第11話 不満

 この前と違ってというか前はほとんど記憶がないので気が付かなかったが…。

 あっという間に終わった気がする…こんなものなの?男の人って終わるとこんなに冷めた感じになるの?

 なんか期待していたのとは違っていた。触られると鳥肌が立つような感覚があった…それは触れて気持ちがいいとかじゃなくて、ただただ変な感じ。経験がないからわからない。

 雑誌に書いてあるような。痛い!苦しいとか気持ちいいとかが無い!私が不感症なんだろうか。そもそも痛く無いのはなんでだろう。河村さんは満足しているようだが、これが普通なの?こんな事が付き合っているうちは続くのだろうか。ちょっと重たい気持ちになった。


 この前の家での件があってから河村さんとデートの度にHをするようになっていた。拒否するのも失礼な気がしたから断れず毎回虚しい感じで終わり、いつもモヤモヤしていたが、人に聞くのも恥ずかしいし半分諦めていた。デートの時間も短い、甘い言葉もない、不満は積もる一方になって行った。それでも前よりかは好きになっていたので寂しい気もした。


 今日は珍しく、金曜日の夜にスタジオ練習だった。土曜日が河村さんが仕事だからだ…今日も練習の後に行くらしい。演奏はもうほぼ完璧だ。最近はみんなアレンジを入れたりしてコピー曲がオリジナルのようになっている。

 メドレーっぽくしたりすごくいい感じだ。練習が終わると河村さんはすぐに仕事に行ってしまったので残ったメンバーでファミレスに入り軽い食事をした。午後9時を過ぎていたので理恵ちゃんが早く帰らないとヤバイって帰り支度をしていた。私はまだなんとなく帰りたくなかったので、少し残ると言うと徳長さんも残ると言うので理恵ちゃんと児島さんは先に帰って行った。

 徳長さんは河村さんとの事を知られていた。バンドの時の河村さんの態度で気が付いてしまったらしく、こっそりと付き合ってんの?と聞かれたことがきっかけだ。「弘人には知らないふりしとくよ」と言ってくれているので安心して相談ができる。結構お兄さんみたいに親身に相談にのってくれた。彼女もいるしなんか大人っぽいし、質問に対してなんとなく納得するような答えが返ってくる。やっぱり社会で仕事してる人は違う。

「で、どうした。」

「何が?」

「残りたいって言ってただろ。何か弘人とあった?」

「わかるんだ!」

「わかるよそりゃ。バレバレ。」

「で?何。今日はメールじゃないから言いやすいだろ。」

「…何かあったと言うよりかは私の問題で…」男の人にはちょっと相談しずらいけど男の人じゃ無いとわからない問題かもしれない。でも…さすがに。


 柚が目を伏せた状態で考え込んでいる。そんなに言いづらいことなのか?…なんだ?弘人が浮気でもしたのか?いつもはメールでのやり取りなのでなかなかうまく言葉が伝えられない事が多かった。残ると言った時からなんとなく雰囲気で分かったから、今日は話をしたいんだと感じた。柚の悩み相談は面白い。自分に彼女がいるが、高校時代からの付き合いでヤキモチが凄くてすぐ怒るし、最近ちょっとマンネリ化していたので柚の悩みは新鮮だ。浮気はするつもりは無いけど、正直ちょっと柚と話すのが楽しかった。柚はなんとなく人を惹きつけるところがある。


「あの〜。凄く言いにくいんだけど」どうしよう。どちらかと言えば徳長さんの彼女に相談したいところなんだけどな…。

「1回聞いたら忘れてもらえる?」

「そんな凄い事?分かった。いいよ忘れるよ。そんなに悩んでるんだったらまあ吐き出した方がいいんじゃない?」

「そうだよね。わかった!言う。」

「そんな宣言しなくても」と笑った。

「実は…河村さんとの…の話なんだけど…。」

「えっ何?声が小さくて聞こえないんだけど」

「河村さんとのHの話なんだけど…」顔が赤くなった。

 その瞬間たまたまコーヒーを口に入れたところで熱いのが一気に入って来てしまって口の中を火傷した。

「まさか柚からそんな言葉が出るとは想像してなかったよ。」

「だから言うの悩んだんだよ」恥ずかしい…。

「まあ、いいよぶっちゃけて。で、何に悩んでんの?」

「なんか、私初めてだったからわからないんだけど、男の人ってHする時間どれくらい?」

「時間?その時によるけど、なんで時間気にするの?」

「なんとなくあっさりしている気ががするんだよね。なんか自分が済んだら終わりみたいな。甘い感じの雰囲気がないんだけど…」もうこうなってくるとスラスラ言える。

「ごめん。ちょっと突っ込んで聞くけど、イかせてもらった?」

「イクとかの感覚が分からないから、なんだかよく分からないけど、私はいつも冷静なままでいるみたいな。本とかでみるとさなんか色々書いてあるでしょ。だから私は何にもそう言うの無いなって思って。」

 あいつ何やってんだ?好きなんだよな?淡白なのか?

「なんか自分が人形みたいだなって思って。したあとに頭撫でてもらったりとか、一緒に寝たりとかないなって思って。そもそも好きだって言われてるけど、そうでもないのかなって最近考えちゃって。頭がぐるぐるなんだよね。」

「あいつの態度見てると柚の事好きだとおもうけどな」でもあいつ何してんだ。よくわかんねえな。

「出かけてる時とかは手を繋いで来たりとかされるから好きなんだろうなって思うんだけど、ギャップがありすぎてわからないんだ。なんか楽しくないというか。」

「俺が聞いてあげたいけど知らないことになってるから、自分で聞くしかないだろうけど…でも言えねーよな。なんとなく分からないように聞いてみるよ。ほかには?」

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