第2話こんなの死んじまう…
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ガォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
巨大なトラのような怪物が俺を追いかけてくる。
「なんでだよ!なんで追いかけてくるんだよー!!」
ハァハァハァただでさえ体力が無い俺の全力疾走だ。
早く隠れないと食べられちゃう!
濡れた地面をしっかりと掴み、転びながらも走る。
ハァハァハァハァ
「うぉ?!」
岩につまずいて転ける。
やばいやばいやばいやばいやばいやばい
食われる!!
食べられることを覚悟し、固く目をつぶる。
ズゴッ バーーーーン
「ん?」
見るとそこには、あの怪物が転けていた。
なんて馬鹿なんだ……!
俺も同じところで転んだけど…!
ムクッ
「うわ?!まだ生きてた!」
また怪物が追いかけてくる。
なんか…何かないか?!落とし穴とかなんか!
暗闇に慣れた目で見渡すが、それに似たものは一つも無い。
というかもしあっても遠くは暗くて見えない。
「クッソーー!」
そう言って目の前の岩を飛び越える。
ズゴーーーン!!
「えっ?」
見るとそこには、俺を追いかけていたあの化け物が、落とし穴に落ちていた。
なんで?えっなんで落とし穴なんか…?
っていうか今、俺の手が光った様な…。
いや、今はそんな事どうでもいい!
とにかく、早く逃げないと!
そう思い、最後の体力を振り絞って逃げる。
ーー「ハァハァ逃げ切ったか?!」
俺はある程度の距離を逃げたあと、巨大な岩の影に隠れていた。
クッソ、なんで俺がこんな目に…!
ひとまず危険は去ったみたいだが、これからどうすればいいんだろうか。
選択肢は2つだ。
このままこの洞窟に居るか、この洞窟から出るか、つーか出口あんのかな…コレ。
はぁ。本当に、なんでこうなったのだろう。
まず家のベットで寝てて、それで目を開けたら、じめじめした洞窟ーーダンジョンとでも言うのだろうか、そんな所に来ていた。
しかも目が覚めたらいきなり怪物に襲われるし、なんかうまく助かっちゃったし。
「もう、どうなってんだよ……っ」
挫けそうになる。
クッソ!折れるな俺!!まだ生きてる!生きてればなんとかなる!と、思う…!
「あぁぁぁもう!!クソが、やってやるよ!ゼッテー生きて家に帰ってやる!」
やけくそ気味に決意してやる気を出す。
「まずは食いもんだ」
食料と水これが無いと生物は生きていけない。
「水は…」
そう言って地面から染み出てくる水を舐める。
「マッズ!めっちゃジャリって言ったわ」
暗闇であまり見えないが、恐らく泥水だろう。
どうする?
この泥水を濾して飲むにしても濾す為の材料が足りてない。
たしかこの前テレビで見たが、炭と砂と布が必要とか言ってた気がする。
布は自分の服を使うとしても、岩でゴツゴツのダンジョンで砂とか炭とかは無理だ。
「クッソ絶望的じゃねーか!」
こんなの死んじまう…!
ピカッ
「えっなんだ?」
気づくと、自分の右手にはめられている指輪みたいなのが光っていた。
そして光った右手ーー指輪の上に、水の塊が現れた。
バシャ
「うわ?!」
なんだ?!
水?!
俺が出したのか?!
指輪の光が引くのと同時に、右手の上に出現した水の塊が落ちてきた。
「コレ…魔法?!いや、この指輪か?」
俺はさっきまで光っていた指輪をじっくり見る。
なんの装飾もない、黒く、緑の線が光っているシンプルな指輪だった。
「こんなのはめてた覚えは無いぞ」
俺は恐る恐る指輪に触れ、手から取ろうとする。
ぐぐぐっ
「あれっ?取れない…」
指輪は微動だにしなかった。
うーむ。まぁ害があるものでは無いだろうが…
「と言うか今は水だ!さっきどうやって出したっけ?」
そう言って水が出現した時の事を思い出す。
たしか水が欲しいって強く願ったら出てきたよな…
「やってみるか…」
俺は強く願ってみる。
水を下さい!!
すると、指輪がまた光り、手の上に水の塊が現れた。
「おお!スゲー!!」
バシャ
「おっと」
また地面に落ちた。
どうやら、出現してから2・3秒経つと落ちてしまう様だ。
だいたいの仕組みを理解した俺は、もう一度
水が欲しいと願ってみる。
するとまた、指輪が光り水が現れた。
今度は水が落ちる前に浮いている水を飲む。
「うめーー!」
久しぶりの水だ。
よしやったぞ!コレなら当分生きていける!
と、ウキウキしていたのもつかの間、また後ろに嫌な気配が現れた。
俺はギギギと首を回し後ろを見る。
そこには、先程落とし穴に落ちた怪物がいた。
「ひ、久しぶり」
「ガォォォォォォォォォォォォォ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
前言撤回。
生きていける気がしない。
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