第17話 姉の代わりにVTuber 17
◇ ◇ ◇ ◇
松木駅 付近 ズポッチャ。
穂高(ほだか)達は集合場所に全員が着くと、駅から車で10分のところにある、大型ショッピングモールへバスを利用して向かった。
そして、ショッピングモールに着くなり、一行は今日の目当てであるズポッチャへと向かうと、多数決を取り、全員参加のボーリングを行うこととなった。
「やったッ! またストライクッ!!」
春奈(はるな)は気持ちの良い音を立て、並べられたピンを全て倒すと、振り返りながら満面の笑みでガッツポーズを決める。
そして、春奈はそのまま戻ってくるなり、組み分けで同じ組になった彰とハイタッチを決める。
ストライクを決めたことで、盛り上がる中、武志(たけし)は死んだ顔で呟いた。
「――なぁなぁ、なんで俺はお前と同じなチームなわけ……?」
話し合いの組み分けの結果、運悪く武志は目当ての女子とチームを組めず、瀬川(せがわ)と穂高という男だらけのチームになっていた。
「しょうがねぇだろ? 力量を同じにする為にこういうチームになったんだから……」
「俺は気を使わないで済むから、これでよかったと思うけど…………」
穂高はつまらなそうに、デカデカと表示されたスコアボードを見ながら答え、瀬川はほっとした様子で続けて答えた。
穂高たちは、1ゲーム目は個人戦で競った後、二戦目はチームに分かれ、ボーリングを行うことになっていた。
そのチーム分けとして、一試合目のスコアが基準となり、上手い人と下手な人、そして実力が中くらいの人とがチームを組んでいた。
「なんで、気が使えないかなぁッ!? 君たちはッ!!
個人戦で3位だった瀬川と4位だった穂高は、もう少し気を使って順位を操作すれば、チームがもっとッ! なんか良い感じになっただろッ!?」
「そんな事、俺らに言われてもな……。
なぁ? 瀬川……」
「そうだな…………。
――ってか、ずっと気になってたんだか、なんだよそのサングラス…………。
気合の入り方が妙だろ……、学校でのキャラと合ってないし、まず似合ってないだろ」
瀬川と穂高は、今日彰に言われたように、上手く大貫(おおぬき)と若月(わかつき)が、女子と同じ組になれるように、狙った部分もあったが、そこまで強く修正しなくとも、ほぼ実力に近い形で、この男だらけのチームになっていた。
「似合ってんだろ! てゆうか、なんか有名なハリウッドスターも付けてたから、似合わないはず無いんだよ!
スターが付けてんだから…………」
武志の暴論に瀬川は遂に呆れ果て何も言い返すことが出来ず、思わずため息を零す。
チームは、1チーム3人と4人で構成された。
個人戦で1番の成績を収めた、彰と5番目のスコアの春奈、そして最下位となってしまった菊池 梨沙(きくち りさ)が同じにチームになり、2番目の成績だった大貫(おおぬき)、6番目の若月(わかつき)、そして残りの桜木高校四天王の二人(四条 瑠衣(しじょう るい) 一ノ瀬 燿(いちのせ ひかる))が大貫たちのチームへと加わっていた。
「親睦会なのに…………、おかしいよ……絶対……。
何か間違ってるよ、こんなの…………」
「何を期待してたんだか…………。
第一、女子と同じチームになりたければ、もう少しお前もスコア頑張ればよかったろ??
下から2番目だぞ? ボーリングいかないわけじゃないだろ?
俺らとも行った事あるし……」
依然とめそめそと呟く武志に、穂高は若干面倒に思いつつも話を振る。
「俺はお前らみたいに、ボーリングがそこそこできるわけじゃないし。
それに、どうしたって力が入るだろ?? 良いとこ見せたいし?」
武志の下心丸出しで挑んでいた心境を聞き、穂高もこれ以上武志に構うのは時間の無駄だと察し、せめて、他のチームの雰囲気までも悪くしないよう、そしてゲームが盛り下がらないよう気合を入れた。
「瀬川……、スコア開けてきてるよな? 俺らと他チームで……」
「そうだな……、1ゲーム目より松本以外調子が上がってきてるし、中でも杉崎さんのスコアの伸びが凄いからなぁ~~。
俺らのチームはデカいお荷物がいるし、頑張らないと……」
「んん~~~。
ちょっと、ローテ変えるか?? このゲーム俺の方が調子良さそうだし、俺が投げた後、瀬川投げれるか?
ストライクの後、投げた方がいいだろ??
それで最後、足手まといに投げさせれば」
「わかった」
武志は酷い言われようだったが、意気消沈している武志の耳にはその言葉は届くことなく、二人で作戦を決めると、穂高はすぐに行動を起こした。
「な、なぁ、みんな?
ちょっと、悪いんだけど、勝つためにも投げるローテを変えてもいい?
スコア差開いてるしさ? 頼むよ……」
穂高はできる限り気さくに、社交的に盛り上がるほかのチームにそう呼びかける。
「え? んん~~、しょうがないなぁ~~。
いいよ! ローテ変えたくらいじゃ負けないからねぇ~~!」
「ははッ……、あ、ありがと……菊池さん…………」
一番スコアの悪い梨沙に上から目線で言われ、穂高は若干イラっと感じはしたが、あくまで平和的に、話しかけた気さくさのまま、礼を告げた。
「天ヶ瀬って……、女子と絡むの苦手なくせに意外と行動力あるよな……。
盛り上がってるとこに声かけるとか、俺には無理だ…………」
「瀬川は気にしすぎなんだよ……、ってゆうか、こうゆうのって俺よりも、お前がやるべきなんじゃないのか?
