第44話 指名依頼

この日、俺はラガドの街に来ていた。

最近魔の森の屋敷に籠ってばかりだったから、孤児院など、こちらがどうなってるか様子を見たくてやってきた。


ちなみに今日は朝早くに起きてミラーに乗って夜明け前の魔の森上空を飛んできた。

大空を高速で飛ぶワイバーンからだんだん夜が明けていく様子を見た。

なかなか美しい光景で早起きしたかいがあった。


「おはようございます。」

ラガドの北門をくぐる。


「お!ユカワ殿ではないか!なんといいタイミングで現れてくれるのだ貴殿は!」

町中に入ろうとするといきなり後ろから声をかけられる。

ラガドの街北門警備隊のウォーレン隊長だ。


「おはようございます、ウォーレン隊長。」

「おはよう、ユカワ殿。しばらく姿を見なかったが魔の森に籠っていらしたのか?」

「はい、いろいろ向こうでもやってまして。」

「そうかお忙しいのだな。そうだ、孤児院に大金を寄付した話などいろいろ聞いているよ。あと、Aランク冒険者に登録したのにすぐ消えてしまったせいで、冒険者たちの間でいろいろうわさが広がっている。」

「ああ、まあ、いろいろありますから。」

「ところで、今時間は大丈夫かね?」

「ええ、少し朝の町中をぶらぶらしようと思っていたところです。」

「では、少し頼みごとがあってな、できれば、一緒に冒険者ギルドに来てほしい。」

「はい、冒険者登録時には大変お世話になりましたから、協力できることがあれば喜んで。」


ということで冒険者ギルドの建物に行くことになった。

ギルドにつくと応接室に通された。

そこに、孫バカのギルドマスター、ルドルフさんとウォーレン隊長が入ってくる。


「おお、ユカワ殿、久しぶりじゃな。」

「ええ、ご無沙汰しております。」

「今日は折り入ってお願いがある。指名依頼を受けてもらいたい。」

「指名依頼とは?」


「この町の北東にある村で最近家畜がさらわれる被害が出ておる。その原因がワイバーンでな。しかも9体もおる。村の近くの山に巣くっておるのじゃ。」とギルマス。

「それで、冒険者ギルドや町の警備隊から人を派遣して何度が討伐を試みたのだが、9体もいるせいで全く歯が立たない。負傷者も増える一方で途方に暮れていたのだよ。」

「なるほど、それで私にそのワイバーンを討伐せよと。」

「ああ、その通りじゃ。報酬はもちろん弾む。それに、Aランク冒険者としての実績を作る機会としてもいいのではないかと思ってな。」

「そうですね。ではお受けしましょう。」

「ああ、助かったよ。ユカワ殿が受けてくだされば安心だ。」とウォーレン隊長。

「ただ、ワイバーンは倒してしまわないとだめですかね?そのワイバーンたちをテイムして従魔とするのではだめですか?」

「ワイバーンをテイムじゃと!? 9体もおるんじゃぞ? 1体ならまだしも一度に9体ともなると…」

「ほとんど不可能に思われるな。」

「そこは、お任せください。確かにワイバーンを捕らえて、これ以上被害が出ないようにします。」

「ううむ、ユカワ殿ほどの魔法の実力をもってすればそのようなことも可能なのか…」とルドルフさん。

「ギルマス、ユカワ殿の魔法の実力は依然見た通りです。おそらく信用してよいでしょう。」

「そうか、ウォーレンがそう言うなら、うむ、ユカワ殿とにかくこれ以上被害が出ないようにしてくれるのであればそれで結構。よろしく頼む。」


「はい、了解しました。」


こうして俺のAランク冒険者としての初の指名依頼が決まった。

テイムしたワイバーンをどうするつもりかって?

文字通りの竜騎兵隊ってかなりかっこいいと思いませんか?

屋敷の子供たちにそれぞれのワイバーンをテイムしてもらい、彼らとともに空を編隊飛行する。

これってかなりわくわくする。


さあ、ワイバーン討伐へいざ行かん!

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