第12話そんなにこのリングは甘くない

「んんん…」


俺はぼやけた視界を整えながら上半身を起こす。

俺は何時間寝てたのだろう。

目の前の壁に付いている時計と思しきものを見る。

ん〜分からん。

文字が読めないと大変だな。

俺はそう思いながらネルを探す。

俺が寝ぼけながら手で探っていると、ふと暖かい物が手に触れた。


「ははっ」


そこには、俺を膝枕している途中に寝てしまったのか、ネルが丸まったように寝ていた。

こいつも疲れていたのだろう。

寝返りにより脱げたのか、フードから猫耳が出ている。

そしてそれがひょこひょこと動いている。

寝ている間も動くのか…。

と思いながらネルを起こす。


「早く起きないと襲いますよお嬢さま?」


日本でコレ言ってたらセクハラだよな…。

そんな事を思いながらネルを揺する。


「んん〜今何時?」


「それは俺が聞きたい」


ーー俺は、ベットの淵に座って、ネルと向き合っていた。


「ネル。時計の事もそうだが、俺はこの世界の常識を知らなさ過ぎる。だから知ってる限りで構わないから教えてくれないか、この世界の事を」


「分かった。人間の文化についてはあんまり知らないけど。」


「あぁそれでいい」


そう言ってネルは、この世界の伝説を話し出した。

ーー遠い昔、この世界は3つの勢力に別れていた。魔物を従い、この世界の均衡を保つ悪魔。そして悪魔と対になる形で存在する天使。そしてその間に立つ人類。精神生命体である悪魔と天使はそれぞれ、悪魔は魔王を、天使はエルフを使役して、現実世界にに干渉していた。

ところが人間の強欲さによる干渉力は凄まじく、今や人類対悪魔と天使みたいな状況になっている。


「とまぁこんな感じかな?」


なるほど。

地球でもそうだが、人間は色んなものに影響してしまう様だ。


「じゃあネルみたいな種族は天使と悪魔どっち派なんだ?」


「私達は………どっちだろう?」

ネルが質問を質問で返してくる。


「知らないよ」


「私達って魔物と人間の混合種の進化系だから、そこら辺が微妙なの」


なるほど。

でも人間の脳に近い思考回路をしてるからどっちかと言うと人間なのかな?

ネルみたいな優しい獣人ばかりならいいが。俺は今後、ネルの名前を見つけるに当たって、同族との接触は避けられない事を見ると、優しい獣人ばかりであって欲しいとホントに願う。


「そうか、まぁ良い。この世界の事はだいたい理解した。あんがとな」


「うん」


「あっともう1つ相談がある」


「ん、なに?」


「ギルドに入らないか?」


「え、何で?」


「いやな、チェックインする時、お金の事に関しては考えがあるって言っただろ?それはこの指輪でお金をコピーしようと思ったんな、でもこの指輪は何故かお金はコピーできなかった。だからどっかで働きたいと思って、それでネルの戦闘力を十分に発揮できるのはクエストだ。だからギルドに入ろうかと思ったんだ。どうかな?」


ネルが眠っている時こっそりと、お金の複製を試してみたが、何故かコピーできなかった。

そこで考えたお金の稼ぎ方がこれだ。


「良いけど、タクヤも戦うの?」


良かった。この世界にはギルドがあるらしい。

その辺は賭けだったから本当に良かった。

一気に希望が潰れる所だったぜ。

俺はそう思いながら、ネルの心配に答える。


「あぁ。ネルだけ戦わせて、男の俺が見てるだけなんて恥ずかしいからな」

これは当たり前の事だ。


「そっか…」

ネルが不安そうな顔で言う。


「安心しろ。俺にはネルが着いてるんだろ?」


「!そうだね!!」


俺のその言葉を聞くと、ネルの顔色が一気に明るくなった。

ーー俺達は今、宿屋の人に教えてもらった、町に唯一のギルドに来ていた。

やはり、町に初めて入った時に一本道の突き当たりに見えた建物が、ギルドだった様だ。



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