第19話 ラガドの町へ
「パーカーさま!そろそろラガドの街の城壁が見えてきましたよ!」
御者席からバルトロが声を張り上げて伝えてきた。そう、ラガドの街は、魔の森に隣接し、ハザールとエルムードの国境に位置する戦略上の要衝地であるから別名、要塞都市ラガドと呼ばれている。両国の関係は現在は安定しているが長い歴史の中ではたびたび戦火を交えてきた。ラガドは戦時には最前線基地としての役目を担ってきた。さらには、魔の森が近いため、人間が暮らす領域へ侵入しようとする魔物の襲来を防ぐための拠点としての役割も担っていた。ゆえに堅固かつ魔法防御を施したそびえたつ城壁によって周囲をぐるりと囲まれているのである。
「それではそろそろ別れましょうか。お2人はミラーに乗ってください。この馬車はお借りしてもよろしいですか?この辺りまで盗賊に襲われることもないでしょうから幻影騎士団も消してしまいましょう。」
「わかりました。では一度馬車を止めましょう。バルトロ!馬車を止めてくれ!」
「では姫様、パーカーさん、この手紙をお持ちください。」
「ワイバーンはいずこに?」
「カモフラージュの魔法をかけていますからね。今解きます。」
「あら!こんな近くにいたのね!すごいわ!」
「ミラー、お2人を屋敷までお連れしてくれるかな?」
「後でスクエアボアの丸焼きを頼むぞ。2人は連れて行こう。」
「ちゃんと用意するから、くれぐれも安全に気を付けてよろしく頼むよ。」
「心配するな。ヨウイチロウの客人にけがをさせたりはしないさ。」
「では、姫様、パーカーさんミラーの背中にお乗りになってください。」
「すごいわ!おとぎ話で読んだことが本当になるなんて!ひんやりしていて、それに固いのね!」
「姫様、はしゃぎすぎです。落ち着いてください。」
「あら。そうね。ちょっとはしゃぎすぎちゃったかしら。ミラーさんよろしくお願いね!」
「この姫様、なかなかいい子じゃないか。」
「ミラー殿、わたくしも乗せていただきたい。よろしくお願いする。」
「この老人はなかなか紳士的だな。うん、2人はちゃんと屋敷まで送り届けるよ。」
ミラーの声はパーカーさんとリリアン姫には聞こえていない。だが、まあ、大丈夫そうだ。
「では、快適な空の旅をお楽しみください。ミラーはお2人の言葉を理解しておりますので、何か要望があればミラーに声をかけてください。」
「わかりましたわ!さ、行きましょう!」
「では行ってらっしゃいませ。明日にでもお会いしましょう。」
「ユカワ様、ありがとうございます。お先にお屋敷に参らせていただきますが、必ずこのご恩はお返しいたします。」
「パーカーさんもお疲れでしょうから、屋敷についたらしっかりお休みになってください。」
「それでは行くぞ!」
2人を乗せたワイバーンのミラーは大空へ羽ばたいていった。馬車の護衛に着けていた幻影騎士はもう魔法を解除したからいない。あとはバルトロとラガドに乗り込むだけだ。ラガドの街の城壁が徐々に迫ってきていた。
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