二章 2
目を覚まし、冷や汗を掻きながら跳ねるように起き上がった。時計を見ると六時半。いつも学校に向かう時間より早い時間だった。きっといつも通りであれば、二度寝をしていただろうが、二度寝をしたらまた嫌な夢。いや、確かに現実で起きた事実をもう一度見てしまうのではないかという恐怖で眠ることが出来なかった。辛く重い体を起こし、机の前の椅子に座り深呼吸をする。ふと、携帯電話の日付が目に入る。そこで思い出した。今日この日は、先ほどまで夢で見ていたあの日だということを。
(昨日、竜司が言ってた大事な日って、話し合いの事だったのか)
学校に行けば、文化祭の話し合いが待っている。いっそのこと、休んでしまうか。いや、それは違うだろう。しかし、このまま学校へ向かっても現実の時と同じ事を繰り返してしまうかもしれない。それに、竜司とも昨日と同じように接することが出来るのかさえ分からない。新は、ため息をついて机に突っ伏す。
「どうすればいいんだ……」
何の解決策も浮かばず、部屋をぐるりと見回してみると、本棚にある一冊の本に目を奪われる。現実では、引っ越しをする時に失くしてしまったはずのものであった。
「そっか、父さんの描いた絵本、ここにはあるのか」
それは、絶版になってしまった思い出の絵本『雲のまほうつかい』。自分が絵を描き続けていた理由であり、将来の目標としていた目印でもあった。
(そうだよね、元々は絵本作家になりたかったんだっけ……)
新が幼かった頃、父親は既に亡くなってしまっていたが、いつもこの絵本を読んで過ごしていた。そして、いつからか父親の画材を持ち出して絵を描くようになった。だからこそ、自分も絵本作家になると意気込んで絵を描き続けていたのだし、同じように将来の目標がある竜司という存在がいる事は、大きな励みになっていた。
「中身も再現されてるのかな……」
震える気持ちを抑えて絵本のページをめくってみると、その内容は記憶に残っている通りのものであった。寂しい王様がある日、国を訪れた魔法使いと出会って変わっていく。という童話のような物語である。それを読み終えると、当時感じていた情熱的な気持ちを少し思い出させてくれたような気がした。誰しもが叶えられるわけではない、簡単にはいくはずもないと分かっていても、絶対に諦めたくないと思っていた夢。それを絶対に叶えてやるのだと信じて疑わなかったあの頃の自分が重なる。
「……もう一回、やり直すことが出来るなら」
この世界に来た意味を自らに問い直し、せめてこの世界の中だけでも不甲斐ない自分を変えていこうと、新はそう心に誓った。
(そうだ……まずは、母さんとしっかり話をしなくちゃ)
自室を出てリビングに降りると、鼻をつく良い匂いがした。実家で暮らしていた時には毎日嗅いでいた香り。キッチンを見ると、母親が朝食を作っているところだった。
「おはよう、ございます……」
とはいえ、急に自分を変える事は出来ず、新は他人行儀な様子で母親に挨拶をした。
「おはよう。なぁに? そんなに改まっちゃって。今日は随分早いのね」
そう言いながら、優しく微笑み掛けてくれた。さっきまで悩んでいた自分を心の底から心配してくれているのだろう。
「ちょっと、目が覚めちゃって」
「よかった、昨日よりいい顔してる。ご飯も食べないから大丈夫かなー、って思ったけど。ゆっくり休んで元気になったみたいね」
(違う、違うんだよ母さん)
言いたい。今まで申し訳なかったって。ろくに連絡もしないで一人で母さんを残して、寂しい思いをさせているかもしれないことを謝りたい。夢を叶えると飛び出して、ろくに何もしていないことを謝りたい。
