第25話宿屋

「ここがお主達が泊まっている部屋なのか?」


「あぁ、そうだよ」


俺はミトの問に答える。

俺とミトは今、宿屋の俺達が泊まっている部屋に来ていた。

ミトは俺達が泊まっている部屋を見渡すと。


「おい!どういう事じゃ!ベットが2つしか無いでは無いか!!」


とか何とか言ってきた。

うるさいやつだなー

と思いながら、俺は背中に背負っているネルを、自分に近い方のベットに寝かせる。


「俺とネルが一緒のベットに寝るから、お前がベット一つまるまる使えば良いだろ」


「む…良いのか?」


「あぁ」


「後で返してって言っても返してやらぬからな!」


そんな子供の様な事を言ってくるミト。

俺は「はいはい」とテキトーに答えながら、2人してそれぞれのベットに座り、ミトに今後の事を尋ねる。


「で、お前これからどうすんの?旅人とか言ってたけど…」


そう俺が聞くと、「ん?」と返してから、「旅はだるいしつまらんから辞める」とはっきり言われた。


「なんだよ、そんなに簡単に辞めていいのか?」


「逆に聞くが、なぜ続けねばならぬ?」


ミトが開き直った様に聞き返してくる。


「いや、俺に聞かれても…」


俺が呆れたように返すと、ミトは「フン!」と言ってそっぽを向き、寝転んでしまう。

その様子を見た俺は、「やっぱ子供だな」と心底思った。

外を見ると、もう空は薄暗くなり、夕焼けに照らされた赤茶色の雲が浮かんでいた。


「今日はもう寝るか」


そう言って俺は、ネルが寝ているベットの端っこにうつ伏せに寝そべった。

明日はクエストに行かないとな…

そんな事を考えながら眠りに着いた。


ーー「すみませんでした」


「謝るんじゃなくてちゃんと理由を話な!」


「はい…」


何故こうなった…

時は30分前に遡る。


ーーふわぁ〜

俺は瞼を擦りながら目を開ける。

目を開けると、俺は最初に寝転がった位置からだいぶ外れた、ネルのそばで寝ていた。

スーースーー

ネルの綺麗な寝顔と共に、ネルのかわいい寝息が聞こえる。


「んん…タクヤ…んん…」


と言う寝言まで聞こえてくる。


か〜わ〜い〜い〜


そっと手を伸ばし、ネルの頬を優しく撫でる。

本当かわいいな。

俺がそんな事を思っていると、ベットの横から声が掛かった。


「おい、今まで何処で何をしていたんだ?」


「えっ」

俺は一瞬間抜けな声を出してから、その声が聞こえた方を向く。

するとそこには、血相を変えたフィスばぁが、こちらを睨みながらぶつぶつ言っていた。


「突然居なくなって心配したじゃないか!」


ーーと、言うわけで今に至る。

見事に立場が逆転してしまった。


「すみませんでした」


「謝るんじゃなくてちゃんと理由を話な!」


「はい…」

俺はネルを助けに行ったこと、横で寝ている少女が助けてくれた事などを、包み隠さずに話した。

俺の説明を聞いたフィスばぁは、最初は俺の話を疑っていたが、話の終わりまでには信じて貰えたらしく、納得した様に「ちゃんと訳を言ってから飛び出しな」と言って俺達の部屋を出ていった。

なんだったのだろうと思ったが、フィスばぁなりに心配してくれていたのだろう。

ふぅ。

俺は寝起きからの説教と言う大仕事を終え、ため息を着く。

そしてネルを起こそうと、ネルに近づく。


「ネル朝だ。起きろ」


優しい口調で言う。

するとネルは「んん…」と言って寝返りを打つ。

こう見ていても、嘘のように昨日の怪我が治っている。

ミトってすげーな。

と思いながら、ネルを起こした。

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