魔法修行の砂時計

 母にして魔法の師からもらった砂時計。これが、私の修行の相棒だ。

 最上の魔法には、魔力の質に加えて、魔法陣を描く時間もまた重要だから。


 砂時計をひっくり返して、私は今日も魔法の鍛錬に励む。

 何度か練習して、どうにか丁度いい時間に魔法陣を描けた。


 せっかくなので、砂時計を見ないで描いてみる。

 魔法陣を描き終えてから時計を見ると、砂はとっくに落ちていた。


「砂時計を見なくても、速く描けるようになりなさい」

 と母は言ったけれど、その領域にはまだ遠いようだ。


 どれだけの砂が落ちれば、魔法を完璧にできるのか。

 どれだけの砂が落ちれば、あの人を守れる魔法士になれるのか。


 私は遠き夢を見据えて、また砂時計をひっくり返した。

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