第24話 姉の代わりにVTuber 24
リムの配信が始まり30分後。
リムの作ったサッカーチーム『チューンコネクトウォーリアーズ』は、初めての試合を行っていた。
「さぁ! みんな!!
遂に初戦だよッ!! これはみんなの意見で育成してきたチームだからね!!
負けたら100%傀儡(かいらい)のせいだから!」
勘弁してくれ、こいつらの初期ステータス低すぎて責任負えないわwww
チームキャプテンの賢さ、結局Gだったなww あれだけ賢さを上げるトレーニングをさせたのに……
キャプテンも酷いけど、フォワードもやべぇだろwww 勝てんのか?wこれ
リムのリスナーは不安を抱えたままだったが、リムの操作により遂に初戦が始まる。
そして、結果は6-0の完敗に終わった。
「ちょ、酷いって君達ッ!!」
試合中もあまりの弱さに笑いが絶えない試合だったが、その興奮も冷めやらぬまま、リムは笑いをこらえながらリスナーを指摘する。
いや、どう頑張っても初戦はこいつらじゃ無理だろwww
ガチャ失敗だよ!ww もう一回チームを作り直した方がいいww
6-0の試合をしてなお、レッドカード三枚出る始末www
キャプテン前半で退場は笑ったわ
「酷いよこれ……。
もうシーズン始まっちゃったけど、どうすれば」
リムは笑いがやっと引っ込み、それでも現状が最悪なのは変わらず、完全に手詰まりな状況だった。
す、スカウトだッ!! スカウトしかない
助っ人外国人を大量に投入しようww
もうそれ、日本のサッカーチームじゃなくなるだろwww
「スカウトか…………。
もう、トレーニング施設でお金結構使っちゃってるんだよな~~。
でも、このままじゃ勝てないし……、スカウト見てみる?」
スカウトはチームの名声と、秘書の能力に比例して良い選手が来たはず……
日本の他のチームからもスカウトできるし、社会人チームとか、高校生とか見てみるのもいいんじゃない?
「なるほどね~~。
あッ! 三人いるよッ!?
松井(まつい) 小林(こばやし) 菅野(すがの)。
どれがいい?」
リムはカーソルを動かしていき、リスナーが選びやすいように選手の詳細を見せていく。
松井は総合能力Dかぁ~~ この中だと一番能力高そう
菅野は総合能力Fで、なんでプライド高いねんwww 100%地雷やろww
小林も体力鬼低いなww 走れんのか? こいつ
リムのリスナーは初戦の事もあり、評価が厳しめになりつつあり、コメントを見る限りでは、松井が優勢であった。
「え? じゃあ、松井にする??
でも、松井年俸高いよ!? 大丈夫??」
でも『チューンコネクトウォーリアーズ』を勝たせるには、これしか……
他二人よりはマジだし、取るしかない
松井! 給料泥棒なら即刻クビにするからなッ!!
相も変わらず、神経質になりつつある傀儡達は、多少お金がかかったとしても、チームが勝利する事を優先した。
こうしてリムは、スカウトを終え、ゲームを進行していくと、突発的なイベントが起こる。
「あぁッ!! 松井がケガしたッ!!!」
おぉぉぉぉいいいぃぃッ!!! 松井ぃぃぃいいいッ!!!
何なんだこのゲームwwwwww
呪われてるでしょ、このチーム笑
リムの絶叫と共に、リスナー達はコメントを続々と書き込み、ものすごい勢いでコメントが流れていく。
「ちょ、ちょっとヤバいってみんなッ!!
二試合目近いのにッ!」
もう笑うしかない状況に、リムは笑みを零しながら傀儡に責任転嫁をする。
「ちょ、ちょっと、高いけど外国人呼ぼう!!
どこの国がいい??」
ブラジルッ!!
アルゼンチン
イタリアッ!
