第32話SMプレイは突然に

ネル…

ネル…っ!

今俺とミトは、ボーンからネルを救い出す為に、屋敷の中を走り回っていた。

ちなみにボーンと言うのは、先程ミトから聞いたこの屋敷の持ち主ーーつまり今俺らが探しているクソジジイである。

ミトが言うには、デブ髭がポイントらしい。

そういえばボーンってどっかで聞いたことある様な…いや、今はそんな事どうでもいい。

早くネルを探さなければ!


俺はそう思いたって、ふたたびネルを探す事に集中する。

結構屋敷の中を探し回っているが、中々見つからない。

というかこの屋敷広すぎだろ!

と心で思いながら、見えているだけで数十はある部屋の扉を片っ端から開けまくる。

だが、見つからない。


「クソっ!何処に居るんだ!!」


「!タクヤ!あの部屋ではないか?!」


どうやらミトが何か見つけたらしい。


「!」

俺はミトが指さしている方向にある部屋の扉を見る。

するとその部屋の中から、ギャーギャーと男の人の悲鳴みたいなのが聞こえて来た。

ネルの事だ、恐らくボーンという男を圧倒しているのだろう。

そう思い、少し誇らしくなった俺は、悲鳴が聞こえてくる部屋の扉を、「思い知ったかクソジジイ!!」と言って、勢いよく開けた。

そして…


『…………………………え?』


部屋の中を見た俺とミトは、意表を突かれた様な声を出す。

そして中に居た人から、「思い知りました女王様〜!」と言う声が聞こえて来た。


『…………………………は?』


俺達はふたたび意表を突かれた様に声を出す。

その部屋の中には、足と手を縛られ、倒れているデブ髭の男と、「これでいいの?」と言いながら、片手にムチを持ち、片足を男に乗せているネルが居た。


バタン


俺は1回部屋の扉を閉める。


「ミト…多分な、俺達は疲れているんだ。だからあんな幻覚が見えたんだ。」


「そ、そうじゃな!私達は疲れているんだ!」


俺達は一旦深呼吸をしてから、また部屋の扉を開ける。

すると部屋の中には、さっきと同じ光景があった。

部屋に来た俺達に気づいたのか、ネルがこちらを向く。


「あ!タクヤ!!起きたんだね!良かった…!」

そう言ってネルが、俺に近ずいてくる。


「ね、ネル…何してたんだ…?」


俺はこの状況を整理しようと、ネルに問う。


「いや〜なんかね。このおじさんが、(俺を縛ってムチで叩いてくれ!そうすればお主の友達は助けてやろう)って言ってきたから、やってあげてたんだ〜。ふふっえらいでしょ?」


ネルがこのおじさんの声をかわいく真似て説明する。

そして「褒めて〜」と言いながら抱きついてくるネル。

俺とミトは相 変わらずに呆然としていた。


「……そうか…分かったぞ!さてはお前変態だな!!??」


「そうだ!変態だ!!」


『え』


誇らしい様に俺の質問を肯定してくるおっさん。

俺とミトはまた意表を突かれた様に声を出す。


「ぬ、お主らは毒で倒れていた男とロリ魔法使いだ

な!良ければワシの体をムチでお仕置してはくれぬか?!」


そう言って堂々とド変態発言をしてくるおっさん。


「ミト…後は頼むわ……」


ちょっと体が持たなくなりそうなので、ここをミトに託して立ち去ろうとする俺に。


「えぇ?!私に任されても困る!」


と、「私も!私も!」と言いながら俺について来ようとするミト。

俺達はこの地獄を立ち去ろうと、部屋のやけに重い扉をこちら側に向けて開ける。

すると、扉の向こうには、何故か【壁】があった。

だが俺は、その【壁】が【壁】ではないことを直ぐに理解する。

そしてそれを確かめるように【壁】の上の方を見ると、そこには血相を変えたフィスばぁの顔があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る