第35話 シシリーの仕事場

「まずは第一階層だ。ここにはシシリー、クレト、パルのための部屋がある。」

「何をするための部屋?」とシシリー。

「まず、シシリーのラボだが、ここでは薬品の調合ができる。まあ、見た目は錬金術師の研究室って感じかな?」

「ホントだ!すごい!ラガドの街で働いてた薬師の仕事部屋より道具も本も充実してる!」

「それは良かった。ぜひ、シシリーには薬草から様々な薬を作ってもらいたいと思っている。」

「わかったわ。それだけでいいの?」

「いや、まだ2つある。一つはこの後行く薬草園の管理。」

「それなら楽勝だわ。任せて頂戴!」

「よし。もう一つはこのプレーンスライムの進化実験だ!」


といって俺はディメンションホールから依然捕まえたプレーンスライムを3匹取り出す。

それぞれのスライムは体長30センチほどでプルプル震える半透明の水色をしている。

「うわ!?スライムじゃない!」

「そう、スライムだよ。俺の本業はスライム研究だからね。」

「スライムの進化実験ってどうやるの?」

「ここには3匹いるだろう?それぞれ違うものを食べさせるんだ。」

「食べさせるって?」

「まず、スライムたちの前に数種類の薬草と毒草を並べる。すると・・・」

俺はスライムの前に亜空間収納から取り出した薬草、毒草を並べる。

すると3匹のスライムたちはもぞもぞと動き出した。

1匹は月光草の束によって行く。月光草は魔力回復や疲労回復効果、傷薬としても用いられる。

2匹目は痺れ草によって行く。名前の通り麻痺毒を高濃度に含む。

3匹目は闇苔を取り込んでいる。闇苔は調合しだいで薬の効果を高めることもあれば毒性を生じることもある、取り扱いが難しい薬草だ。

「すごい、スライムが薬草や毒草を食べてる・・・」とシシリー。

痺れ草を吸収したスライムがどうやら毒に当たったみたいだ。ぴくぴくしている。

でも死んだわけではなさそうである。

しばらくするとまた次の痺れ草を食べようとしている。

「ヨウイチロウさん、こんな風にスライムにエサやりをすればいいの?」

「そうそう。見ていて楽しいだろ?どのスライムが何を食べてどんな風に変化したかを記録してほしい。」

「わかった!面白そう!」


俺たちはひとまずスライムたちをシシリーのラボの所定の場所に移したのち第4階層の薬草園に向かった。


「薬草園ってこんなの想像と違う!」とシシリーが叫ぶ。

「そうだろうね。薬草園といっても普通の薬草園ではない。開けた原っぱや、深い森、洞窟や水辺といった様々な環境を再現するために区画ごとに魔法障壁が張られて環境が維持されている。」


「おいおい、ヨウイチロウ、これってちょっと反則じゃねぇか?」とパル。

「パル、君の知的好奇心を満たすためのものも別に用意してるから、期待していてくれたまえ」

「楽しみだな」

「ねえ、ヨウイチロウさん、ここの管理私一人でやるの?」

「そうだね。よろしく頼むよ。でも管理といっても今ある薬草や毒草を採集するのがメインだよ。」

「新しく植えたりしなくてもいいの?」

「うん、今の時点では必要ない。でも、シシリーが新しく育てたいものがあったらどしどし育てて構わないよ!」

「わかった!楽しませてもらうわ!」

「この階層には、あそこに見える花園を中心にハニービーが暮らしている。」

「ハニービーって昨日食べたハニートースト、あのおいしい蜂蜜を作る魔物ね?」

「そうだ。彼らは俺の従魔になってるから、シシリーに危害を加えることはないよ。」

「今度行ってみるわ!」

「彼らとは念話を使って意思疎通ができるはずだ。シシリーにあげたその水色の宝石のペンダントを使えば可能だよ。仲良くやってくれ。」

「うん!」


では次はクレトとパルの仕事場だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る