四章 4-2

季節外れの場所だったけれど、一緒に海を眺めたよね。その絵を描くキミの真剣そうな眼差しと横顔が印象的だった。高校生で年下だけれど、一生懸命に夢を追い掛けているその姿が、やっぱり男の子なんだなって思わせてくれた。溜め込んでいたものを吐き出すように、砂浜を走り回ったりもした。自分を重ねるようにして作った絵本の物語も、快く賛同してくれて色んなアイデアも考えてくれた。でも楽しかった分、帰りの電車は少し寂しかった。



わたしが行きたいだけだった、庭園にもついて来てくれた。本当は楽しみで待ち合わせ場所に早く着いちゃっただけだったけど、何だか恥ずかしくて誤魔化した。嘘かもしれなかったけれど、楽しんでもらえて嬉しかった。ゆっくりと、一緒に歩いているだけでも楽しかった。自分が名前しか聞いた事の無い鳥の事もよく知ってた。きっと、今まで真剣に向き合ってきた努力の成果だ。それは、あの可愛らしい絵を得意としている事からも分かった。でも、キミはそれに気付いていないんだろうね。



丘の上にある、お洒落な喫茶店にも行った。少し天然なキミに小馬鹿にされたりもしたけれど、距離が近付いたみたいで嬉しかった。実際に絵本を見せてもらった時は、自分の事みたいに喜べた。だから、わたしが手伝える番では全力を尽くしたいと思ってた。即興で絵を描くのも上手で、自分の知らない事をたくさん知ってた。本人は、積極性が無いなんて思っているみたいだけど、絵本の為なら店員さんに無理なお願いだってしてみせた。それから、ルール違反かもしれなかったけど、絵本の最後を聞いて、わたしの知りたかった答えを言葉にしてくれたのが、何よりも嬉しかった。



映画も一緒に観に行った。昔、その内容が合わなそうで、友達には一緒に行こうって言えなくて、結局観れなかった映画も、ちょっと強引な誘い方だったけど、それでも一緒に感想を言い合えて良かった。商店街は、暖かい空気に溢れていて、懐かしかった。文具屋では、懇篤なお爺さんと人懐っこい黒猫に出会った。そういえば、実は内緒でペンも買ってたんだよ。いつか、絵が描けるようになりたいって思ったから。最後は、ちゃんとさよならが言えなかった。本当は、もっと一杯感謝を伝えたかった……でも、それをしたら止まらなくなっちゃって、ルールに反してしまいそうだったから。

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