(でも、目の前にいるのは自分の母さんじゃない)
高校生の頃の母親だ。ただ目標に真っすぐ生きていて、それを応援してくれている母親だ。そんな人を悲しませることなんかない。だったら、ここでは高校の頃のように真っすぐに元気でいた自分を振舞おう。悲しませることのないように、ただあの頃のように。
「うん、寝不足だったみたいで、寝たら元気になった。夕飯、せっかく作ってくれたのに、ごめん」
「そんなこと、気にしないの。アンタが元気ならそれでいいのよ」
不覚にも、泣きそうになってしまった。しかし、こんなところで泣いていたら、また心配を掛けてしまう。新は、ぐっと涙をこらえて笑顔でありがとう。とだけ答えた。
朝食を済ませ、玄関で靴を履いていると後ろから母親に声を掛けられた。
「今日は随分と早く家を出るのね。いつもはもっとギリギリまで家でダラダラするのに」
「うん、今日はちょっと早く出たい気分だったから」
「あら、いい心掛け。今日は良い事でもあるといいわね」
「うん、じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
母に見送られ、新は学校へと向かっていった。昨日見た景色よりも、通学路が綺麗に見えたただの気のせいかもしれない。それでも、足取りは軽く、気が付けばいつの間にか学校に着いていた。三年間も通っていただけあって、七年振りなのに無意識でも辿り着くことが出来たようだ。
教室へ向かうと、まだ早い時間だというのに既に何人かの生徒が居り、勉強をしている生徒が目についた。しっかりと来年以降の受験に向けて自主学習をしている生徒達なのだろう。現実での当時、自分はこの時間に学校に来たことはなかった。挨拶もせず自分の席に着き、勉強をしている数人の生徒の様子を見る。調子よさげに問題を解いている生徒、勉強をしようと早く来たものの眠気に負けて机に突っ伏している生徒など、同じ行動をしている生徒は一人たりともいなかった。
しかし、今いる生徒にあまり見覚えがない。そもそも、しっかりとフルネームを覚えているのは竜司くらいだった。我ながら、全くもってダメな高校生活だったと思う。もう少し、他人と関わるべきだったと後悔をする。考え事をしながら窓の外に目をやって校庭を見ると、部活の朝練をしている生徒たちが目に入ったので、サッカー部の動くボールをひたすら目で追って時間を潰した。まるで、何でもない日常のように、自分でも驚く程残念な暇つぶしであった。
「おはよーっす! 今日はちょいと寒いねー」
そう言いながら竜司が教室に入ってきた。勉強をしている生徒たちは竜司に目をやり、軽く手を振る者、小さな声でおはようと言う者など人それぞれの反応をする。そんな生徒達の反応を見ると竜司の人気具合が見て取れる。
「おぉ? うわっ! こんな時間なのに、新がいる!」
「なんだよ、竜司。昨日は来いって言ったくせに」
「いやいや、まさかこんな時間に来てるなんてな。しかも昨日は、体調悪いーとか嘘ついて帰ったのに」
「そのことは感謝してるから。おかげで、捗ったよ」
「ほんと悪い奴だな、お前は」
何故だろうか、あれだけ心配していたのが嘘のように普通の会話が出来てしまっている。そんな竜司と雑談をしていると、次々に生徒達が登校してきて教室の空席を埋めていく。次第に人が増えていく中で竜司は自分の席に戻っていった。そして、チャイムが鳴ると教室に担任の教師が入ってきた。
