第45話かわいいネルと愛くるしいミト A

俺は今、ギルドでのあれこれを終えて、ネルとミトと一緒に、ボーンの屋敷に向けて来た道を戻っている途中だった。

俺は行きの時とは違い、自分の足で屋敷に向かう。

が、やはりまだ少し痛い。

でもそれを言うとネルがまた、

【エッチな事してあげようか?】的なことを言ってきそうなので、(↑流石にそこまでは言わない)

俺は痛みを我慢しながら、自分の足で歩く。


「なんじゃ、自分で歩けるでは無いか。やはり美少女に触れたいだけだったのかの?全く…コレだから男は…」


ミトが鋭い目つきで俺を見ながら、冤罪を掛けてくる。

本当にこいつは男になんの恨みがあるんだ。

俺はつくづくそう思いながら、

「ギルドの椅子に座ってたら少し楽になったんだよ!」と語尾を強め、ミトの言葉を否定するように言う。

するとネルが。


「そうだよ!タクヤはそんな人じゃないもん!」

頬を可愛く膨らませながら言った。


「おぉネルよ…抱きしめていいか☆」


俺がイケボで言うと、


「うん!」


と言いながら両手を開き、最大限俺に体を密着させてくるネル。


ギュ


普通は、「あっ、ちょっとすいません…キモいんで触らないで下さい」とか言って断られる所だが、ネルは幸せそうな顔をしながら俺に抱きつく。

そしてネルのいい匂いと共に、柔らかくサラサラな肌が俺に触れる。

ネルの可愛い吐息を耳元で聞くと、今度は自分でも分かるくらいにニヤついてしまう。


あっやべっ、ミトがまた変な誤解を…!


そう思い、俺が不安を覚えミトを見ると…。

ミトは抱き合っている俺達から目を離す様にそっぱを向き、むくれたような顔をしていた。


「…?」


なんだ?

なんだか今日はミトの様子がおかしい。

受付の人の時も、今も、俺が美人にドキドキしているといつもミトは機嫌が悪くなる。

美人が嫌いなのだろうか。

ミトも中々の美少女だと思うが…。

俺はそんな事を思いながらも、体を横にずらし、顔を俺の胸に埋めてくるネルの、絶対に逃がさないぞアピールを恋人繋ぎで代用して、俺は右手を開ける。

そして。


「ミト」


そう言って俺は、右手をミトの目の前に差し出す。

ミトは「え?」と言いながら、嬉しい様な、自分の意図を読まれて恥づかしい様な、そんな顔をしながらも、手を伸ばす。

どれだけ強力な宝玉を持とうと、どれだけ口調が大人だろうと、まだミトは子供なのだ。

甘えたいだけだったのだろう。

そう思っていると、

ふと。


ピタッ


俺の手まで後数センチという所まで伸ばした手を、いきなり止めるミト。

そして、


「私は手を繋がなくても自分で歩ける…!」


意地を張ったように強気で言ってくる。

全く…可愛くヤツめ。

俺はそう思うと、バッと勢いよくミトの手を取り、無言で前を向いて歩き出す。

ネルはその様子を見て、ニコニコしながら。


「ふふ」


と笑っていた。

ミトはそれからしばらくの間無言で顔を赤らめていたが、少し経つと赤みも引き、普段通りに俺達3人で、手を繋ぎ楽しく談笑しながら屋敷まで帰った。



ーー「おいそれは私が最初に目を付けていた物じゃ。ネルは他を当たるんじゃな」


そう言って、ウインナーにはしを伸ばそうとするネルを止め、目標(ウインナー)を奪い、頬張るミト。


子供だ…。


俺はそう思いながらも、ミトに取られる前に、俺の好きなデミソースラムチョップをあらかた取る。


俺は今、屋敷の広間で、フィスばぁの作った料理を食べていた。

と言うのも、屋敷に着いた時にちょうどフィスばぁが料理をテーブルに並べていたので、帰った途端、料理に飛びついたのである。

恐らく修行を中断したのは、買い出しの為だったのだろう。

そういえば袋を持ってた気もするし。

俺はそう思い出しながら、地獄の修行に終止符を打ってくれた買い出しに感謝する。


というかフィスばぁはどうしたのだろうか。

俺達に、「弟子と飯を食うのはちょっとな!ワハハハ!」とか言って、謎のプライドを発揮し、やんわりと俺の誘いを断ったあと、自分の部屋にそそくさと戻ってしまった。

前の弟子と飯の時に何かあったのだろうか。

俺はそんな考えをめぐらせるが、ネルとミトの可愛いケンカを見ていると、そんな意味の無い考えは直ぐに忘れてしまう。


「あ!むーー」


と、ネルは最初こそむくれていたが、

「しょうがないなぁ」と言って、残りのウインナーもミトに譲る。

どうやらミトよりネルの方が大人のようだ。

俺はそう思いながら、ミトに質問する。


「なぁミト。スキルとかランクとかはどうだった?」


俺が油たっぷりのラムチョップを引きちぎりながら言うと。


「あの冒険者登録の時のやつか?」


「そっ」


「そうじゃのぅ。スキルは確か魔法融合とかじゃったかの、ランクはB、職業は魔道士じゃ。何故だか知らんが私の職業を聞いた受付の女子は驚いとったのぅ、「す、凄い!」とか何とか言って…」


