第23話ミト

「…」


砂埃が開けると、そこには美しい金色の髪と目をした少女が立っていた。

少女の腰の周りには、それぞれ緑、青、赤、黄色の4色の宝玉の様なものが浮いていた。

そしてその全ての宝玉が、それぞれの色に艶めかしく輝いている。

少女は魔法発動の為に前に突き出したと思われる右手を下げながら、こちらを見る。

随分と冷静な目だ。

俺はその少女と目が合う。


「………………………………………」


「………………………………………」


数秒間、お互いに見つめ合う。

すると少女が突然クルっと回れ右をして、そそくさと帰ろうとする。


「なんもなしかよ!」


俺は思わず突っ込んでしまったが、今はそれどころでは無いことを理解して、目の前の少女に助けを求める。


「おい!助けてくれ!俺の仲間が重症なんだ!!」


俺は枯れた声で叫ぶ。

すると少女は倒れているネルのところまでてくてくと歩いていく。

おっ!助けてくれるのか?!意外と良い奴だな!

そんな事を俺が思っていると、その予想を砕く様な発言が聞こえた。


「内蔵と骨がイカれとるの〜まぁこんくらいは気合いで直すんじゃな。そんじゃ」


驚く程の年寄り口調で、少女が言葉を発したあと、またもやクルっと回ってそそくさと帰ろうとする。


「いやいや、内蔵と骨は気合いじゃ治らんだろ!」


「なんじゃ、めんどくさいやっちゃの〜この子もこんなに安らかに眠っておるでは無いか」


「それがヤバイんだよ!!」


俺はもう本っ当に真面目にやって欲しいと思い全力で少女に突っ込む。


「頼む!治してくれ!何でもするから!あんな魔法使えるならネルの事も治せるだろ?」


何でもするという俺の言葉を聞いた少女の顔が一瞬で明るくなる。


「分かった分かった…まったく…最近の若者はうるさいの〜」


そんな事を言いながらネルの治療を始める少女。

俺はいやいやお前も【最近の若者】だろとツッコミたかったが、少女の機嫌を損ねるかもしれないのでやめておく。

少女は気を失っているネルの近くまで行き、両手をかざす。

すると4つの宝玉のような物がウォォォンと光り、みるみるうちにネルの傷が塞がっていく。


「おー」


俺があまりの美しさに見とれていると、ネルが「…んん…」と言って意識を取り戻した。


「ネル!大丈夫か?!」


俺はネルのそばに行って言う。


「んん……タクヤ…っ良かった…良かった…生きててくれた…」


そう言ってネルが泣き出す。


「あぁ生きてるぞ!ピンピンしてる!!」


俺はネルを励ます様に言う。

ネルは俺の言葉にクスクスと弱々しく笑う。


「タクヤ…ごめん…ちょっと眠いや…」


「あぁ、よく休め、そうしないとまた俺に膝枕出来ないだろ」


「ふふっ、そうだね…」

そう言ってネルは眠りに着いた。


「…」


「…」


「…」


「なんでそんなに見つめてくるの?!」


沈黙と目線に耐えきれなくなり口にする。

俺は、ネルを見つめる俺の横顔を少女に見つめられていた。(↑分かりづらい)


「いや…別に」


少女から俺に向けて「こいつやばいな」と言う雰囲気が漂ってくる。

膝枕とか言わなきゃ良かった…と、俺が後悔していると、


「そういえば君の名前は聞いてなかったな」


少女の名前を聞いていなかった事に気づき、話を逸らすように少女に尋ねる。


「私はミトじゃ。それより坊主、私の言うことをなんでも聞くという約束、忘れてはいないじゃろうな?」


ミトっていうのか…いい名前だな。

というか、


「俺は坊主じゃない!タクヤだ!村上タクヤ!」


「うむ、お主の名前などどうでも良いわ。それより約束は忘れておらんよな?」


「約束?そんなのしたっけ?」


「大地の鼓動よ…┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈」


「あーー!分かった分かった!!覚えてるよ、覚えてるからその宝玉の怪しい光を収めて!」


俺はなんかやばい魔法を唱え始めるミトをなだめながら、約束の内容を確認する。


「えーっと何をして欲しいんだ?言っとくけど金は無いぞ?」


俺が茶化すように言うと、ミトがキリッと俺を見つめて、「泊まる所が無い」とハッキリ言った。

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