「はい、おはようー、今日来てない人は……うん、いないね。えーっと、今日からですね、もう来週に差し迫った文化祭の準備を本格的に進めていってもらいたいと思います。うちのクラス出し物は、喫茶店でしたね。本番でしっかりと出来るように話し合いを進めて下さい。僕は一旦職員室に戻るので、じゃあ、大石君あとは頼んだ」
適当な仕事ぶりの担任が去り、話し合いの進行などは全てクラス委員の竜司に投げっぱなしにした。だが、そんな状況でもしっかりと仕事をこなすのが大石竜司だ。竜司は黒板に前に立ち話し合いを進行していく。
「よし、じゃあ始めようか。まず、うちのクラスの出し物は喫茶店ってことで」
この場面だ、見覚えがある。デジャヴというのはこういう感覚を指すのだろうか。細かい所までは覚えていないが、場面は曖昧だが記憶にある。
「まぁ、まだ喫茶店をやるって事しか決まっていないんで、今日はメニューとか誰が何をやるか係を決めよう。じゃあ、何か出したいメニューとかの考えがある人いるか?」
竜司は、クラスメイト達を見渡す。皆、口々に意見を話し出しているが、それを丁寧に拾い上げながらも同時に一つの形へと仕上げていき、大体の方針が素早く決まっていった。
(ほんとに器用だな、竜司は)
そんなクラスメイトの中で手を挙げる者がいた。
「えぇっと、湯川以外で何か良い案がある人は? いない、しょうがないなぁ、じゃあ湯川。喋っていいよ」
湯川というのは、所謂うるさい担当の奴の事であり、本来なら歯止めの効かないこういった人間も上手く扱えるのが、竜司のクラス委員たる所以でもあった。
「いや、メニューとかじゃないんだけどさぁ、ただの喫茶店だけじゃ面白くなくない? どうせならよぉ、審査員賞とか取れるほど面白いのにしたいなぁって思うわけなんだよ」
湯川がそう言うと、湯川の周りの面々が確かになぁ、だとか、もっとなにかあるよな、等々口々に言い始めた。
「そうは言ってもなぁ。コンセプトを付けるとするなら、何か具体的な意見が欲しい所なんだけど」
「あー、そうだなぁ。じゃあさぁ、メイド喫茶とかどうよ! 女子にメイドの恰好してもらってそれをみんなで愛でるみたいな」
「湯川。さてはお前、お客側になろうとしてるだろ。セクハラは断じて許さないからな」
竜司が笑いながら言うと、それを聞いていた湯川もバレたか。と笑い出し、皆が大きな声で笑い出す。高校生らしいくだらない冗談だが、居心地は悪くなかった。
「うーん、そろそろ真面目にメニューを決めもらいたいからな。湯川には悪いけど、断腸の思いでメイド喫茶は却下かな。それに一週間しかない、ってことも忘れないでくれ」
「そかぁ、でもさ、やーっぱり喫茶店だけじゃつまらんわ……あ、そうだ!」
湯川は何かハッとしたように思いついたような顔をしてこちらを見てきた。
「金待、絵得意だったよな。何か適当に描いてさ、それ飾って完成でいいんじゃない?」
(ついに来た……)
覚悟はしていたが、いざ再びこの場面を迎えると、鼓動が早まるのを感じる。そして、次に発する竜司の言葉が怖い。もしかしたら、違う台詞を言ってくれるかもしれないと、淡い期待を抱くも、その瞬間は訪れた。
「いいんじゃないか。やってみろよ、新」
全く同じ場面と言葉。今は抑えられているが、現実ではこの瞬間に自分は激昂してしまった。馬鹿にされていると思っていたからだ。しかし、そんな自分の中だけの思い込みで、竜司さえもが馬鹿にしていると思っていたが、それは大きな間違いだったようだ。
(竜司……?)
