所在/1
◇◇◇◇
「こちらが初めの事件、二番目に起きた事件のファイルです」
社長には会えず、禊と高橋は社長所有のマンションの一室に案内された。
マンションは外から確認したところ四階建で、案内されたのは三階。
ワンフロアごとに趣向が異なるスタイルが提供されているらしく、住民は住んでいるのかわからない。
ゴミ置き場は清潔に保たれ、内部に入る際に管理人とみられる男性とすれ違った。
軽く頭を下げてくれたので二人と、二人をここまで案内してきた秘書の女性は礼儀正しく頭を下げた。
それ以外は誰にも会わずビル内部のエレベーターに乗ったのでどういった目的で使用されているかは分からずじまいだ。
このビルの目的は愛人ですか?と、どストレートに聞くわけにもいかない。
諦めの顔がよく似合う禊が各階の説明を聞いている様子を上の空で眺めつつ、高橋は変なことが口から出ていかないよう息を止め、彼なりにできるだけ好奇心を抑えた。
三階はシックとモダンが組み合わさり、茶色とグレー色が配された落ち着ける色合いの家具で揃えられていた。社畜の立場である禊と高橋は部屋に入るなり目を輝かせた。
まっさきに感じたのは、天井が高い。
コーヒーマシンがあるバーカウンターには数十種類のお酒が並び、各メーカーのデザインボトルが煌びやかに照らされている。その下にはコンビニでよく見る開閉式のガラスケース。中には傾けられたワインボトルが見える。
キッチンはIHとガスコンロどちらも配備され、食材があればなんでも調理できそうな重厚感がある。部屋中央にはテーブルを囲むように大きなソファがあり、離れた所に一人用のロッキングチェアとエッグチェアがある。窓からは室外で日光浴でもできそうな広いベランダが見える。
「他の事件ファイルはそちらの棚にしまっていますので、必要であれば適宜。生活に必要なものは揃っていますので、ご自由に使用してくださって構いません。自宅には帰らず、生活拠点は本日からこちらでお願いします。自宅に物を取りに行くのも禁止です。必要なものがあればなんでも仰ってください。三階のこちらは事務所、お二人のお部屋は二階にあります。一階はガレージとなっています。生活に慣れてきたら、追加で説明させていただきますので、なるべく早く慣れてください」
言葉が滝のように天からザザザと流れていった。
秘書は無駄なことを何一つ挟まなかったが、言い終わった後に首を傾け、軽く微笑み「がんばってください」と応援した。
人の心を掴むところは、あの社長と似ている。
「「監禁じゃん」」
秘書は簡単な説明をしてから去っていった。
連絡事項があればメッセージでも電話でもなんでも聞いてくださいとのことだった。
サポートするから解決頼んだよ。そんな声が聞こえてきそうだ。
朝から喧嘩で体力を使ってしまっていた二人は適当なコップに配備されている浄水器から水を注いだ。
ソファに顔を見合わせる形で腰掛け天を仰ぎ、二人は言った。
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