『茶番劇兼進捗報告(読み飛ばし推奨)』


「音黒と」

「一斗の」

「「進捗代弁コーナー!」」


 ドンドンドン、パフパフパフ!


「あけましておめでとうございます!」

「あけおめじゃねぇんだよ駄犬丸」


 俺の目の前で、身体が小さく態度がデカい音黒せんせーが悪態をつく。

 この辺は新年になっても相変わらずか。

 どうでもいいけど、今年は寅年みたいですね。


「どーして、また私たちが謎空間で会話しなきゃなんねぇんだよ?」

「どうしてって、また原作者の代わりですけど…… 今回は新年のあいさつを兼ねて、進捗報告みたいですね」

「たしか、前回も似たようなこと言ってたよな?」

「あー、あとがきの時ですよね。今回もメンブレして同じ感じで任されてますけど」


 どうやら、またあいつ(原作者)はメンタルブレイクしているらしく、今回も我々の出番ということになったらしい。……あいついつもメンブレしてるな。


「はぁー、まあいい。なら、さっさと始めて終わらせるか。んで、進捗はどうなってんだよ?」

「ざ、雑に本題に入りますね…… えーっと、じゃあまずはファンタジア文庫の件から」


 とまあ、まずはこの件の報告からだろうな。


「そういや、ファンタジア文庫のHPは毎月見てるけどよ、あいつの名前とか見たことねぇぞ?」

「そりゃそうですよ。だって、この半年間、何も前に進んでないんですから」

「…………は?」


 だったら報告の必要なんてねぇだろ、という視線が俺をグサグサ突き刺さしてくる。あっぶねぇ、ゾンビでなければ即死だったかもしれん…… 知らんけど。


「えーっと、まぁ正確に言うなら、“成果だけ見ると何も進んでいない”ですかね」

「前回のあとがきで二巻を書いてるとか言ってなかったか?」

「ああ、あれですか。そうそう、あれは…………総ボツになったとか」

「メンブレの原因それだろ!」


 初稿を書き上げて担当氏に提出したのだが、これじゃダメだと切り捨てられたらしい。

 プロットから換算しておよそ二か月の時間が無駄になったとか。プロの世界は恐ろしいなぁ……

 まあ、ボツを宣告してくれるだけでもありがたいのだが。

 ダメなものをダメだと評価するのだって簡単じゃない。そういう意味では、あいつも担当さんに感謝しているとか。まあ、メンタルは耐えられていないみたいだけどな。


「まあ、そういうことなんで、今も新たなプロットを出して再挑戦の日々らしいです」

「そうか。あいつも意外と苦労して……というか能力がプロに追いつけてねぇのか。努力しろとしか言いようがねぇな」


 ぐうの音も出ないような言いようだった。辛辣だなぁ。


「で、一巻の方はどうなんだ? 発売日とか」

「発売日は……、決まってないですね」


「イラストレーターとかは?」

「イラストレーターは……、決まってないですね」


「タイトルは?」

「タイトルは……、決まってないですね」


「何も進んでねぇじゃねぇか……!?」

「いやぁ、進んではいるんですよ? ただ進んだ以上に、後ろに戻っているだけで」


 結果的に進んでいないだけのなのである。うむ。……やっぱ進捗ねぇな。

 これに関してはシンプルに進展が無い。完成原稿だけが寂しく放置されているだけだ。


「この話題はアレなんで、次に行きましょう!」

「次っつっても、この話題で最後だろ。この作品(ゾンビ)の続きどうなった?」

「書いてません!」

「死ねぇぇぇえええええええええええ!!!!」


 ついにキレる音黒せんせー。ちなみに、俺は関係ないでしょ。作者が悪いでしょ。


「あ、でも、少しずつ続きの構想は練っているみたいでしたよ!」

「いちおう書く気はあったのか……」

「まあ、このざまでも商業優先なんで、どうしても遅くなってますけどね。あ、そういえば、ここまでのストーリーを少しリメイクしてGA文庫大賞に応募したみたいです」

「あいつ、んなことしてたのか……?」

「どうなるかは分かりませんが、もし気になったら、そっと見守っていてくれればと」


 ちなみにタイトルは変わっているらしい。でも、見ればすぐ分かるみたいだ。


「報告としては、こんなもんですかね」

「マジで何も進んでなかったな……」


 恐ろしいことに、これがマジだった。……マジかぁ。


「次は初期発売予定日ファーストアニバーサリーでお会いしましょう」

「嫌過ぎるアニバーサリーだな」


 そうなる前に、良い報告が出来たらありがたいのだが。


「ではまた原作者からの伝言を。

『少ないながらも読んでくれている方が居るみたいで、ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです! 報告らしい報告が出来ないのが、申し訳ないところですね…… あと、続きを書けていない件も。いつになるかは分かりませんが、書く気持ちは多少あるので頑張れたら頑張ります。頑張れたらいいなぁ…… まあ、あまり期待せずに待っていてください』

とのこと。何かしらの進展があったら報告しますので、またお会いしましょう。それでは!」


                                  つづけ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る