第189話 姉の代わりにVTuber 189


 ◇ ◇ ◇ ◇


一悶着起こした穂高(ほだか)は、教室を後にし、やるべきことがある穂高は、自宅ではなく別の場所へ向かうつもりでいた。


「ちょ、ちょっと、穂高君ッ!?

どうしちゃったの急に?」


少しだけ速足で、昇降口へと向かったいた穂高は、校舎を出る前に、愛葉 聖奈(あいば せな)に捕まる。


聖奈は急いで来たのか、少しだけ息を切らし、穂高を心配そうに見つめていた。


「――聖奈か。

いや、どうしたも何も、流石に連日で嫌気が差してな」


「い、嫌気って……、らしくない……。

穂高君、多少の事なら周りに合わせて、荒波経たないようにするのに……。

口調だって、いつもみたいに丁寧じゃ無かったし」


聖奈に呼び止められた穂高は、一先ずその場に立ち止まることは止め、再び歩み出し、穂高が動いたことで、聖奈も穂高の歩調に合わせ、隣を歩く。


「あ、あんな目立ち方したら、穂高君、クラスで浮いちゃうよ!?」


「まぁ、浮くだろうな……。

明日の学校の雰囲気とか、想像するだけで嫌になるな……」


「だったら、どうして…………」


悲しそうに呟く聖奈の姿を見て、穂高は意外だと内心、思いつつ、聖奈の言葉に答える。


「クラスで浮く、悪目立ちするよりも、もっと嫌な現状をどうにか脱したかったからな……。

聖奈がどういう風に、俺を捉えてるのかは知らないけど、別に悪目立ちしない事を、最優先にして、日々を過ごしてるわけじゃないしな」


穂高の言葉を聞き、聖奈は、穂高が現状、最優先としている事を訪ねようとするが、穂高は続けて話し、今度は聖奈に質問を返す。


「どっちかっていうと、考え方は聖奈に近いと思うぞ?

自分がやりたい事を最優先に、周りも目は気にしない」


「――え?」


穂高の言葉に、聖奈は目を丸くし、聖奈の反応を見て、穂高は自分の考えを疑う。


「あれ? 違ったか??

聖奈の見た目を見ても、ちょっと派手だし……、その……、言わば、不良? みたいな??」


「ふ、不良!?」


聖奈は、穂高に不良だと思われた事に驚いた。


「ふ、不良じゃないでしょ!?

まぁ、ちょっとギャルっぽいというか、他の子よりは、遊んでそうな見た目である事は認めるけど……」


「ウチの学校では、真面目な生徒が多いし、その見た目でも十分、不良に見えるよ……」


穂高の言葉を完全否定する聖奈に、穂高は苦笑いを浮かべ答えた。


「わ、私、別に浮いてるつもりないし……、この格好だって、私が好きだからしてるわけで……。

私の友達もみんな、見た目は派手じゃん! 浮いてないって」


聖奈の認識では、クラスで浮いているつもりは無く、クラス内に友達もいる為、穂高の指摘はピンと来ていない様子だった。


「――まぁ、確かに浮いては無いか……?

いや、でも、クラス全体で見てもやっぱり、聖奈の団体は目を引くと思うけど…………」


穂高は、聖奈との認識の違いに戸惑いつつ、独り言を言いながら、思考を続けた。


「って言うかッ! 私の話はどうでもいいんだって!!

穂高君だよ! 問題は。

このままじゃ、クラスで孤立しちゃうよ!?」


「――孤立??」


「そうだよ! 孤立!

完全に、穂高君が悪者みたいな雰囲気だったし……」


当人の穂高に危機感が見られず、聖奈の方が焦っている状態になっていたが、聖奈に明言されても尚、穂高の反応は変わる事が無かった。


「――意外だな、聖奈がそんな事を心配してくれるなんて……」


「は? 普通でしょ!?

誰だって、クラスで孤立するのは嫌なんだから」


危機感が無い穂高に、苛立ちを感じ始めた聖奈に対し、穂高は聖奈の言葉を聞き、ようやく自分が思う聖奈と、目の前に聖奈の違和感に気が付いた。


「聖奈もそんな風に考えてたりするんだな。

――聖奈は、自分が好きな物、譲れない物があるんだったら、自らはみ出して行く……、そんなタイプの人だと思ってた」


穂高は、短い期間であったが、ここ数カ月、聖奈と接している中で、聖奈と自分が、どこか似た物同士だと感じる部分が多くあり、穂高の話したその言葉は、その中でも大きく自分と似ている部分だと、そう思っていた。


「そんな風に考えてたりって……、あ、当たり前でしょ、そんなの……。

私だって、今の友達が同じように派手な見た目じゃなきゃ、周りに合わせてただろうし。

誰だって孤立するは怖いでしょ…………」


恥ずかしそうにそう呟く聖奈を見て、穂高は吹き出す様に笑った。


「なッ! 何が可笑しいんだよッ!?」


笑い出した穂高に、すかさず噛みつく聖奈に、穂高は笑いを堪えながら、聖奈に話始める。


「ごめんごめん!

あまりにも、俺が今まで思ってた聖奈とイメージが違ったから」


「むッ…………。

だからって、そんな笑う事無いだろ」


依然として不機嫌な聖奈に、穂高はようやく聖奈という人間の本質が、見えたような気がして少し嬉しく思いながら言葉を返す。


「意外と可愛い所あるんだな? お前」


「――ッ!? はッ! はぁぁあああッ!?!?

ふ、ふざけんなッ!」


ニヤニヤと笑みを浮かべる穂高に、聖奈は顔を真っ赤にして、怒りを露にした。


「いつも、俺を揶揄ってくるんだから、日頃のお返しだよ」


「きッ、気軽に可愛いとか、言うな!」


普段の聖奈が、猫を被ってるというわけでは無いが、目の前で慌てふためく聖奈は、いつもの様子と違い、穂高の目には少し新鮮に映った。


「――――っていうか、どうすのよ? これから……。

クラスでは浮いちゃうし、あんな喧嘩別れみたいな事しちゃ、練習の雰囲気も最悪じゃん」


少しの間、穂高と聖奈は、本題から離れた会話を交わしつつ、校舎を出た時には、聖奈が再び話題を戻した。


「別に何も考えてなくて、あんな事言ったわけじゃないよ?

練習の雰囲気をぶち壊した責任は取るつもりだし……」


「せ、責任取るって……。どうするの??」


「これから、本来練習を受けるべきであろう人物の家に行く」


「え?」


穂高の返答は、抽象的であり、穂高の考えが見えない聖奈は、困惑した様子で、声を上げた。

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