瀬川に話しかけられた方が嬉しいだろ?」
「なんだそれ、偏見だろ……」
モテる事をよく穂高や武志にからかわれる瀬川は不服そうに呟き、2ゲーム目も5巡目を回っていたが、再度、瀬川も気合を入れなおした。
◇ ◇ ◇ ◇
穂高達はひとしきり、ボーリングを楽しみ、計5ゲーム遊んだところで、今度は他のスポーツへと向かっていた。
その中で、10人という大人数でもあった為、スポーツでも様々なものに分かれ、そして、バスケに6人、テニスに4人と別れ、数時間が経ったときだった。
テニスの方に分かれた穂高は、休憩を提案し、近くの自販機へと向かっていた。
ガタリと大きな音を立てて落ちるスポーツドリンクを、しゃがみ手に取ると、同じく休憩を取っていた春奈がそこに現れた。
「あッ……、天ヶ瀬君。
天ヶ瀬君も休憩??」
「ん? あ、あぁ……。 バスケ組も休憩なんですか?」
春奈とか違うスポーツに分かれた穂高は、自動販売機に来た春奈を見てそう推測し尋ねた。
「まぁね……。
――っていうか、なんで敬語? タメでいいよ~。
そっちは? テニス、どう?」
穂高の敬語に笑みを零しながらも、春奈は気さくに穂高に話しかけた。
あまり話した事もない相手、しかも二人きりな為、余計に気を使わないよう、初対面の人と話しやすい敬語を選んだ穂高だったが、その話し方は春奈から却下され、相手に不快感を与えないよう話し方に、妙な気を使いながら、穂高は答える。
「四条さんが無双してるよ……。
こっちは何とか、手を少し抜いて貰って、一ノ瀬さんと付いて行ってるって感じ」
「あぁ~~、やっぱり瑠衣(るい)を止められないか……」
バスケとテニスに分かれる際、テニスは基本的に経験者が占め、穂高も中学生の時はテニス部に所属していた為、同じくテニス部に所属していた彰とテニスを行うことになっていた。
逆にバスケは、高校、中学等で体育で行う為、未経験者もそちらに向かう事となり、経験者は瀬川と春奈、大貫と三名が含まれていた。
「さっきのボーリングでも思ったけど、天ヶ瀬君って意外とスポーツできるよね?
1ゲーム目、私の調子も本調子じゃなかったとは言え、負けちゃったのは悔しかったなぁ~~」
「得意じゃないよ……。結局、杉崎さんに勝てたのは最初の1ゲームだけだったし……。
テニスにしたって、やってただけで上手くないしね……」
「そうかな……? バスケもやってたんでしょ??
彰君に対しても思うけど、いろんなスポーツやっててすごいなぁ~~って思うけど……。
スポーツに限らず、釣りとかもよく行ってるんでしょ??」
自己評価が低めな穂高に、春奈は不思議そうにしながら答える。
「彰も俺も長く続かないだけだよ……。
バスケにしろテニスにしろ、半端者だよ……。
それに比べてずっと続けてきて、結果も出してる四条さんは凄いと思うよ」
「あぁ~~、瑠衣はねぇ~~、それは私も思う。
テニスが生きがいって言ってたし、プロになれなくとも、大人になってもテニスを続けてると思うよ?
多分……」
親友の瑠衣を話す時、春奈はどこか楽し気に、途中笑みを零しながら話し、瑠衣を尊敬しているような雰囲気も感じられた。
「あんまり関わった事ないから知らなかったけど、四天のッ……、杉崎達はホントに仲良いんだな。
男子の大貫や若月……、今日は来れなかった霜月(しもづき)とも仲良さげだし……。
よくクラスの皆も理想の青春だって噂してるよ?」
「理想の青春か……」
穂高は褒めるつもりで春奈に告げたが、春奈は穂高の言葉で表情を少し曇らせ呟いた。
穂高はそんな春奈の様子に勘づいたが、それについて込み入った追及をするつもりもなく、彼女には彼女なりの輝く、羨まれる者なりの悩みがあるのだと、そう思った。
(彰も何か今の関係に思うところがあるっぽかったし……、陽キャラとモテはやされる杉崎達にも何かしら人には言えない悩みや苦悩があるんだろうな…………。
まぁ、俺には立場が違いすぎて関係の無い話だろうけど)
「そういえば? 武志……、松本は大丈夫か?
あいつ、今日なんか変に気合入ってておかしくて……。
キモかったり、ウザかったりしたらはっきり言っていいぞ?
俺達も誘ってもらった立場だし、変に気分悪くして今日を終えてほしくないからな」
穂高は春奈の苦悩に同情しながらも、話題を変え、バスケ組に行った武志の話へと話題を移した。
「あ、あぁ……、松本君か……。
う~~ん、確かにちょっと気合入りすぎだったかもねぇ~~。
――でも、大丈夫だよ! 今日も楽しいし、来てよかったと思うよ!!」
「そ、それは良かった……」
穂高は春奈から出た言葉にホッとしながらも、その言葉がお世辞では無い事を心の底から祈った。
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