第13話希少職業と最強職業
俺達は今、冒険者ギルドの前まで来ていた。
ギルドは、ほかの建物より一回り大きく、建物の横に大きい人の石像が立っていた。
この世界の英雄とかそんなものだろうか。
俺はそんな事を思いながら、ネルと一緒にギルドに入っていく。
「緊張するね」
ネルが俺の右腕に引っ付いてくる。
Oh〜No〜な・ん・か・あ・た・っ・て・る〜
俺も結構、ギルドに居る奴らは、宿屋の男の様に荒くれ者ばかりだと思い、それなりに緊張していたのだが、右腕にひっ付いている【神聖なる二つの球体】によって、その緊張は解される。
俺はそんな脳内のエロエロモードをネルに悟られない様に、ギルドの中に入っていく。
ゴゴゴゴ
やけに重装な扉を開け、中に入る。
ギルドの中には、でっけぇ剣を持った大柄の男や、細身だが、なんだか凄まじい武の気配を放っている女などがいた。
俺達はそういう人達に勝手に威圧されているが、別に向こうからなにかしてくるなんて事は無い。ーーまだ。
俺はギルドの受付まで行く。
すると、酔っ払った冒険者の一人と肩がぶつかった。
「おいおいおい、な〜にぶつかっちゃってくれてんだよ〜怪我したわ〜お金払ってくれよー」
シジミの様な目をした、いかにも性格が悪そうな冒険者がつっかかってきた。
って言うか、怪我で金をせびるとか地球と変わんないな。
「すいません」
俺はそれだけ言って行こうとする。
酔っ払いは無視するのが一番いい。
ーーと思ったのだが、
「はぁ?!それだけ?お前ら俺をバカにしてんのか〜」
めんどくさい。
「そんなペチャパイの女連れて毎日がハーレムのお前に俺がお金を払えば許すって言ってるんだよ〜? 俺はDランクだからーそれ分かってるよね?」
どうやら冒険者にはランクがあるらしい。
Dがどれほどの実力かは分からんが、申し訳ないけど、俺達ならこいつに負ける気がしない。
「あ?」
俺はネルをペチャパイと言われてムカついていた事もあって、強気でいく。
ギルドに居たほかの冒険者達は、何事かとザワついて居る。
「なんだそのめ…ーー」
ゴキッ
俺の胸ぐらを掴もうと、男が手を伸ばしてきた時、男が飛んだ。
えっ?何が起きた?
俺は辺りを見回すと、片足を上げたままたっているネルの姿が目に入った。
あらま、勝てるとは思ってたけどまさか一撃とは…。
「タクヤに触らないで」
ネルは蹴り上げたままの足を下ろしながら言う。
男は、ネルに横頭部を思い切り蹴られて、受付カウンターの横にあったゴミ箱と思しき物に突っ込み、泡を吹いて失神している。
って言うか、えぐい音したけど、ちゃんと生きているだろうか。
その様子を見ていた他の冒険者達は、唖然としている。
やっちまったな………。
でもま、いっか〜。
俺はそう思い、受付まで歩く。
そして受付の女の人に、「冒険者登録をしたいのですが」と言った。
ーー「はい。ではこの紙に氏名と職業、ソロかパーティーかを書いて提出して下さい」
そう言って、薄茶色の紙を渡される。
あの後、失神していた男は、ギルドの職員によって、どこかへ連れてかれた。
聞くとあの男は、「昼間から酒を飲み、ろくに仕事(クエスト)もしないクズです」と言って、逆に感謝されてしまった。
俺達は受付の女の人に渡された、冒険者登録用紙を持って、椅子に座っていた。
「まずは名前か」
俺はそう呟きながら記入していく。
…どうしよう文字が書けない。
「ネル分かるか?」
「全く」
だよな…。
俺達が迷っていると、「お隣いいですか?」と言って巨乳のお姉さんが座ってきた。
おーなんという見事なOPPAI。
思わず見とれてしまう。
ネルは自分のモノと照らし合わせる様に、チラチラと女性の胸を見ている。
ネルよ俺はペチャパイもいける口だぞ。
俺は心でそんな事を言いながら、紙と向き合う。
「あなた、文字の読み書きができないんでしょう?」
「えっ、はい」
隣りに座った女の人がそんな事を言ってきた。
「そんな貴方にこれをあげるわよ。」
そう言って、2つの白い玉を俺達に向けて差し出した。
「何ですか?コレ」
「これは記憶石。見たものを記憶できるのよ。これで本とか読めばこの世界の言語はだいたい理解できるわ」
なんだその素晴らしいアイテムは!
