第21話 ラガドの街-その2

「では、鍵はかけたから起こしてくれるか?」

「フォーストスリープ解除!」

「ン、ン、何が起きたんだ。確か馬車を襲っていて、空からワイバーンに襲われて、それからありえない数の魔法陣が展開して・・・」

「お、おい、ここって牢じゃないか!?なんで俺たちつかまってるんだ!」

意識を取り戻した盗賊たちががやがやと騒ぎ出したのを目にしてウォーレン隊長を含め一緒に来た警備兵たちは目を見張っている。

「魔法使い殿、少し事情をお伺いしたいので、詰め所にもう一度来ていただけるだろうか。逮捕したりするわけではない。この功績に報酬も出さなければならないのでな。」

「わかりました。行きましょう。」


「魔法使い殿、まずは今回の盗賊退治感謝する。そちらの呼び名なのだが、ユカワ殿とお呼びすればいいだろうか?」

「はい、そう呼んでもらって結構です。」

「では、ユカワ殿あの数の盗賊をどこでとらえられたのかお教えいただけるか?この街の周辺の安全にかかわることなので一応確認しておきたいのだ。」

「彼らは魔の森の淵から少し離れたハザールよりの街道でとらえました。」

「そうか、このラガドを経由する街道は両国の間の交易が盛んなだけあって利用するものが多い。盗賊もそれだけ多く何度も討伐隊を出しているのだが、なかなか根絶することができずにいるんだ。」

「なるほど。それは大変ですね。」

「ところで、あの盗賊団は商人を襲っていたのかね?見たところ救出された人たちは連れていなかったようだが。」

「盗賊に襲われていたのは高貴な身分のかたでした。彼らは無事です。ラガドには来ていませんが、別の安全なところにもう移動しておられます。」

「そうか、それは良かった。もし、犠牲者がいたらその収用などもしなければならなかったのでな。そのさる高貴な方々については何か事情があるようだからここでは聞かないことにしよう。」

「ご配慮感謝します。」

「ではユカワ殿、とりあえずはこのくらいで結構だ。今日はラガドに泊って行かれるのだろう?」

「はい、その予定です。ただラガドに来たのは初めてなので、どこか良い宿を紹介していただけると助かります。」

「それだったらこの北門から南に延びている大通りを進んでいった先にいい宿があるぞ。羊のしっぽ亭という宿だ。」

「それはいい情報をいただきました。ありがとうございます。」

「それと、今日の盗賊退治の報酬を明日の午後にでも取りに来てほしいのだが、可能だろうか?」

「ええ、もちろん。」

「では明日の午後この詰め所に来てくれ。報酬を用意しておく。おそらくあれだけの人数がいるし、全員生きて捕縛されているからそれなりの額になると思う。」

「そうですか。楽しみにしておきます。後、ラガドの街でやっておいた方がいいこととかってありますかね?」

「そうだな、ユカワ殿はまだ正規の身分証を持っていないだろ?だから、冒険者ギルドで冒険者カードを作ることをお勧めするな。」

「冒険者カードですか。私は魔法使いですが、今後は商売をやっていこうと思っているんですよ。だから商人ギルドに登録しようかと思っていたんですが。どう思いますか?」

「そうだなぁ、ユカワ殿の魔法使いとしての実力は相当とお見受けするから、こちらとしてはいざというときに戦力として協力してもらえる冒険者に登録してくれていると助かるんだが、今後は商人として活躍していくつもりなら商人ギルドでも問題ないと思うぞ。」

「そうですか。冒険者ギルドより商人ギルドに登録しようと思ったのは、実をいうと、ランクアップが面倒だなあと思ったからだったんですよ。」

「それなら、心配いらない。魔法の実力にあったランクに登録することができるぞ。推薦人が必要で、試験を受ける必要はあるが。」

「ホントですか!それはいいですね。てっきり雑用などの下積みクエストを受けないといけないと思っていて、それが面倒だなと思っていたんですが。」

「ここのギルドはそういうところは柔軟に対応してくれるからな。何しろ魔の森が近いから獰猛な魔物が多くて優秀な冒険者は常に不足気味だからな。」

「あの、その推薦人って誰に頼めばいいんでしょう?」

「俺が推薦人になってやろう。ユカワ殿の魔法はさっき一部とはいえ信じがたいものを拝見させてもらったから、そうだな、明日報酬を渡した後でどんな魔法が使えるのか城壁の外で見せてもらえないか?それでどのランクに推薦できるか考えるから。」

「素晴らしい提案ありがとうございます。ぜひともその提案に乗らせていただきたい。」

「じゃあ、明日だな。今日は宿でしっかり疲れを取ってくれ。」

「はい、ありがとうございます。」

俺は詰め所にいた警備隊の人たちに礼を言って羊のしっぽ亭に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る