第8話 彼のためなら
暗い部屋の中でひそひそと話し声が聞こえる。
声からして女性だろう。
しかしおかしなことに会話らしきものをしているのに、声は一つしか聞こえない。
「さすがだね~相沢君は。ロシアで女の子1人を堕としてくるなんて。恐れ入るよ。しかし、また女が増えたね……邪魔だな~ボクと相沢君の世界には卑しい雌豚はいらないんだよ!また処分しなくちゃならないじゃないか。全く大変だね~。」
彼女?
と、言うのが正しいだろうか?
そんな彼女の足元には赤黒く光る怪しい液体が散らばっている。
それは血なまぐさかった。
おそらく血だろう。
私はどこかもわからない部屋にいる。
どこかわからない部屋で床には血とみられるものが溢れている。
暗くてよく周りが見えない。
せいぜい見えても自分の手と床が限界だ。
そんな中一人暗闇で狂気的な話を聞いているのだ。
想像してみてほしい。
もしあなたならどうする?
私は今にも発狂してしまいそうだ。
そんな中声一つも上げないでいる。
いや、正確には上げられない、といったほうが正しいだろう。
実際に脅され、その上リスカまがいのものをされ、心も体もボロボロだ。
私が何をしたっていうんだ。
あの人は『自分胸に手を当て考えてみな』と、ドスのきいた声で言ってきた。
よし!実際に胸に手を当てみる。
うん。
大きい。
自慢じゃないが私の胸は結構大きいほうだ。
って、いやいやそうじゃないだろう私。
それは今やることじゃないだろう。
こんな無駄なことを思案する暇があるなら、とっとと考えろ。
……ん?
さっき相沢君って言った?
もし相沢君が私の想像している人で合ってているのなら彼女に何の関係があるのだろうか?
私がひそかに好意を寄せていた彼に何の関係があるのだろうか?
だが私にはその恋は実らないとわかっていた。
だって彼はスクールカーストの最底辺。
私はスクールカーストの最上位に立っている。
だからひそかに思いを寄せて楽しんでいたのだ。
あの女が部屋に入ってくる。
「で、何か思い当たることはあったのかな?」
彼女はとてもやさしい声色で話しかけてくる。
怖い。
とても怖い。
彼女の表情は笑っているが、目が笑っていないのだ。
考えてもみよう。
優しい笑顔と声色で迫ってくる美少女?がいる。
普通なら大変喜ばしいことだろう。
だがしかし、この場面でそれはとてもおかしいと言わざるを得ない。
床には血、暗い密室、笑ってる顔なのに笑ってない目どこからか光を浴びて輝いている凶器とされるもの。
これ以上の恐怖はない。
おまい当たること……
まさか、まさかまさかまさかまさか……
あの人が関係しているのか?
「はぁ、君はいつもそうだ。自分の犯した罪を理解していない。例えば昨日の0時20分彼を想像して致していたね。それに2021年8月17日の3時27分ちょうどから3時28分58秒の1分58秒の間にかけて彼を発情したような雌犬の目で見ていましたね。そこには多少目を瞑るとしよう。しかし、その後の行動が問題だ。私達はすぐに好意を露わにして彼のためならどんなことをしてもよい、という覚悟して行動してるのに君は行動に移さずにずっと傍観してた。それが問題なんだよ。行動すれば見逃したのに……覚悟はいい?」
彼女は淡々と話していく。
軽く漏らしそうだ。
「だったら何だっていうのよ?」
私は我慢できずに叫んだ。
「だから?って、笑わせないでくれよ。気が行動しないのが悪いんだから……せめて死に際だけは綺麗に、そして彼のことを思いながらしんでくれ。」
は?
今こいつなんて言ったんだ?
死ぬ?
この私が?
この私が死ぬなどあってはならない。
まだ、私が彼に思いも伝えてないのに……
「じゃぁ、もう準備できたよね?最後の態度では救ってあげないこともないけど?」
その言葉を聞いて私にやる気が出た。
「お願いです、助けてください。何でもしますから……」
しまった。
何でもやるは言い過ぎた。
でも、助かるにはこうすること以外何もないのだ。
「う~ん?今何でもするって言ったよね。何してもらおうかな~」
私の背中に悪寒が走る。
「でも残念!その態度は失敗だよ。じゃぁ、死んでね!」
彼女はいい笑顔でいった。
笑顔とはこれほどまで怖いものだっただろうか?
「いや、やめてよ。お願い助けてよ。お願いだから……」
私は泣きながら懇願した。
「その顔はそそるけど残念!無理なんです。」
私の中に渦巻く感情は希望から絶望になっただろう。
「君は彼なための行動を起こせなかった。それが最大の過ちだよ。」
「いや、やめてよ。やめて。やめて、やめて、……」
ぐしゅり
そんな
床には赤い液体が滴る。
おそらく血だろう。
赤く染まった服を着ながら彼女は微笑む。
「これで彼にまとわりつく羽虫が消えた。これで私たち以外の邪魔者はいない。」
彼女は笑いながら言った。
次第に表情が変化していきとても残酷な、遊び飽きたおもちゃを見る子供のような顔で言った。
「はぁ~、このゴミどうしようかな。どこで処理しよう。っていうか名前なんだっけ、たき、たきぐち、そうだ、滝口だ。いや~、思い出せてよかった。
まぁいいや。」
彼女は恍惚とした笑みを浮かべる。
そして自分の下腹部に手をあてがいよだれをたらしながら
「今日はいいオカズもできたし帰って致すか」
彼女がどこの誰かはわからない。
そして私がどこで殺されたかもわからない。
ただ一つわかることがあるとするのならばそれは……
私が死んでもなお彼を思っていることだろう。
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投稿遅れてすいません。
これからは1週間に1回は投稿するようにしていきます。
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