新は、真っ直ぐに竜司の顔を見据えた。その表情は、あの時感じていたものとは全く違うように思えた。周りの皆と同じく茶化したような笑い顔ではなく、純粋な目をしてこちらに微笑み掛けていたのだ。それが表すのは、どんな感情なのだろうか、全く見当も付かなかった。ただ分かるのは、自分の竜司に対する思い込みを覆すものであり、自分は今選択を迫られ、運命の岐路に立っているという事だけであった。
「……少し、考えさせてもらっても、いいかな」
不甲斐ない自分を変えていこうと意気込んでいたはずだったのだが、結局割り切る事は出来なかった。どうせまた失敗を繰り返すくらいなら、ここで断ってしまえばいいとも思ったが、何よりも、竜司の表情から意図を読み取れないのが不安で、新は言い淀みながら返事をした。
「そっか! 考えてくれんのか! サンキュー、新」
竜司は先ほどまでの表情から一転、大層嬉しそうな顔を新の方に向けて言った。
「よし! 湯川、お前の無茶振りを考えてくれるってさ、感謝しろよ。んじゃあ、後のみんなは引き続き何かメニューの案を考えておいてくれ」
続きは帰りのホームルームでするということになり、新にも同様の期限が設けられた。考えるとは言ったものの、授業を聞きもせずに考えたがさっぱり思い浮かばず、気が付くと午前中の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、昼休みが始まった。新は弁当箱を持って、足早に教室を出ていき、昼食は決まってここで食べていた事を思い出して、人気のない美術室に向かった。
(美術室も全然変わってないや)
美術室の扉を開けると懐かしい匂いが広がっていた。絵の具、木でできた机や椅子、石膏を水で溶いた匂い。いつもここにいた気がする。今の気分を落ち着かせるのに、これほど適した空間は無いだろう。
(でも、何を描けばいい……? 面白いもの? 好きなもの? 高校生の文化祭らしいもの?)
考えてみるとは言ったものの、どうするべきか答えは出なかった。気が抜けた表情で考え事をしながら窓の外を見つめていたが、美術室のドアが開かれる音で我に返る。
「竜司……」
「いっつも思ってたんだが、なんで美術部の部員でもないお前が昼飯をここで食ってんだ?」
「先生にはちゃんと許可も取ってあるし、ここが落ち着くから」
今は会いたくなかった人物が現れた。竜司も昼休みは時折ここを訪れていた事を失念しており、新は動揺を悟られまいと淡々とした口ぶりで答えを返した。
「それで、何か用でも?」
「ん? あぁ。一応、礼を言っておこうと思って。あんがとな。アイツの無茶振りを聞いてくれて。まぁ、お前ならやってくれるって思ってはいたけどな」
「オレは……考えるって言っただけで、まだ引き受けるとは言ってないから」
「あれ? そうだっけか? でも、夢を叶える為の良い財産になると思うけどな、きっと」
竜司のその言葉を聞いた時、新は大きく心を揺さぶられた。自分の夢の為。ここに来るまで、自分に言い聞かせてきた夢という言葉。それを改めて誰かに指摘され、戸惑っていた。ましてや、その相手は実際に近い将来、自らの夢を叶える人物。その事実は、より一層新の感情を昂らせる。
「竜司に……何が分かるのさ! 勝手なことばかり言わないでくれ! あぁ、どうにもならなかったんだよ!」
高校生の時のように、あの頃の親友として振舞おうとしていたのに、気が付けば七年後の惨めな自分が溢れ出していた。そして、今まで誰にも言わずに抑え込んでいた後悔が、言葉となって止まらなかった。
「逃げ出したんだ、一度迷ったら……道なんて、もう見つかるはずがないんだ。無駄に時間を浪費して、何も成し遂げられない、何者にも成れない奴だっているんだよ……でも竜司、キミは違う! 思い描いた道を、迷う事も無く歩いていけている人間なんだよ! だから、オレの気持ちなんて分かるわけがないだろ……!」
ついにやってしまった。あの時のような失敗を繰り返すまいと、言わないと決めていたはずの、竜司への言葉が止めどなく溢れた。はっ。と我に返った時にはもう遅く、竜司は目を見開き、驚いた顔をしている。