「いくらですか?」
「いいのよ〜お代なんて。ただちょっとお願いがあるだけ」
「お願い?」
「そう」
なるほど、交換条件か。
「どんなお願いですか?」
「私はね、この町で輸送の仕事をしているの。でも最近、この町の近くに盗賊が出るのよ。だから私の馬車を護衛して欲しいの」
「それなら他の冒険者でも良いのでは?」
俺が聞くと、ん〜と言って、自分の唇に人差し指を付けた。
俺は一瞬、ドキッとする。
ネルはまだ、自分のモノと彼女のモノを見比べている。
「最近冒険者の数が減っていてね、依頼料が高いのよ。それに…貴方たちは並の冒険者より強そうだから」
なるほど、さっきの騒動を見ていたのか。
「分かりました。お引き受け致します」
「あら、ありがとう。細かいことは追って知らせるわ」
そう言って女の人は、去っていった。
ーーその後俺達は記憶石を飲み、この世界の言語を理解した。そしてようやく、冒険者登録用紙を書く。
冒険者用登録用紙
氏名:タクヤ
ネル
職業:タクヤ=?
ネル=ファイター
冒険者仕様:パーティー
ランク:?
スキル:無し
やっぱスキルってあるんだ。
そう言えば俺の職業ってなんだろう?
俺は最後に残った冒険者登録用紙の職業欄を記入するため、受付の女の人に聞きに行く。
「すみません職業が分からない時はどうしたら良いんですか?」
「あっ、はい。ではこの鉱石に触れてください」
そう言って、受付の女の人が、エメラルドの様な緑色の綺麗な石を、下の棚から取り出した。
俺はその石の上に右手を乗せる。
それを不思議そうに見ているネル。
可愛い。
俺がその石に手を乗せると、石が光り、俺のステータス情報が浮かび上がった。
氏名:タクヤ
職業:クリエイター
ランク:E
スキル:無し
クリエイター?
なんだそれ。
俺がステータス表示をまじまじと見ていると、歓喜の声が上がった。
「すごい!クリエイターですよ!!」
「えっ、すごいんですか?」
「すごいってもんじゃありませんよ!この世界に10人しか存在しないレアプロフェッション(希少職業)ですよ!」
なんだそれすげー!
「タクヤすごい!!」
ネルは俺の横で舞うように喜んでいる。
「どんな職業何ですか?」
「えっ、知らないんですか?クリエイターは想像した物、又は触ったことがある物を作れるんですよ!」
あーそういう事ね。この指輪か。
過去に触ったことがあるものを作れる。
まさにこの指輪の力だ。
待てよ、もしかして…
「すみませんスキルも作れるんですか?」
「もちろん!あまり詳しくは知りませんが、大抵の物は何でも作れますよ」
なんと!やっぱこの指輪はすげーな!
と、俺の職業が素晴らしい事に妬いたのか、むくれた顔をして、ネルが言ってきた。
「私もやりたい!」
そう言って石の上に手を乗せる。
すると、ステータスが浮かび上がった。
氏名:ネル
職業:ハイファイター
ランク:B
スキル:重力操作
ん?ハイファイター?
ファイターじゃないのか?
俺がそんな疑問を抱いていると、またもや歓喜の声が上がった。
「なっ、ハイファイター!!??」
受付の女の人が、倒れそうになる。
なんだよ、俺達ってば結構すごい系なのかな?
「す、すごい?」
ネルが不安そうに聞く。
「すごい?!そんなもんじゃありませんよ!!あの
猫族でもハイファイターは稀なのに、人間族がハイファイターなんて、もうどうかしてます!!」
受付の人の言葉のあやに、良いのか悪いのか分からないネルは、俺をチラチラと見て、判断を委ねてくる。
「とてつもなく凄いって事だよ」
俺はそう教えてあげると、ネルは跳ねる様に喜んだ。
可愛い。
取り乱した事を恥ずかしそうに、コホンと咳払いをし、「それでは…」と言って話しを続ける受付の女の人。
「お二人はそれぞれEとBランクなので、Cランク以下の依頼を受けられます。それでは、数ある功績があらんことを」
そう言って、色々あった冒険者登録は終わった。
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