第33話ボーン
「何してたんだ?」
質問されたボーンは、死んだ様な目をしていた。
まぁ自分の変態っぷりを見られたら誰でもこう言う目になるだろう。
「…」
「何してたかって聞いてるんだい!!」
「ひぃぃ」
フィスばぁの剣幕に押されたのか、ボーンが後ずさりする。
というか何故フィスばぁがここに居るのだろう?
俺は疑問に思いながら、フィスばぁにSMプレイをしている、とてつもなく恥づかしい所を見られた、ボーンのうろたえっぷりを見ていた。
「いや、そのネルちゃんが報酬してくれるって言うから…その…やってもらってたんだよ…」
ボーンがフィスばぁの顔色を伺う様に、よそよそし
く言う。
「ネル…?そういえば何でお前達がここに居るんだい?」
そう言いながらフィスばぁが、ボーンからこちらへと視線を移す。
その隙を見てボーンは、縛られた手足を動かして芋虫の様にこっそりと逃げようとするが、ノールックでフィスばぁに首元を捕まえられる。
そして俺は、こちらを見ているフィスばぁにその人が、「ゴブリンの毒にやられたそいつ(俺)を助けて欲しければ俺と変態プレイをしろ!」とネルに言ったこと、ネルは嫌がりながらも強制させられたことなどを伝えた。
その俺の言葉を聞いて「噓を言うな!いや、だいたい合ってるけども!!強制はしていない!ほ、本当…本当だって!!いや、いやーーー!!」
と、必死に弁論しているボーンがやつだきにされた。
ーー10分後。
ボーンをあらかたお仕置したフィスばぁは、俺達に向き直り、俺達から詳しい話を聞いていた。
「ゴブリンが数百体ねぇ…………お前達!」
突然考え込み始めたと思ったら、急にデカい声を出すフィスばぁ。
そしてこんな事を言ってきた。
「ゴブリンごときで何てこずってるんだい!全く…お前達の師匠として恥ずかしいよ!」
えぇーーーーーーー。
何故かフィスばぁに正座させられ、説教をさせられる俺とネルとミト。
いや、俺達結構頑張りましたよ?
元々ゴブリン10匹のクエストだったのに50匹くらい倒しましたよ?
俺は心で弁論しながら、大人しくフィスばぁの説教を聞く。
ネルは正座をして足が痺れたのか、もじもじとしている。
ちなみにミトは魔法で一時的に耳を聞こえなくしてるらしく、さっきからぼーっとしていた。
クソっ!
何で俺らが怒られてんだ?!
俺は不思議に思いながらも、フィスばぁの説教を大人しく聞いた。
ーーさらに10分後。
ようやくフィスばぁの説教に一区切りがついた。
そしてずっと気になっていた、ボーンとフィスばぁの関係性を聞く。
ちなみにネルは、ずっと俺の右腕にしがみついて、ニコニコとしている。
余程寂しかったのだろう。
いつもより強く腕に抱きついてくる。
ミトはたまに送られてくる(助けて!)と言うボーンの視線を拒む様に、俺の左腕に抱きつきながら、顔を埋めていた。
「フィスばぁこの男の人とはどういう関係なの?」
俺が率直に聞くとフィスばぁは、「なんだい知らなかったのかい!ワハハハ!!」といつもの様に笑い、こう言った。
「夫婦だ!」
「えぇー?!」
まぁ薄々分かってはいたが、まさか本当にそうとはな……。
俺は一瞬、ボコボコにされているボーンをチラッと見て、(可哀想に…)と心で思った。
すると突然、フィスばぁがこんな事を言ってきた。
「私らが夫婦って言う事を知らなかったって事は、私らがこの町の領主って言う事には気づいていないんだな!ワハハハ!!」
「えっ、領主?本当に?」
「あぁ!」
「えぇーーーー??!!」
今度こそ本当に驚いた。
領主?!この夫婦が?!
嘘だろ?!
旦那はSMプレイ好きのドMで妻はドSの(元)冒険者?!?!
どんな領主だよ!!
こんなのが領主とか…世も末だな……。
右腕に引っ付いているネルは、領主と言うのが分かっていないらしく、俺が驚いているのが不思議なの様で、首をかわいく傾げている。
ちなみにミトはまだボーンから熱い視線を送られていた。はっきり言ってキモイ。
ん、待てよ。
ボーン?
ボーンってまさか…?!
「えっ、じゃあこの町のボーンって言う名前はこの人の?!」
「ん?そうだよ。当たり前じゃないか!ワハハハ!!」
まじかよ…。
どっかで聞いたことあると思ったんだ。
俺は最初にボーンと言う名を、ミトから聞いた時に感じた違和感を思い出す。
これで全ての謎が解けた。
まとめると、ここはボーンの町の領主の屋敷。
そしてその領主の妻がまさかの俺らの師匠であるフィスばぁ!という事だ。
こりゃ波乱の展開だな…。
俺は心底そう思った。
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