこにはまだネルとタクヤの姿はなく、ホカホカと湯気が出ている、美味しそうなスープがテーブルの上にあるだけだった。


「お〜美味そうじゃのぅ」


「ワハハ!私が作ったんだから美味しいに決まってるだろ!ワハハ!」


私が言うと、胸にバン!と、手を当てながら自慢げに言うフィスばぁ。


「ネルとタクヤは遅いのぅ…先に食べてしまうぞい」


「呼んできてやろうか?」

フィスばぁが気を利かせてタクヤ達を呼びに行こうとした時、部屋の扉が空いた。

ガチャ


「お〜遅かったの、もう少し遅ければ料理が無くなっとるとこじゃったぞ?」


「ワハハ!1番年下のミトがこのパーティーで一番しっかりしとな!ワハハ!」


そう言ってフィスばぁは、料理を運んできたお盆を持って部屋を後にした。


む?

なんじゃ?


「…なんか2人とも顔が赤くないか?」


私が聞くと。


『へ?!』


ネルとタクヤが同時に、挙動をおかしくして答える。


「な、なんでも無いし?!べべ別に赤くも無いし何もしてないし?!ーーな!ネル!」


タクヤが聞くと。


「……そう…かな…♥」


ネルが顔を赤くして答える。


「?!えっ…ちょ…ネルさん?!?!」


ネルの発言に、タクヤがキョドったように気持ち悪く答える。


「…なんなんじゃ2人とも?もしかしてやったのか?」


私が冗談半分に言うと。

「え?」

「…え?」



ーーパクッ アムアム ゴクリ

…………………………………………………………………………………………気まず!!!

俺は今、3人で丸いテーブルを囲み、朝食を食べていた。

ネルは顔を赤くしたまま、鯉に餌でもやっているのかと思うぐらいに細かくパンをちぎり、たまに「ふふっ」と笑いながら、ゆっくりとちっこいパンを食べている。


ミトは……なぜか俺を睨んでいた。


痛い。

ミトの視線が痛い。

やめてくださいミトさん。相互同意の上ですよ?決して俺は、野獣ではありませんよ?

俺は頭の中で自分を弁護しながら、目の前にあるスープを、ゆ〜〜〜くりとすする。

ミトはその間も、俺に鮮烈な視線を向けてくる。

気まずい。

本当に気まずい。

どうしたものかこの状況。

俺は戸惑いながらも、目の前のスープをすする。

すると。



「……ネル、お主…やったのか?」




「ブシュュュュュュュュュュュュュ」

ミトの言葉を聞いた途端、俺の口から液体が吹き出る。


「な、何を……!」


俺が、ミトの質問に驚いていると、


「? 何を?」


と、ネルがミトに聞き直す。

おーまずい!

これは何としても止めなければ!

もしミトが、「プーーをじゃ」とか遠慮なくネルに言ったら、「うん!」とか言ってすんごい爽やかにに答えるに決まってる!!

それよかネルが【その内容】も喋り出したりするかもしれん!

それだけはダメだ!

絶対にダメだ!!

男としての威厳が!

元童貞としての威厳がッッッ!!

「セッーー」

バンッ!!


「今日は!!!」


ビクッ

ミトが言いかけた時、俺はテーブルをバンッと叩き、ミトの言葉を遮る。


「クエストの依頼を受けに行こう!!」


「え、ちょーー」


「ね!!!!」

ミトが何か言いかけるが、俺は大声で押し切る。

「あ、あぁ」

それ以降ミトは、昨夜のことを何も言わなくなった。



ーー俺は今、昨日ギルドに行った時に忘れていた、クエストを受中するため、ギルドに来ていた。

ちなみに今3人の服は、昨日フィスばぁから貰った、戦闘用の服である。

掲示板に貼ってある依頼は、

因縁の【キメラの討伐B】

や、

お馴染みの【ゴブリン20匹の討伐C】

などに加えて、

【自分の母に取り付いている魔獣を駆除して欲しいD】

などなど、私利(しり)的な物まで様々だった。

ミトにはギルドの事を【何でも屋】って説明したけど、本当にそうだな。

俺はそう思いながら、俺らが受けられそうなクエストを探す。

俺はランクがひとつ上がってD、ネルとミトはどっちもBだから、全A(1)B(2)C(3)D(4)E(5)F(6)ランクにそれぞれ数字をつけ、その平均を出せば、俺達が受けれるクエストの困難度(ランク数)が分かる。

B(2)が2つでD(1)が1つ。

2+2+1÷3=1.6だから、四捨五入して2。

つまりランクB以下までの依頼を受けられるって訳だ。

なんだか数学者になった気分🎶

(↑ただの足し算と割り算です。)