そう言いながら、目の前にあるスープをすするミト。

赤い色味をしているので、恐らくトマトのスープだろう。

まぁ一瞬でゴブリンを粉にしちまう魔法が使えるのだから、凄い職業なのも当たり前なのだろうか。

そんな事を考えているとネルが。


「あ、2人とも!フィスばぁから服を預かってるよ?何か(今後のクエストに役に立つだろう)って言ってくれたんだー」


思い出した様にそう言って、足元にある袋から服を取り出すネル。

俺は「服?」と言いながら、橋をテーブルに置く。


「コレはタクヤの!」


そう言って、緑の線が入った黒い服を俺に渡す。

俺は両手でそれを受け取る。


「コッチはミトで…コレが私!」


続いてミトに、紫に近い濃いピンクの生地で出来たワンピースの様な服を渡す。


「うむ。ヒラヒラしとるの」


そう当たり前の事言って服を受け取った後、「ちょっと着てくる」と言って、嬉しそうに自分の部屋に駆けて行くミト。

本当に子供だ。

こっちはこっちである意味可愛い。

俺がミトの駆けていく背中を見送り、テーブルの方に振り向くと。


「……っっ!!」


そこには、ただの鼠色のフードパーカーのはずなのに煌びやかで、愛くるしい顔からはただ可愛いという物しかなく。

そして少しサイズが大きいのか、綺麗な小さい手を袖に入れている。

そして胸元には、触ったらふわふわしてそうな膨らみがあった。

そう、フィスばぁから貰った服を着ているネルが居た。


「どうかな…?」


ネルは自分の肩に両手を軽く乗せ、上目遣い気味に聞いてくる。

俺は口を半開きにして、ネルの美しい姿に見とれている。

そしてようやく開いた口で、思っている事を素直に言った。


「どうって…」


俺が言うとネルは肩を落とし、不安そうにして…。


「可愛すぎるよ!!!!」


「…え」


「もうめちゃくちゃ可愛い!!今までのパーカーも可愛かったけど今度のは格が違うよ!」


俺のその言葉を聞いた瞬間、ネルの顔から不安の色が一気に消え、再び可愛らしい笑顔がパァァァッ!と戻る。


「そ、そうかな…」


ネルは顔をこれまでに見た事ないくらいに顔を赤らめ、もじもじしながら言う。

そんな感じで俺が騒いでいると、ガチャッと部屋の扉が開けられた。

そしてゆっくりと、扉が開く。

するとそこには、シンプルながらも本人の本質を生かしたような、子供っぽくもあり大人びている雰囲気もある。

そんな、紫に近い、濃いピンク色の服を着たミトが居た。


な、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


なんだ!なんなんだ今日は!こうも感動したのは初めてだ!俺は夢でも見ているのか?!

俺は頭の中で絶叫する。(←歓喜の叫び)


「ど、どうかの……?」


ミトは珍しく小声で、照れたように言う。


「ミトかわいい!!」


ネルはそんなミトを見て言う。


「そ、そうかの…」


「うん!すっごく似合ってるよ!!」


あぁ、お父さんお母さん、俺は今歓喜しております!!


こんな事があろうとは!

この2人の前には、たとえ100カラットのダイヤモンドであっても、比べたら石ころ同様!それは正しく一目瞭然!至極同然!!2人に可愛さで勝つものなんてこの世には無い!!!!


俺が天井に向かって荒く息を吐きながらそう頭の中で叫んでいると。

ミトがてくてくとネルに向かって歩いて行く。

そして。


『どっちの方が可愛い?』


と、あざとかわいい声と、上目遣いを使い、少しエロティックになった顔で言ってきた。

ブシュュュュュュュュュュュュュュュュュ!!


「ぐはっ」


その言葉を聞いた俺は、鼻から致死量ギリギリの量の鮮血を吹き出し、バタッと床に倒れた。

あぁ、【人間はどうしてこうも比べたがる】俺はこの日、あの国民的人気曲の歌詞が、初めて心に突き刺さった。




あとがき

はい。まぁという訳であとがきでござんす。

初めての近況ノートで知らせた通り、この話から5話ずつ、あとがきという物を書いてみたいと思います。

まぁ2、3回でネタは無くなると思いますが、どうか優しい心を持って読んでやって下さい。(そうじゃないと作者のハートが砕けます)

さて、最近は恋愛要素が強くなってきた

【寝て起きたらダンジョンだった件】

ですが、ご安心下さい。

もうちょい話が進めばタクヤ達をクエストに旅立たせるつもりです。

ですので恋愛が嫌いな人、逃げないで!!

とまぁ緩い感じで今後もやっていきたいと思います。

今後ともこの作品を読んでいただけると幸いです。

ありがとうございました。(←これ以上喋ると本当にネタが無くなる)

「出来たら応援メッセージなども送っていただけると作者が喜びます」


ひいらぎ

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