第34話最高の自己中
「タクヤはこの部屋に泊まりな。ミトとネルはこっちな。」
フィスばぁが男子と女子で部屋を分ける。
俺達は今、今日から住む部屋を案内されていた。
というのもボーンじぃが、「少女相手に酷いことをさせてしまった。申し訳ない…」と言って、俺達が住む部屋を貸してくれたのだ。
これでわざわざ金払って宿に泊まる必要は無くなった。
まぁ解毒剤もくれたし、ネルに直接何かした訳じゃないから、別に謝罪なんて良かったのだが、そこは領主としてのイメージを守る為なのだろう。
まぁ【こんなの】が領主だったって事がバレたら町がパニックになりそうだしね……。
俺はそんな事を思いながら、与えられた部屋の扉を開ける。
するとそこには、前世で1回行った事がある、沖縄の高級ホテル並にデカいキングサイズのベットと、外の綺麗な庭が見渡せる大きめの窓、そしてなんと言っても、トイレと風呂付きであった。
風呂があるのは超嬉しい。
あとで聞いたのだが、この世界の公衆浴場は基本混浴らしく、種族による差別を無くしているらしい。
だから部屋に自分専用の浴槽があるのは、すごく嬉しかった。
まぁネルの裸も悪くなかったが…。
いや、むしろネルの裸を見れるなら公衆浴場の方が良いか?
と、いつもの様に欲望丸出しの考えを巡らせながら、部屋のベットにうつ伏せに寝そべる。
宿屋の時もそうだが、俺は良さげなベットを見ると、直ぐに寝転びたくなる性質らしい。
(↑作者と一緒)
そして「はぁ〜」とため息を着く。
「なんか俺…何の役にも立ってないな…」
俺はボーンの町であった色々な事を思い出す。
フィスばぁの試練では自分の攻撃で死にそうになるし…、ネルを捕まえようとしたキメラ達は1匹も倒せなかったし…(ミトが全部倒した)、ゴブリンの討伐なんかは、俺がゴブリンの毒にやられたりなんかしたから、ネルが変態プレイをさせられるし…。
まぁそのお陰で住む家が手に入ったんだけど…。
俺は改めて、自分の無力さを実感する。
いくらクリエイター【希少職業】って言っても最強って訳じゃないし、武器が出せたってその武器を扱う技量が、今の俺には無い。
「宝の持ち腐れだな……」
俺は前世ではムードメーカーだと思っていたが、この世界では周りが凄すぎて、俺が2人に合わせなければならない。
俺が責任を持って、ネルの本当の名前を見つけ出すって誓ったじゃないか…。
言い出しっぺの俺が真っ先に挫けるなんて…。
「……ダサ」
俺は体をうつ伏せから仰向けにして言う。
仰向けになって見えた天井はまだ白く、窓からは清々しいほどに光が刺し込んで来ていた。
「…」
強くなる。
「なれるかな………ふっ、らしくねぇ。」
これまでもなんだかんだ言ってやってきたじゃないか。
まぁ9割方失敗してるけど…。
ふっ。
「1割あれば十分…!」
俺はそう言って、上半身を起こす。
後ろ向きな考えは似合わない。
例え名前が見つからなくても、俺はこれまで通り、仲間と楽しい日々を暮らせればそれでいい。
そのためなら、何でもする。
そう。
俺は最高の自己中だからな!!
そう決意した俺は、ガチャっと扉を開け、部屋から出た。
ーー「おお!今度はちゃんと人数分ベットがあるではないか!」
「ふふっ良かったね」
「あぁ!ちなみに私が窓側じゃでな。」
「えぇーずるいーー!」
「譲らんぞ!早い者勝ちじゃ!」
『む〜〜〜』
「ワハハハハ!」
私とミトが睨み合っているところを、笑いながら見ているフィスばぁ。
「それじゃあ何かあったら呼びな!直ぐに駆けつけてやるよ!ワハハハ!」
そう言い残して、フィスばぁはどこかへ去っていった。
ミトは窓側のベットが余程嬉しかったのか、にやけながら窓側のベットの上でゴロゴロしていた。
するとミトは私の視線に気が付いたらしく、ベットシーツをガッチリ抱きながら、グルルルとこちらを威嚇してくる。
「もうしょうがないなぁ〜。」
私はそう言いながら、窓側のベットにへばりついているミトを剥がすのは無理だと判断し、もう片方のベットに上向きに寝そべる。
「…」
はぁ。
タクヤに心配掛けてばっかだな……。
(ふふっ♥今度一緒に寝てあげよ!)
私はベットに寝そべり、にやけながらそう思った。
ーーこのベットは最高じゃのぅ…!
もう一生ここで良いぞ。
私はベットのシーツを顔につけ、清潔な匂いを満遍なく嗅ぐ。
こんなちゃんとしたベットは本当に久しぶりだった。
いや、これ程のは初めてかもしれない。
村から抜け出していた頃は草の上で寝ていたから、このベットはまるで別物だ。
私はベットの上でゴロゴロする。
私は今、幸せだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます