第16話 王女リリアン
「お怪我はありませんか?盗賊に襲われていたようでしたのでとっさに周辺にいたものを全員気絶させてしまいましたが、お気を害されていたら申し訳ありません。私にあなた方への敵意はございません。」
俺は、慣れない敬語を使ってこの、見るからに身分が高そうな2人に話しかけた。
「いえ、助けてくださってありがとうございました。私はこちらのリリアン様にお仕えしている執事兼護衛のパーカーと申します。」
「私はリリアン。ハザール王国の王女よ。助けてくださってありがとう。」
「王女様でいらっしゃいましたか。申し遅れました、私は魔の森の奥深くより参りました、ユカワ・ヨウイチロウと申します。」
「魔の森の奥地ですって!?信じられませんわ!」
「確かに、魔の森は別名死の森。獰猛な魔獣がうごめいており人が住んでいるという話は聞き及んでおりませんでした。しかし確か…」
「お2人は賢者マーリンをご存じでしょうか?私は彼に後継者として選ばれたものなのです。」
「なんですって!?あなたがあの大賢者マーリンの後継者ですの!」
「そうです、魔の森には魔法の深淵を覗くため外界との接触を一切絶って怪しげな研究をしている魔法使いがいるとうわさで聞いたことがあります。まさか、それが大賢者マーリン様であったとは。。。」
「お2人は先代をご存じなのですか?」
「はい、マーリン様は伝説の魔法使いとして世界中にその名を知られております。」
「そうだったんですか。」
「大賢者マーリン様の後継者と先ほどおっしゃったと思うけれど、マーリン様はどうなさったの?まさか・・・」
「はい、先代も不死身となることはかなわず、私を後継者に選ぶと同時に亡くなられたようです。」
「亡くなられたようですってどういうことかしら?」
「私は、先代から様々なものを受け継ぎましたが、先代の死体などは目にしておりませんので、亡くなったと断言することはできません。」
「そう、そうなのね。」
「リリアン様、ユカワ様、さまざま話したいことはございますが、ここは魔の森から近く、魔物の脅威もございますし、気絶している盗賊も何とかしなければなりません。とりあえず、どこかしら安全なところで落ち着いて話をいたしましょう。」
「そうだった、パーカーさん。おっしゃる通りです。ただ、少しお伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか。」
「ええ、どうぞ。」
「王女様の護衛がパーカーさんだけというのはどういうことなのですか。騎士団など周りに見当たらないので、それが不思議だったのですが。」
「ユカワ様、それにはいろいろ事情がございまして、それにも関連するのですが、ユカワ様に突然恐縮ながらお願いしたいことがございます。」
「なんでしょうか。」
「先ほどの戦闘の様子からして、ユカワ様は相当の魔法の実力をお持ちのこととお見受けいたします。そこで、どうか、姫様の保護をお願いできないでしょうか。」
「パーカー!突然何をお願いしているの?私は護衛など必要ありません。パーカーにもこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないし…」
「ちょっと、お待ちください。リリアン姫はもしかして、王国から追われているのですか?」
「そうでございます。それも含め詳しい事情をお話ししたいのですが、ここは何分危険です。とりあえず安全な場所に移動してからではだめでしょうか。」
「そ、そうですね。では、お2人は馬車に乗ってお待ちになってください。今からこの盗賊どもを片付けますので。」
「それでは時間がかかってしまいます。盗賊は放置して、とりあえず馬車でここから最も近いラガドの街に向かうのが良いかと。」
「ラガドの街に向かうのには賛成です。その道中はワイバーンのミラーに付き添ってもらえば大丈夫でしょう。盗賊は瞬時に片づけて御覧に入れます。」
「そうですか。では先に馬車に乗って待っておりますのでよろしくお願いいたします。」
「ちょっと、パーカー私を置いて勝手に話を進めないでちょうだい。」
「いえ、姫様、今は私の指示に従ってください。姫様の命をお救いするためです。」
「し、仕方ないわね。」
「ではユカワ様できる限り手早くお願いいたします。」
「了解しました。」
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