第4話

 面会時間が終わって数時間が経った。


 外は空気が澄み渡り、雲ひとつない、月が綺麗な夜空だった。


 意識を失っていたこずえは、やっと暗い所から出ることができた。


 (どこや、ここ?)


 こずえは、窓から一番近いベッドの上で視界に拡がっている、見たことの無い白い天井をながめている。


 すると横から涼しい風が、サーっと、顔を撫でた。


 こずえが寝ているベッドの左横にある、間仕切りカーテンがヒラヒラ揺れている。


 その風にあたったことで寒さを感じたので、こずえは、開いている窓を閉めるためにベッドから降りようとした。


 しかし、全身にズキズキと痛みが走って、上半身すら起こす気がおきなかった。


 (そうや。私、信号無視してもうて、オートバイ──バイク──とぶつかったんや。ほんで、ここはたふん病院やな。)


 こずえは、なぜ自分がここにいるのかを思い出した。


 そして、生きていたことに一安心した。


 でも、強く打ちつけた頭、り傷ができた腕や脚に包帯が巻かれている。まるで、ミイラになったような気分だった。


 そのまま、再び寝てしまおうかと思ったが、やはり窓から入ってきている風が寒い。だからこずえは、痛みに耐えながら何とか上半身を起こして、寝ていたベッドに座った。そして、涼しい風が入ってきている窓を眺めた。


 すると、そこに、今まで気づかなかったが人影が見えた。誰かが立っている。


 その人は、あごを少し上げ、黄色く輝いている月を見ていた。


 腕や脚に、こずえと同じく包帯を巻いている。


 こずえは思った。


 おそらく、オートバイを運転していたのはこの人だろうと。


 でも確信は無かった。なんせ、ここは病院で、包帯を巻いている人がいてもおかしくない所だ。


 だから、本当にそうなのか確かめるたに、こずえは恐る恐る話しかた。


 「あのう・・・・・・。」


 この時、何か、自分の声に違和感のようなものを覚えた。


 こずえの声に反応して、窓際に立っていた人が直ぐに振り返った。


 しかし、その人の後ろから差している、月光で顔がよく見えなかった。


 でも、正面から見たその人のシルエットは、最近どこかで見たような気がした。


 でも、それをどこで見たのかは、思い出せなかった。


 声をかけられたその人は、こずえに近づいてきた。


 どんどん顔が見えてくる。


 「「え!!!」」


 どんな顔か確認するや否や、こずえは、今まで生きてきた中で、間違いなく一番と言えるほど、仰天ぎょうてんした。相手も同じように驚いている。


 「なんで、私が目の前におるん!?」


 「なんで、ウチが目の前におるんや!?」


 こずえの目の前にいたのは、なんと、こずえと姿かたちが全く同じ人物だった。



         ◇




 奇妙きみょうなことに、こずえとこずえは、事故にあって、お互いのたましいが入れ替わってしまった!

 


 

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