第8話ボーンの町

俺達は、ボーンの町へと向かうため、森の中を歩いていた。


「ねぇねぇタクヤ」


「ん?何?」


俺の横を歩きながら、ネルが聞いてくる。


「大丈夫?」


「何が?」


「いや、さっきからずっとボーッとしてるから…」


あぁ、寝てないから疲れてるんだろうな。

町に着いたらたっぷり寝よう。


「大丈夫だよ。こう見えて俺は身体が強いんだ!」


そう言って心配させない様に腕を挙げて見せる。


「ははっでも辛くなったら言ってね。私が膝枕してあげるから」


ひ、膝枕…だと?!

なんだよそれしてもらいてー!

だがこんな所で弱音を吐いてたら情けねーよな。


「ありがと。辛くなったら言うよ」


そう俺が言うと、満足した様にニッコリと笑った。

今日は天気がいい。

歩いていると暑いくらいだ。

というかこの世界に季節と言う物はあるのだろうか?


「なぁネル今は夏か?」


「ん?そうだよ」


やっぱりそうか。

どうやら季節があるらしい。


「ねえねえタクヤは何処から来たの?」


と、俺の当たり前過ぎる質問を不思議に思ったのか、ネルがそんな事を聞いてきた。


どこと言われてもな〜。

なんと答えればいいのだろうか。

日本や地球と言っても分からないだろうし、気づいたらダンジョンに居たと言っても信じて貰えないだろう。

ん〜どうしたものか。

まぁ別に嘘をつく必要は無いか。

まぁ信じて貰えないだろうが、一応ネルには話しておこう。


「俺はこの星の人間じゃない」

俺は正直にそう伝えた。


「えっじゃあどこの星?」


「地球っていう星から来たんだ」


「ちきゅう?」


「そっ」


地球と言う単語を聞いて、可愛らしく難しい顔をしながら、悩んでいるネル。


「ん〜そっか!よく分かんないけど分かった!」


「ははっそうか」

まぁ分からなくて当然だよな。


「ネルはどこから来たんだ?」


「私はね、リーグっていう猫族のむらから来たの」


「猫族の村か」


「そう、そこから連れてこられた。」


「…なぁネル。お前の名前を取った魔法使いを見つければ、名前を取り返せるか?」


「ん〜どうだろ魔法の事に関しては詳しくないから分からないけど、多分そうなんじゃない?」


「そうか…」


もしネルに魔法をかけた奴が見つかっても名前が取り返せないならしょうがないが、今の段階では分からんか…。

まぁ、ボーンの町に着けば何かわかるかもしれない。

そういう意味でも町へ行く必要はありそうだな。


まぁ気長にボーンの街で過ごして、お金が溜まったらネルの本当の名前を探す旅にでも出るか…。


「なぁネル。魔法に関しては詳しくないって言ってたけど、魔法は使えないのか?」


「うん。猫族は基本魔法は使えないよ」


「そうか」


なるほど。

とすると、もし今後魔物に会っても対処出来ないかもな…。

と、俺が顎に手を当てて悩んでいると突然ネルが謝って来た。


「ごめんね…」


ん?あ!


「いやいや、別に攻めてる訳じゃないよ。ただ今後魔物に合ったらやばいなってだけで」


「それなら安心して」


「えっ」


「私達猫族は狩猟民族だから戦いには強いよ」


「そうなのか?」


「うん。多分殴り合いなら誰にも負けない」


「えっ、そんなに?」


「うん。だって私、職業ファイターだもん。と言うか猫族は皆んなファイターだよ。しかもファイターにしたら一番強い種族」


「ファイターって格闘家?」


「うん。アームは取られたけど」


「アーム?」


「うん。手にはめる武器の事」


へー。なるほど。

日本でやったゲームとかにも色んな職業があったけど、ネルはファイター(格闘家)なのか。

ん?待てよ。さっきネルはファイターの中で猫族は最強的な事を言ってたけどあれほんとなのかな…。


「なぁネルもしかしてネルってファイターの中でも結構強め?」


「うん。多分この辺で一番強いんじゃない?」


マジかよ…。

スゲーな。

これだけ自信を持って言えるという事は本当なのだろう。


「そうか」


なら俺は戦はなくても良さそうだな。

でもなんでそんな最強種的な存在が人間に捉えられたんだろう?

そんな事を考えていると、「あ!」と言う声が聞こえた。

ネルが先に走っていき、崖下の物を指さしている。


「ん?どったの」


「みてみてタクヤ!あれがボーンの町だよ!」


そこには、だだっ広い高原の中央に、丸い障壁で囲まれた、町があった。


「おぉー!」


思わず声が出る。

こちらの世界に来て丸2日。

ようやくこの世界の文化に触れられる様だ。

それはちょっと楽しみでもあるし、ちょっと不安でもあった。


「よくやく着いたね!」


「あぁ」

3時間くらい歩いてやっと着いたのだ。

もう俺は早く寝たい。


「ようやく寝れる」

俺の言葉を聞いてクスクスと笑い、ネルは草原に向けて走ってゆく。

あいつ早いな。


「ちょっと待てよーー!」


俺はそう言いながら追いかける。

確かに、この草原に吹く風は、どこか懐かしく、気持ちが良かった。


「タクヤーー!」


そう言って、クルリと方向転換し、ネルが俺に向かって走ってくる。

ん?なんだ「わあ?!」

バフッ

そして俺の胸に飛び込んだ。

俺は草の上に押し倒される。

俺を下敷きにしたまま、クスクスと笑いながら抱きついてくるネル。

可愛いすぎだろ!

俺は抱きついてくるネルの頭を優しく撫でる。

俺が撫でてやると、喉を鳴らして喜んでいた。

ふと、ネルの耳がすっと横に向いた。

そしてネルの顔も、耳と同じ方向を向く。

なんだろう?と思い、俺もそっちを向くと、そこにはゴブリンみたいな奴に襲われている馬車があった。

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