そんな事を思いながら、俺達が受けられそうなクエストを探す。


「ん〜どれもぱっとしねぇな」


「パットする物があるのか?」


「いや、分かんないけど」

ミトの問いに答えていると、ネルが何処からか1枚の依頼書を持ってきた。


「タクヤこれは?」


そう言って1枚の依頼書を、俺の前に指し出す。

その依頼書には、

【自分の母に取り付いている魔獣を駆除して欲しいD】と書かれていた。

さっき見た奴だな。

困難度がDって事は取り付いている魔獣はそんなに強くは無いのだろう、つーかそんな事より、人間に取り付く魔獣がいることのほうが驚きだ。

俺はそう思い、ネルに聞く。


「人間に取り付く魔獣なんて居るのか?」


「みたいだね。ランクDだし、私達なら楽勝だよ!」


「ははっ、そうだな」

俺は笑いながらネルに言った。

どうやらネルもその取り付いている魔獣の事は知らないらしい。


「ミトもこれでいいか?」


「うむ」

俺がミトに聞くと、コクッと小さく頷いて了承した。

んー。

なんか違和感あるけどまぁいっか。

俺達はこの依頼を受けることにした。



ーー俺達は今、例のクエストを達成するために、依頼者の家に向かっていた。


「なぁタクヤ、本当にこの道で合っておるのか?」


「なんか暗いね」

ミトが前を向いたまま、俺に聞いてくる。


「言うなよ…俺も不安になってきた所だったんだから…」


「な…っ?!お主は地図を見ておるのではなかったのか?!」


「ふっ…男に地図なんて要らねぇよ…☆」


バシッ


「痛い!」

地図を無くした事をカッコよく茶化すと、ミトに肘で脇腹を突かれる。


「どうせ無くしたんじゃろ。全く…」


「しょ、しょうがないだろ!それに男には地図なんて持たないんだよ!真の男なら勘と運で動くんだよ!」


男熟っていう漫画を知らないのか?

俺が得意げに鼻を鳴らしながら言うと、ミトはため息をついてから。


「はぁ〜」


チラッと俺を見て、もう一度ため息を着いた。

えっ、何?

俺そんなに重症?!

そんな事を俺が思っていると、ネルが、ツンツンと服を引っ張って来る。


「タクヤタクヤ地図なら私が持ってるよ?タクヤが、「俺は物を無くす達人だからネル持ってて」って言って私に渡してきたから」


その言葉を聞いたミトは、無言で固まる俺の横顔を睨む。


「…」


「…」


「だって本当に無くすもん!俺悪くないもん!」


「…」

俺の言い訳を聞いているのか聞いていないのか知らないが、依然冷たい目で俺を見てくるミト。

ネルは、「あはは」と笑いながら、俺とミトの様子を見ている。


「…」


耐えきれなくなり俺が、ネルに視線で助けを求めると。


「ご、ごめんね…」

ん?


「あ、いやいやネルは悪くないよ!!」


「でも…私が地図を任されてたし…」

そう言ってネルは、落ち込んだように下を向く。

…。


なんて可愛いんだッッッ!!


俺はそんなネルの頭を撫でようと、手を伸した瞬

間…!

グイッ


「おい、何を逃げようとしておるのだ?」


服をミトに引っ張られ、ネルの頭から手が離れる。


「うっ」


バレたか。

ネルとのイチャつきで誤魔化そうとしていたことがバレ、逆ギレ気味に、


「だってだって!」


「だって…なんじゃ?」


「うっ…」

言おうとしたが、ミトの睨みで勢いを潰される。


おっと。

どうやらミトはガチギレ気味らしい。


こういう時は…これしかない…!


そう思った俺は、ミトの頭に手を伸ばす。

するとミトは…!


「初めからそうしておけば良かったのじゃ」


と言って、むず痒そうに笑った。

えっ?

あっ、マジ?ヤッター。

俺は正直、頭を撫でるだけでミトの機嫌が直るとは思っていなかったため、内心少し驚く。

俺はミトの頭を撫で続けていると、ネルが。


「私より…ミトの方がいいんだ…」


そう言って、より一層落ち込んだ様に顔を俯く。

えっ?!


「あっ、いや、その…」


俺がうろたえていると。


「ふふっ」


と、俺をイタズラっぽく見て、笑っているミトがいた。

こいつ…!!

俺はその時、初めてミトにしてやられたと思った。



ーーその後俺は2人の頭を撫で、結局合っていた道を進み、大きな岩で突っかかっていた。


「さて、どうするか」


「どうしようか」


「どうするかのぅ」

俺達3人で、同じような事を呟く。

俺達の前には今、行く手を塞ぐ、バカでかい岩があった。

これはちょっと違和感ありすぎでは無いだろうか。

どう見ても不自然過ぎる岩を、俺達が顔をしかめながら見ていると。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

えっ?

俺達の後方の道にも、今ある岩と瓜二つの岩が現れ、そして道を塞いだ。


「えっ」


俺が後ろを見ながら、うろたえていると。


「何か来るよ!」


そう言って、ネルが手を前に構える。

その言葉を聞いたミトと俺は前に振り向き、ミトは宝玉を腰の周りに出現させ、俺は右手に魔剣を出現(作る)させる。

すると目の前の土の中から、怪しい声が聞こえてきた。


「ほぅ。それが4人目のレアプロフェッションクリエイターの力ですか。」

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