第37話 魔晶石ができちゃった

しばらくマジックスライムが大量の魔石を吸収するのを待っているとほとんど吸収したところでマジックスライムの様子に変化が起きた。


「ん?マジックスライム発行し始めたぞ。何か起きるみたいだ。」

「何が起きるんだろう。」とクレト。眼鏡をカチャカチャやりながら興味深そうに観察している。


マジックスライムは一瞬さっきよりもいっそう強く発光したかと思ったら体内から何かをポイっと吐き出した。

「おっ、なんか吐き出したぞ。これはなんだ?」

拾い上げてみるとなんとそれはこぶし大ほどの大きさがある非常に透明度の高い濃い緑の魔晶石の結晶だった。


魔晶石の結晶はそれ自体非常に美しいため宝石として価値がある。

だが、それにも増して、非常に優れた魔法発動体として魔法使いの杖などのマジックアイテムを作成する素材としての価値がある。

高ランク魔物の魔石も確かに高い価値や有用性を持つが魔晶石には及ばない。

自然界ではドラゴンなどAランク以上の魔物が自然死した後に魔力が結晶化してまれに発生することがある。ただし、そのようにしてできる魔晶石は小さいことが多い。



ほかにも、こ指の爪ほどの大きさの魔晶石は鉱山からも産出するがその鉱山は今では広い世界にも2か所しかない。

1か所はラマ―ジュ帝国北部のドニアのドワーフ王国。

2か所目は西方のローダニア大陸、エルフのエル・フィンドール帝国に隣接したディミトール丘陵のドワーフ王国だ。

そして、そのどちらからの産出量も現在は非常に少ない。


古代には旧ガレン島にあったハイ・エルフのエル・ガレン王国が良質の魔晶石を産出した。魔晶石は大きければ大きいほど、透明度が高ければ高いほど、価値が高くなる。

エル・ガレンでは大きく透明度の高い高品位の魔晶石を組み込んだマジックアイテムが失われた高度な魔法文明を支えていた。

エル・ガレン文明は数千年前、度重なる大規模な天変地異と魔物のスタンピードによって崩壊してしまった。

文明崩壊と同時にマジックアイテムの数々も失われてしまった。



そして、今、俺たちの目の前にある深緑の魔晶石はここ数千年間誰も見たことがないほどの大きさと透明度を持っている。

つまり、マジックスライムが吐き出した透明な深緑の魔晶石は破格の価値がある。


「なあ、ヨウイチロウ、こうなることわかっていてスライムにオークの魔石を爆食いさせたのか?」とあきれたようにパルがつぶやく。

「いや、何が起きるかは俺もわからなかった。ただ腹を空かせているようだったからな?」

「そういう問題なのか?これってヤバいんじゃないのか?」と再びパル。

「ン~、ま、これもスライム実験の成果だ!とりあえずこの魔晶石は俺が預かっておいて…」

「ちょっと待った、これからこのマジックスライムを任せてくれるんだよな?だったらその魔晶石も俺たちの研究対象にさせてほしい。」と目をギラギラさせているクレト。


素晴らしい。研究熱心な若者は応援してあげなくてはね。


「わかった、クレト。じゃあ、この深緑の魔晶石は君に預けよう。何かわかったら報告してくれ」

「了解!」

さて、この魔晶石は今後いったい何につながるのだろう。

怖くもあり、楽しみでもある。

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