リムが質問をした瞬間に、コメント欄は物凄い勢いで流れ始め、国名だけのコメントで文も短い為、流石に穂高も追いきれなかった。
「わ、こ、コメントが…………」
リムは苦笑いをしながらも、外国人助っ人を取る為に操作を勧めていくと、その瞬間コメントが落ち着き始めた。
「――――あ、ごめん。
国はまだ選べないや……。
でも、また来てくれそうな選手が三人いるよッ!」
リムはそう言いながら各選手の詳細をリスナーに見せていく。
聞いた事ない国ばっかだな…………
ボリビアってどこだよ! そもそもサッカー強いのか??
駄目だ……、どの選手も能力が低いwww てか、年俸たっかッ!!
「これ、誰取ればいいの?
ちょっと、もう嫌な予感しかしないんだけど……」
リムは再びそうこう言いながら、結局外国人をスカウトし、二戦目に挑んだ。
そして、結果は4-0でまたも敗退。
やべぇだろwww こんな勝てないものか??
サッカー詳しくないけど、酷い試合だったのは分かった
4点中、1点はオウンゴールだからな?ww ヤバすぎるwww
「あッ!! なんかヤバいッ!! イベント始まった!」
敗戦濃厚でもあった為、リムは初戦よりは気を落とさず、ゲームを進めていくと、再びイベントが起きる。
「なんか、新しく取った選手のポールとキャプテンの仲が悪いって……。
嘘…………、ポール練習来なくなったんだけどッ!?」
お、終わりだwww
どんだけ統率取れてないんだよwww
もうこれ、監督のせいだろww
その後もリムはリスナーとゲームに振り回されながらも、4時間にも及ぶ配信を行った。
「いや~~、もうなんか疲れたね…………」
リムは笑い疲れた部分もあったのか、少し憔悴した様子でリスナーに語り掛ける。
でも、最後の方は何試合か勝ててたな!
最初は絶望しかなかったけどww
ポールとキャプテンの仲の悪さが悪化して、キャプテンがチームを去る流れおもろすぎだろ
初めて勝った時、俺興奮したわ!!
Wカップではしゃぐ人の気持ち、ちょっと分かったわ笑
「まったく、やっぱり傀儡に任せるとろくな事にならないね!」
あれはゲームと松井が悪い
結局、松井活躍してないしなww
面白かったけど、なんでリムちゃんはこのゲーム配信しようと思ったの?
沢山の振り返りのコメントの中、少し毛色の違ったコメントが流れ、穂高はそれを見逃さなかった。
「このゲームが面白いのは知ってたし、リスナーと一緒にやったらさ?
なんか、みんなで一緒にゲームしてるみたいで楽しいかなって思って。
それにさ、流行りのゲームなら私じゃなくても、他のメンバーがやってるでしょ?
いくら流行ってると言っても、皆がみんなそのゲームを配信してたら、
見てるのも疲れちゃうだろうし……。
一人くらい、意味わかんないゲームやってても面白いでしょ??」
おもろかったぞ!! またやろう!!
リムちゃんのソロ配信初めて見たけど、リムちゃんって結構リスナー思いなんだね!
リムは、傀儡呼びをするツンデレだから……
途中こっぱずかしいコメントも流れたりしたが、リムは無事配信を終え、穂高は手ごたえのようなものをこの配信で感じていた。
「ふぅぅううう~~、疲れた………」
いつもよりも疲労が溜まった配信を終えた穂高は、ベットに大の字で倒れこんだ。
(今まで、姉貴がやってきた配信をなぞる様な配信ばっかりだったけど、こういうのもいいな……。
姉貴のリムは、どちらかと言えば自分からアクションを起こして盛り上げる配信だし、こういうちょっと受動的な配信は合わないかと思ってたけど…………)
穂高は、今日の配信は少し疲れはしたが、それでもいつもよりも配信がしやすく、リムの引き出しを増やせたようにも思えた。
(あの姉貴なら復帰しても、このスタイルは簡単にマネできるだろうし……。
逆に姉貴みたいに一人で完結させられるような配信、あるいはリムが一番得意なコラボが封じられている以上これでやっていくのも全然ありだろうな…………)
穂高はそんな事を考えながら、初めてのチャレンジでもあった為か、段々と眠りに落ちていった。
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