だが、はっきりと言葉にして気が付く。この感情は、決して怒りなどではなく、羨望だという事に。テレビで脚光を浴びていた俳優が、迷いなく自分の道を進んでいける男が、夢を共に語り合った親友が、ただ羨ましかったのだ。だとするならば、当時も、そして今この瞬間も、竜司への叱責はただの嫌味、嫉妬でしかない。本当に責めなければならなかったのは、自分の脆く弱いこの心だったのだ。そう思うと、次に出てくるであろう、竜司からのどんな罵倒の言葉も受け入れるつもりだった。
「何を言い出すかと思えば、らしくもない事を言うなよな」
だが新の予想に反し、竜司は笑いながらそう言った。
「大体よ。人のホントの気持ちなんてさ、誰にも分かるわけがないだろ? それが分かってたら世界はつまらねぇし、新がやってる芸術だって面白くなくなるだろ? それに、俺もまだ夢なんて叶えちゃいない。だから、もしかしたら、途中で俺はまた夢を見失うかもしれない……覚えちゃいないかもしれないけどよ――『悩んだり、苦しんだりするからこそ、きっと最後には笑えるんだ』って、お前が言ったんだぜ?」
(…………! そうだ……思い出した)
その言葉を聞かされ、とある日の光景がフラッシュバックする。
『――でも、俺は周りの人が言うような人間じゃねぇんだよ……自分がどうなりたいかも分からなくて、考えないようにする為に、ただ続けてきただけなんだ。でも今になって、もっと他にできること、やりたいことがあんじゃねぇかなって』
それは、記憶にある中で竜司がこぼした最初で最後の弱音。
『演劇の事はよく分からないけど――オレは、悩んで苦しむから、最後に笑えるんだって思うよ。そりゃあ、ホントに最後には笑っていられるかなんて分からない……でも、分からないなら、確かめてみないと――最後に何が残るのかを!』
未来を信じて疑わない、真っすぐだった過去の自分の言葉。
「俺は自分の道を、全部確かめてやる。たとえ叶わないとしても――その時は新しい形で、夢への道を見つけるさ。それでよ、その度にお前は、新しい夢の話を笑って聞いてくれるんだ。たったそれだけでも、俺は笑っていられると思うし、そんな馬鹿みたいな話でさえ、新の夢の糧になるなら最高じゃねぇか! だから、どんな形であっても、お前は絶対に夢を叶える。そう信じてるんだ」
そして竜司は、迷いを見せる新を真っすぐに見据えてそう語った。彼が、役作りの参考にする為に様々な物事に触れているのは知っていた。そして、色んな人と関わり合い、積極的に交流して自分なりの価値観を作り上げていった事も。だが、その価値観の構築には、新の言葉が大きく関わっていた。その事実を言葉にして突きつけられ、七年に渡る自分の苦悩が少し報われたような気がした。
「いつまでも悩んでたってしょうがねぇ。もし万が一、本当に夢を諦めちまう程にお前が迷ったって言うなら、俺が新しい道を見つけてやる。だからその時が来るまではさ、本気で頑張っていこうぜ。な、新!」
「……うん。もう、忘れたりしないよ――ありがと、竜司」
新しい道。今まで、考えたこともなかったその言葉と、こんなにも不甲斐ない自分に対する、お節介なまでの竜司の信頼に応えてみたい。今すぐに自分を変える事は出来なくても、ここで、この世界でなら何かを見つけられるかもしれないと、新にはそんな予感がしていた。
「よし。飯でも食うか」
それから、まるで本当に高校生の頃に戻ったかのように、二人で馬鹿な話や昔の出来事をつらつらと話しながら昼食を食べた。そして、下らない話をしていると昼休みは既に残り十分を切っていた。
「あ、それでよ。文化祭のやつ、何やるよ? クラスの皆は営業に回すから、二人で出来るやつな?」
「二人で、って……竜司も手伝ってくれるの⁉」
「あぁ? そんなん当たり前だろ、お前一人だけに負担は掛けさせねぇよ」
新にとっては、意外な発言であった。だが、そこでようやく先ほどの激励と合わせて、あの時の竜司がしていた表情や言葉の意図を察する事が出来た。
(竜司は、最初から信じてくれてたんだ……いや、でもそれならその時にそうだと言ってくれれば良かっただけのような気も……)
長年に渡って心に残り続けていた蟠りの真実は、実に呆気ないものであった。こんな事に苦しんでいた自分が馬鹿みたいであったがその反面、竜司の欠点と呼ぶべき『言葉足らず』というところには反省をしてもらいたいものであった。
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