『茶番劇兼あとがき(読み飛ばし推奨)』


「音黒と」

「一斗の」

「「あとがき代弁コーナー!」」


 ドンドンドン、パフパフパフ!


「正気か?」

 これ以上ないくらいの真顔で俺に問う音黒せんせー。

「何がです?」

「この茶番に決まってんだろ。なんで自キャラに『あとがき』書かせてんだよ」

「仕方ないですよ。今あいつ(原作者)メンタルブレイクみたいなんで」

 と、気は進まなかったが、原作者の代弁をさせられる俺。

 いったい何をやらされてるんだろうなぁ……


「はぁーっ…… こんなの後で読み返したら、恥ずかしさで悶え死ぬような黒歴史になるに決まってんだろ。何考えてんだよ」

「ラノベ作家なんて、誰もが黒歴史作って売ってるようなもんですよ。いちいち気にしてたらプロとしてやっていけませんって」

「そういえば、原作者もいちおうプロ(予備軍)だったな。まあ、未だに一冊も出版されてねぇけど。同期の中であいつだけ(笑)」

 と、このような現状なのである。ちなみに、まだ出版の予定は定かではない。

 しかしまあ、メンタルブレイクの原因は別にあるのだが。


 今のテンションで原作者が『あとがき』を書いてしまったら、愚痴っぽい内容になりそうだったので、こうして俺と音黒せんせーが面白おかしく脚色しながら代弁する運びとなったのだった。読者様に不快な思いをさせるわけにもいかないしね。


「じゃああれか。もしかして、PV数ぜんぜん伸びねぇことでも気にしてんのか? んなこと、やる前から分かってたことだろーが。読者には作品を選ぶ権利があんだよ。己の未熟さを他人のせいにしてんじゃねぇよクソが」

「辛辣ぅ……!? いやいや、違いますよ。その件じゃないっぽいです。それに、少ないながらも毎日読んでくれている読者が居るのはPV数で分かってたみたいで、それに関してはマジで感謝しましたよ!」


 身振り手振りで、音黒せんせーの心無い言葉に弁明する俺。

 実際、読者の皆様に感謝しているらしいことはマジだった。

 『まえがき』にも書いてあったが実のところ、原作者は今までWEB投稿などしたことが無かったのだ。


 それまで、いくつもの作品を書いてはきたのだが、新人賞に応募するだけでネット上に晒すようなことは一度もしてこなかったのである。(なんなら、原作者はネット小説というものを過去に一度も読んだことが無い)

 だからこそと言うべきか、読者が居てくれて作品に☆やら♡やらが付くだけで嬉しかったとかなんとか。


「まあ、何があったのかは、ここに書けない内容なんで秘密ですけど、原作者が多少ネガティブになることは悪いことでもないんですよ」

「んぁ、どういうことだ?」

 音黒せんせーが首を傾げる。

「あいつはネガティブになることでアイデアが出たり筆が速くなったりするタイプの作家なんですよ。バクマン。で例えると平丸先生みたいなタイプですね」

「嘘くせー」

 下らねぇこと言ってんじゃんぇよ、というジト目が俺にぶっ刺さって痛い。


「じゃあ聞くが、普段は一作完成させるのにどれくらい掛かってるんだ?」

「ワナビ時代だと、一作で三〇~五〇日くらいですかね」

「んじゃ、このゾンビの話は?」

「一八日です」

「はっや」

 過去最速だったとか。まあ、もともとそんなに長い話でもなかったしな。

「この物語もそうですけど、あいつ(原作者)の作風って文章が皮肉っぽいんですよね。だから、ネガティブな感情と相性が良いんじゃないですかね」

「ほーん、なるほどな」

 良い流れだし、このまま本作について触れていくか。


「どうでした? 物語の内容とかは?」

「それ普通、登場人物に聞くか?」

 まあ、それは確かに。きっと原作者が最近Re:CREATORSを視聴し直した影響だろう。

 でもここには俺たちしか居ないんだから、こうでもしないと話が進まないのだ。


「感想に関しては読者の気持ちに任せるのが一番だろ。私がとやかく言うことじゃねぇな」

「んじゃ、気になった点とかは?」

「そうだな。……ああ、あれだ。続きあんのか、これ?」

「いい質問ですね。ずばり答えましょう」


 ドゥルゥルルルルルルルルルルルル……ババンッ!(ドラムロール)


「未定です」

「殺すぞ」

 ストレートな殺意が俺を襲った。原作者に言ってくれよ……

「いちおう、続きが書けるように拡張性は残してあるみたいですけど、どうですかね?」

「あ? 何か書かない理由でもあんのか?」

「たとえ底辺作家でも商業で活動してるわけなんで、どうしてもそっちが優先になるみたいです」


「そうか…… ん、待てよ? そういえば、まだデビュー作は刊行されてないんだよな? だったら、あいつも暇なんじゃねぇのか?」

「今は二巻を書いてるみたいです」

「は?」

 なに言ってんだ殺すぞ、という眼光が俺にぶっ刺さる。俺に言われてもな。

「まだ一巻も発売されてねぇのに?」

「そうですね」

 一巻の発売は色々あって遅れ……、むしろ何もなくて遅れているというか何というか。

 ちなみに、二巻の発売が確定しているという意味ではない。当然、一巻が売れなければ、二巻の原稿も無駄になってしまう。プロの世界は恐ろしいものだ……


「この辺の話は、あんまり深く触れるとアレなんで……、他に聞きたいこととかありますか?」

「そうだなぁ…… そういえば、結局のところデスゲーム運営組織『迷宮』って何なんだ?」

 それは音黒せんせーが聞いちゃいけないやつでしょ!? その組織と繋がりのある関係者設定なんだから!

 はぁ……、まあいいや。なんか面倒になってきた。それに、ここは超メタ空間だからな。細かいことは言いっこ無しだ。


「そのことなんですけど、本編で胡散臭い占い師と話すパートあったじゃないですか」

「ああ、あったな。知らんけど」

「あの占い師が言った通りで、運営側サイドの物語は別で用意されてるんですよ。それがファンタジア大賞で入選したアレです」

「??? つまり、シェアワールドってことか……?」

「いえ、向こうでは『迷宮』じゃなくて『ラビリンス』という組織みたいですね。要するに、パラレルワールドみたいな感じです」

 もちろん担当編集に許可は取っていないので、非公式の設定だ。原作者が書く二次創作だと思ってほしい。……意味分かんねぇな。

 他にも、もしかしたら本作品に登場したような気がするキャラクターが登場したりしなかったりするかもしれないぞ!


「おっと、もうこんな時間か。意外と長く話し込んじまったな。『あとがき』にしては長すぎるだろ」

「こういう文章は普段書けないからって、筆が乗っちゃったらしいです」

 他にも色々と書きたいことは山ほどあったみたいだが、そろそろまとめないと終わりが見えなくなっちまうからな。


「んじゃ、私は怪物太郎に餌やってくるから、あとは駄犬丸が締めとけ」

 そんなことを言い残し、この謎空間から脱出する音黒せんせー。

 ちなみに、怪物太郎は初期プロットに存在しなかった謎の生物である。なんか勝手に出てきたらしい。

 にしても、この『あとがき』最後までグダグダだったなぁ……


「では改めて、原作者の伝言を。

『最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。おかげさまでPV数を確認するのが日々の楽しみになっています。次の作品はファンタジア文庫で出会えると思いますので、もしよろしければ応援してやってください。読者の皆様に圧倒的感謝を!』

とのこと。デビュー作の発売日が決まったら、またお知らせしますね。それでは!」


                                 おしまい。


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