第22話助け

「ネルは、ネルはどこですか…?!」


(タクヤ…?)


私は腫れた瞼を開きながら、聞き覚えのある声に視線を向ける。

ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ


「…ぅぅ……」


筋の切れた首を、激痛に耐えながら上げる。


(右腕と足の感覚が無い。多分肋骨も何本か折れてる…それに出血も凄くて、体が動かせない…意識を保つのがやっとだ…っでも…っ早くタクヤに加勢しないと…っっ!タクヤが死んじゃう…っ)


ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ

出血多量により呼吸が早くなる。

私は感覚が残っている左腕を動かし、前に進もうとする。

ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ


(まずい…目が見えなくなってきた…。)


「…くっ…」


(酸素が脳まで行ってないんだ。早く、早くタクヤに加勢しないといけないのに…っっ!)


グシャッ

その時、タクヤが男の1人を半分にした。


(まずい…っ!あいつらは人間じゃない…っキメラだ…っ!!)


キメラ:異種族との合成により誕生する魔物。

親である合成された魔物の長所部を引き継ぐと言われている。


(あいつらはスライムと人間のキメラ(合成生物)。だから首を飛ばしても再生した…っ!早くタクヤに伝えないと…っ、死んじゃう…っっ!)


「ネルを倒したから相当強いと思ったのに…期待はずれだな…」


(違う…違うよタクヤ…っ!まだそいつ生きてるよ…っ!)


「…ぅぅ…っゴボッ…っっ」


潰れた喉で喋ろうとしたため、口から内蔵や骨が混ざったドロドロの赤い液体が出る。

だるい…。

吐きそう…。

力が入らなくなってきた…。


(どうしょう…っ助けて…っっ誰か…!)


既に身体には力が入らず、唯一感覚があった左腕も痙攣し始めている。

スパッ

タクヤが2人目の男の首を切る。

ゴロゴロゴロ

切られた首がタクヤの足元に転がる。


「クソ共が…っ!」


そう言って、タクヤが赤いドレスの女を殺そうとした時、足元に転がっていた首がぐにゃりと変形し、緑の液体状になってタクヤの右足にまとわりつく。


「くっ」


タクヤはまとわりつく緑の液体を焼き払おうと、右手から火を出して緑の液体に当てる。

だが火力足りていないのか、緑の液体は火をものともせずに、タクヤの右足を絞める。

ググッ

その時、最初に真っ二つにされていた男が起き上がり、斧を構えながらタクヤの背後に突っ込んでいく。


(助けないと……っっ!!)


そう思い首を上げた途端、意識が飛んだ。



ーー「くっ」


こいつら人間じゃねぇのか?!

俺は効き目が無いと分かりつつも、右足に着いている液体に火を当て続ける。

全然効かねぇ。

ザザッ

足を圧迫してくる液体に気を取られていた時、すぐ後ろにある気配に気がついた。

まずい…っ死ぬ…っっ!

そう思ったその時、バゴンッ!!という音が鳴り、男と共に足にまとわりついていた液体が蒸発する。


「なんだ?!」


そして爆風により砂が巻き上がる。

そして砂埃が収まると、その爆音を出した原因が現れた。

それは長く綺麗な金色の髪と目を持った少女だった。

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